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三雲岳人「ワイヤレス・パート・チャイルド」

徳間SFコレクション電子復刻第13弾。三雲岳人「ワイヤレス・パート・チャイルド」(徳間デュアル文庫)。従姉の観雪に頼まれて、レトロな喫茶店「織葉庵」の住み込みアルバイターとなった松浦宮城。人型ロボット「なつみ」と店を切り盛りしている。彼女はロボットでありながら、人を和ませる別嬪さん。お店には用もないのに、従兄の秋水がやたらとやって来る。ある日、わけありJC=女子中学生の和緒を店で預かることになった。彼女は、近所の中学校で起きた転落事故への関与を噂されていた。
 砂糖をまぶしたような甘さ。オブラートに包んだように朧げな。それでいて、ちょっぴり痛くて切ない。登場人物たちは、みんな素敵で、温和な性格。この小説はカテゴリーとしてはSFかもしれないが、読後感は少女小説っぽい探偵物語。和緒が犯罪者として誤解されたのには、特別な事情があった。従兄姉たちと一緒に和緒の無実を晴らす過程は、宮城の抱えていた心の葛藤の解決とシンクロする。困ったことに、人が何を悩んでいるかはわからないものだ。かと言って、人の心がわかってしまうことも考えもの。日本SF新人賞作家が書き下ろした青春ミステリー。
https://www.amazon.co.jp/dp/B08K42YWDH/

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