見出し画像

片理誠「終末の海 Mysterious Ark」

徳間SFコレクション電子復刻第4弾。片理誠「終末の海 Mysterious Ark」(徳間書店)。第5回日本SF新人賞佳作入選作「終末の海・韜晦の箱船」の改作。世界は、地球は「大崩壊」を迎えた。発端は欧州。国際紛争の誤認による核攻撃応酬の頻発。焦土と化した世界各国は無政府状態となった。第二十七翔竜丸に乗り込んだ宇藤圭太・12歳たちは、複数家族で極寒の海に船出した。南太平洋の海上基地フロート・ナインを目指して、そこから月面都市への脱出を目指す。しかしあえなく船は座礁。食糧も尽き果てようとする中、唯一の希望は海域を周遊する箱船への脱出救助。クルーザー「ティータニア」は、9層の構造を持つ豪華客船。下ろされたタラップから入ったものの、船内は無人状態。やがて第二十七翔竜丸たち11人は、2日おきに忽然と消息を絶つ。機関室にあったスパナには、消えた圭太の父親が残した謎かけ。正体もわからないまま、見えない敵を探し、失った家族の復讐を誓う圭太たち。
 SFであると同時にホラー小説であり、ミステリーでもあり、ビルディング小説でもある。その描く近未来は、核兵器という禁断の武器を手にしてしまった人類が避けて通れない終末。15年まえに著者が描いた未来は、いつ起きても不思議ではない現代が隣り合わせている危機である。闇の中の不気味な見えない敵。それは著者が創造した新しい文明の利器。人類は発明によって豊かとなり、その発明によって天罰を受ける。追い詰められた人類を代表して、第二十七翔竜丸で運命を共にした人々は、いがみ合いながらも、自らの生存を賭けて助け合いに至る。中でも幼い主人公である圭太は、エンジニアとしての能力を武器に、闘いの中で男として成長してゆく。
https://www.amazon.co.jp/dp/B08H1YJPD3/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?