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充実の競泳日本選手権と五輪開催のジレンマ

 競泳の日本選手権が終了した。白血病だった池江璃花子選手の涙の復活。松元克央選手と佐藤翔馬選手の日本記録。世界記録保持者だった渡辺一平選手の落選。場外では不倫で干された瀬戸大也選手と、自転車事故後の不調の萩野公選手。この両エースの戦線復帰。好不調の波の大きかった渡辺奈生子選手の2種目制覇。東京オリンピックが一年ずれたから起こった悲喜劇の数々。一発勝負だから起こったハプニング。花の命とスポーツ選手のピークは短い。オリンピックの金メダルは、開催時期と選手寿命の重なり方の運不運が大きい。そもそも五輪派遣標準記録が、日本記録と前後するハイレベルだったので、優勝しても五輪出場はかなわない種目も多かった。それだけ観ていてハラハラドキドキする、スリリングな選手権だった。元水泳部員として、見どころの多かった選手権を4日間たっぷり堪能させて頂いた。
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 一方でほぼオリンピック予選の位置付けで開催された選手権だったので『本当に東京オリンピックは開催されるのか?』。コロナ第4波による「まん延防止等重点措置」が施行され、変異株の拡大が問題視される中の開催である。楽天の三木谷浩史社長は「アスリートには悪いけれど、今この時期に(オリンピックを)開催すべきではない」と発言している。同じ見解を示している人も少なくない。そこで「池江璃花子選手の感動を、五輪開催のモチベーションに利用するな」などという、ウンザリするような論争も起きている。東日本大震災の直後も、スポーツや芸能の存在価値が問われた。コロナ禍においては、より強く開催の可否が問われるだけに、感動の傍らで複雑な気分のする選手権開催であった。
 蛇足だが中継の総合司会は、オリンピック2大会連続2種目金メダルの北島康介氏。試合後の選手インタビューで、選手から北島康介氏への質問コーナーがあった。「朝決勝」の心構えとか「予選・準決勝・決勝のピークの持ってゆき方」などの実践的質問があった。そういう合間に「五輪出場のお祝いに飲みに連れて行け」「ずっと我慢していた焼肉を食わせろ」みたいなアピールを、さりげなく選手たちが北島康介氏にしている。これを聞いて『北島康介さんは、若い選手たちにとって、面倒見のいい兄貴分なんだな』と心和ませるインタビュー空間であった。

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