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大下英治「郵政大乱!小泉魔術」

1月8日 テレビ体操再開8回目、再開2679日目、通算3169日目。政治ノンフィクション電子復刻。大下英治「郵政大乱!小泉魔術」(徳間文庫)。
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今から15年前の2005年に起こった「郵政解散」。その時の激動と興奮が、今読んでもビビッドに蘇る。郵政公社の民営化という小泉純一郎は、郵政公社の民営化を宿願とした。そのために派閥人事を排し、政策の実現のために『これぞ』と思う人々を重用した。武部勤幹事長、二階俊博総務局長、世耕弘成広報担当。その優秀さに刮目。この頃は彼らも派閥力学だけでなく、大義に動いていた。皆死に物狂いで働いた。これに猛然と反対した郵政族や守旧派たち。本来であれば党内の説得に腐心するところだろうが、小泉純一郎は衆議院解散という罠に誘い込んだ。公認を与えず、刺客を送って徹底的に反対派を潰す。結果的に自民党は296議席を獲得して圧勝。小泉チルドレンとして、片山さつきなど、政界への女性進出のきっかけともなった。反対にポスト小泉と目された政界人材の多くが失墜。
 読んで感じたことは、小泉純一郎という人は、まさに「変人」。対人関係に気を使うことが基本の政界で、正反対の我が道を行くである。贈り物は一切しない。贈られたものは突き返す。高市早苗が送ったバレンタインデーのチョコレートですら送り返す。派閥の長が官邸に来ても、言うことは聞かないし、缶ビールしか出さない。自分で書いたキャッチコピーは絶対に譲らない。反対派には情け容赦もなく処断する。まさに目的のために手段を選ばない。
 「郵政解散」選挙が特異だったのは、政策の是非を問う前代未聞の選挙であったこと。政敵は、かつての身内であった自民党の反対派。だから二大政党制になりつつあった民主党が枠の外に吹っ飛んでしまった。「郵政解散」選挙は、自民党の体質と勢力図を大幅に書き換えた。そして大敗を重く受け止めた民主党は、これを教訓として政権交代への道を歩み始める。マニュフェストが一般化し始めたこの頃。文中に引用された、旺文社の創立者である赤尾好夫の言葉が心に残った。「語ることは人を豊かにし、書くことは人を正確にする」。

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