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藤子不二雄Ⓐ先生の遺稿「藤子不二雄Ⓐ&西原理恵子の人生ことわざ面白漫辞典2」

「藤子不二雄Ⓐ&西原理恵子の人生ことわざ面白漫辞典2」(小学館)。電子書籍版はこちら↓

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 藤子不二雄Ⓐ先生の遺稿だそうである。この本は2018年に刊行された第1巻に続く第2巻である。ビッグコミックで10年連載された後半の部である。全部で31編+2編+原稿の構成で、藤子不二雄Ⓐの文章と西原理恵子先生の個性的なイラストがカップリングされている。藤子不二雄Ⓐ先生の選んだことわざとそれにちなんだ文章は、いかにも藤子不二雄Ⓐ先生らしい。「明日は明日の風が吹く」「果報は寝て待て」などラテンアメリカっぽい楽天的な生き方。その一方で若かりし頃に原稿を落として干されたり、病気一つしない健康が晩年になって大病を繰り返したり災厄にも見舞われている。それらの逆風にも、柳に風でやり過ごす人生の達人だった。その心は人生を楽しむこと。好きなゴルフや漫画や夜の巷を徘徊すること。

 しかしそんな藤子不二雄Ⓐ先生もコロナ禍が始まってからはパーティー好きやゴルフも封印。人と会って喋ることが大好きだった、電車に乗って興味津々で人間観察していた藤子不二雄Ⓐ先生が家にジッとしていることは退屈だったことだろう。そんな時期こそ、藤子不二雄Ⓐからお電話を頂いた時に、もっと積極的にお誘いしなかったことを後悔する。自分の心の中で『藤子不二雄Ⓐ先生を外出させてコロナ感染させたら大変だ』という怖れがあったことからの消極さだった。この本の第1巻が出た頃は、藤子不二雄Ⓐ先生はよほど嬉しかったようで、藤子スタジオにお邪魔した際にサイン本を下さった。自分は出版のプロとして、よほど特殊な事情がない限り、著者の先生方にサインをねだらないようにしていた。それは職業的特権を自らの役得としないためだ。そのかわり向こうがくれた時には、ありがたく頂く。そんな思い出がある第1巻に続いて、藤子不二雄Ⓐの遺稿として第2巻が出たことはありがたい。作家にとって本が出ることが一番。死してなお本が出ることこそ、作家冥利に尽きる。これが小学館の藤子不二雄Ⓐ先生への贈る言葉なのだろう。


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