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大下英治「小沢一郎はどのように自民党をぶっ壊したか?」

政治ノンフィクション電子復刻。大下英治「小沢一郎はどのように自民党をぶっ壊したか?」(徳間文庫)。
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ついに民主党が2009年の衆議院選挙における圧勝で政権奪取。それには小沢一郎の卓抜した選挙戦略と戦術があった。また時の麻生内閣が解散の時期を誤るという、時の利もあった。そして始まった民主党による新しい鳩山由紀夫政権。その進め方には、自民党時代の官僚依存を打破しようとする、様々な新しい試みがスタート。日本は二大政党制の時代が始まった。そして次に雌雄を決するのは翌年の参議院選挙。
1️⃣小沢くの一刺客術
自公有力候補に挑戦する小沢ガールズ。どの女性も美形。そんな彼女たちに現在の地位を捨ててまで、選挙に打って出させる小沢一郎の魅力。一方で鈴木宗男の新党大地と北海道で手を結ぶ。自民党は小泉純一郎以降、安倍晋三→福田康夫→麻生太郎と毎年のように首相交代。そこにリーマンショックが加わり、支持率失墜。NASA(中川、麻生、菅、甘利)が支えるも、解散総選挙時期を巡って迷走。一方で民主党も西松建設による陸山会政治資金問題で、小沢一郎の第一秘書である大久保隆規が逮捕。この危機を鳩山由紀夫が懸命に支える。代表交代で後を継いだ鳩山由紀夫を平野博文が支える。鳩山邦夫総務相vs西川善文日本郵政社長で一悶着あった後に、静岡県知事選と東京都議選で自民党は大敗。麻生降ろしの風が吹き荒れる中で、2009年の衆議院選挙に突入する。長崎で薬害肝炎訴訟団の福田依里子で久間章生元防衛相を、東京でテレビタレントの青木愛で太田明宏公明党代表を破る。群馬ではフジテレビアナの三宅雪子で福田康夫を、松山では地元TV女子アナの永江孝子で塩崎恭久を、京都では自衛隊出身の小原舞で谷垣禎一を追い詰める。小選挙区で及ばずとも、小沢ガールズは比例区で当選を果たした。
2️⃣小沢の天下獲り
北海道は民主・大地連合の圧勝だった。自民党実力者の町村信孝、中川昭一、武部勤に小選挙区で圧勝。特に中川昭一を破った石川知裕は、秘書として、一から小沢一郎に学んだ。そして全国的な支持基盤は連合に求めた。事務局長の古賀伸明は、小沢一郎の人心掌握術に感嘆した。そして何より「政権交代」というキーワードが効いた。一方でみんなの党が躍進。国民が自民以外の保守路線に期待を表した。これらの波は小泉チルドレンの凋落も意味した。選挙終了後の政権移行だが、未経験の民主党は誰もがどう動いていいのかわからない。ここでまたしても小沢一郎の出番で、幹事長となる。代表など幹部が落選した公明党は山口那津男が代表となる。自公連立を白紙に戻し、民主党とも是々非々で協議のスタンスに移行。鳩山由紀夫内閣も組閣。官房長官には平野博文。菅直人国家戦略局担当大臣兼副総理、仙谷由人行政刷新担当大臣、藤井裕久財務大臣。国土交通省に前原誠司。総務大臣に原口一博。経済産業大臣に直島正行。環境大臣には小沢鋭二。防衛大臣に北澤俊美。外務大臣に岡田克也。農水大臣に赤松広隆。国家戦略室長に古川元久。国家公安委員長に中井洽。
連立内閣を組む国民新党から金融相に亀井静香、社民党からは福島瑞穂が内閣府特命担当大臣。新内閣は脱官僚を目指した。
3️⃣自民逆襲のシナリオ
衆議院選挙の大敗で下野した自民党の新しい総裁選。先ずは舛添要一が下りた。そして石破茂も、町村信孝も。立候補したのは谷垣禎一だけだった。山本一太と世耕弘成は劇薬として河野太郎を、馳浩が町村派の西村康稔を押し立てた。総裁選はこの3人で争われ、谷垣禎一が新総裁となった。新体制は幹事長に大島理森、総務会長に田野瀬良太郎、政調会長に石破茂らベテラン勢が名を連ねたが、新体制の中で若手の発掘に努めた。そんな中で中川昭一の急死で党内にショックが走った。続いて参院選の静岡、神奈川の補欠選挙。仕切るは細野豪志。ここでも民主党が勝利。これで参議院も民主党が過半数を取った。続いて、いよいよ事業仕分け。こちらは枝野幸男が統括。行財政改革を担うと言えば聞こえはいいが、要は無駄な経費の思い切ったカット。陳情窓口も官庁から政治主導に転換。自民党は脱派閥、野党としての再出発を複合して切った。派閥に囚われない若手抜擢を石破茂が進めた。そして次の戦いは参議院改選。自民党の選挙責任者は二階俊博。

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