短歌の記録2

短歌の記録1はこちら

今回の期間、詠むときに少し気を付けたのは、「意味がくみ取りやすいように」ということです。複雑にして解説必須な歌にならないよう、読んだらだいたいわかるようにと思って詠みました。
できてるといいなと思います。




「歌」5/28

ステージで煌めく神の歌声に幾度も助けられた魂

お題でいくつか考えていたのですが(後述)、全然違う方向性のものがぱっと浮かんできてこちらを採用しました。アイドルに救済された人間の歌です。
推し、と書いて「神」と読みたいですね。そして、人間、と書いて「魂」と読みたいところです。ただの「推し」ではなく、「神」とすることで崇拝していることを表しました。
一時期バチバチにハマっていたことがあるのですが、あれは本当に救済でした。ステージで輝いている推しはメンタルに効きます。お試しあれ。
ちなみに一番最初に浮かんできたときは
 ステージで輝く君の歌声に何度も助けられた魂
でした。このままだと君があまりにも近くて友達みたいで違うな、と思ったので少し寝かせてみたところ上の歌になりました。近くなってしまった理由は、私がアイドルの「担当P」をしていたことがあるからです。担当Pである私には寝かせる前の歌の方が刺さるかもしれないです。読んだ人にもう少し広くささるようにと思って変えました。上の歌を読んでわかる~と思ってもらえると嬉しいです。

見落としていた風景を手に取って
短歌に詠んで世界を見たよ

お題を聞いてすぐ浮かんだのがこちらでした。
かなりありふれているなあと思って没です。
でも私は短歌を詠むようになってから、生活を振り返ってネタを探したり、実体験ばかりではないとしてもこんな人もいるよなあと考えたり、私の世界が広がったように感じています。ありふれていますが「短歌サンキュー!」のきもちです。

音痴だと言うあなたとの日常は
調子っぱずれなデュエットみたいね

こちらも割とすぐに思いついた歌です。
下の句の77(調子外れなデュエットみたい)をわざと引き伸ばして88にしています。一緒に暮らしている中で色々噛み合わないこともあるけど、上手にできないと自己申告しているあなたと、それでもふたりで前に進んでいきたい、そんな感じをイメージしました。
あまりにも自分とかけ離れていてうまく形になりきらなく、想像で創るにはちょっと遠すぎたので、没です。

「傘」6/11

この形、愛され続けて数百年!
手は塞がるし足はびちゃびちゃ

傘をお題に考えていた時にちょうどお天気が崩れて傘をさすことがあったのですが、この形いい加減進化してくれないもんかね!?と思いましたのでそのまま詠みました。上の句でキャッチコピーっぽくアゲて、下の句で文句たらたらにしてみました。
最初は
 いい加減なんとかしてよこの形
 百年前からずぶ濡れの足
という歌でした。ここから5回ほど形を変えて上の歌になりました。最初よりキャッチーにできたかなと思います。

「数」6/25

あの頃は優しかったわ「求めましょう」
今は命令なのね「求めよ」

考えるのがとても難しいお題でした。ギリギリ出したけどなんかもうちょっとうまいことしたかったなあ、とあまり納得いっていません。
口語調であの頃は…なんて言うから何かと思えば算数や数学の問題文の話でした。という歌にしたかったのですが、「求めましょう」「求めよ」を入れないと何のことかわからなくなってしまったのでこんな形になりました。

「流」7/9

川べりで揺蕩う花びら目で追って
重ねてみてる私の気持ち

ひとつ前のお題「数」に引き続き全然思いつかなかったので、一応捻り出したのですがあまり気に入っていません。
ただまあ、川にゆらゆら揺れている花びらをなんとなく目で追ってしまうことは実際にあって、きもちが定まらないことも揺蕩うと言うので重ねてみました。

濃い恋来い!
消えないうちに願い事
3回唱えたことにしといて

流れるというお題で流れ星はクリシェだなあと思って避けたのですが、歌会中の皆さんの歌を聞いていたら意外と使われていなかったのでこちらを採用すればよかったです。
最初の5音(6音)は声に出すと全部同じ音なので遊んでみました。
「しといて」という少しものぐさな雰囲気で流れ星に恋を願う、そこまで本気じゃないんだけど「恋したーい!」なんてファミレスで管巻いてる高校生のイメージです。

「青」8/4

青空に白線で描く境界線
消えてゆくまで見つめてしまう

できたと思って提出したあとに「線」がもろ被りしていることに気づきました。見直しはしたつもりだったんですが、色々推敲した結果採用したフレーズたちが喧嘩していることに気づけませんでした……。
 青空に白く伸びゆく境界線
 消えてゆくまで見つめてしまう
と詠んでもよかったのかなあと思います。あんまり変わらないかもしれないけど。
詠んだ情景はとても気に入っています。綺麗な青空に描かれた飛行機雲を綺麗だなあと見ている、だけではなく、8月の空を見上げて生死の境を意識してしまうことを詠みたかったです。歌会では汲んでいただけていたようで、よかったです。
時期も相まって死の香りを少し、自分自身に直接体験なんてないはずなのに感じてしまう、境界線を見つけてしまい目が逸らせなくなる、でも風景としては夏の青空と飛行機雲の綺麗な感じ、を詠みたかったです。爽やかさと切なさを同居させられていたら嬉しいです。

背景を真っ青にしている雲の
もこもこ具合、もう夏ですね

もこもこ具合、というのがかわいくて気に入っています。
積乱雲を思い浮かべてください。
もこもこという音と、ですねと話しかけている感じで柔らかさを目指してみました。積乱雲を見ると夏を感じるんですが、それを誰かと共有したくて話しかけている情景です。

数百万色を識別する君は
さて、どこからが青だと思う?

最初に思いついたのはこの歌です。
青色に限らず全ての色は、人によって色名が多少ブレると思うんですが文化圏(言語)にも影響を受けるんですよね。
私はこれを知ったときにとても興味深いなあ!とわくわくしました。
さて、と問いかけている姿勢にもわくわくを込めてみました。

「残」9/3

眩しくて羨ましくて死ぬ
君の残機3あるみたいな生き方

ちょっと無鉄砲とも思えるくらい勢いのある生き方をしている人を見て羨ましいなあと思う歌です。自分にとっては残機に余裕がないとできなさそうなくらいの大きなチャレンジをしていて、対比として眩しさだけで自分の残機が終わる(コミカルな意)ことを詠みました。
残機が2ではなく3なのは、慎重すぎる自分の性格を反映させているつもりです。7音にするためだけじゃないよ!ほんとだよ。

今日までを失敗だけで生きてきた
息ができない残照の中

ちょっと暗すぎるので没にしましたが、嫌いじゃないです。
残照は日が沈んでも空に残っている光のことです。
自分以外のみんながめちゃくちゃ色々できるように見えて、あまりにも周りが眩しすぎて、その眩しい光が落ちたはずの空になお残っている眩しさに息苦しくなることがあります。或いは微かな希望のようにも見える残照を掴み取ることもできず、むしろ消えることのない周りの眩しさのように思えてしまうことがあります。そんな、自分のしてきたことが全部失敗に思えてしまうやるせなさを詠みました。


たくさん詠みました!
あまりじょうずには詠めなかったなあと思うことも多かったですが、全体的に楽しめたと思います。引き続きたくさん詠むぞ!


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