短歌の記録

Discord内で歌会が開催されているので参加しています。
歌会では2週間に1回、お題が1字提示されます。
お題の字は入っていても入っていなくても良くて、季語の有無も不問です。
2023年3月に初めて短歌を詠んで、それ以来楽しくて歌集を買ったりもしました。QOLの上昇を感じる……!
今まで詠んだ分の、詠んだ時のきもちや考えていた意味を残しておきます。
投稿しなかった歌もいくつか残しておこうと思います。
見出しがお題の字と開催日です。
意図して入れた季語は書いておきます。

「香」3/5

雑踏に面影を見て泣いている
あなたの姿はどこにも無いのに

人生で初めて詠んだ短歌です。
香りって思い出と結びつくものだなあというイメージから考えました。
コメントでも指摘があったのですが、これだとお題ありきなので「香り」が句だけからでもわかるとよかったかも、と思います。
今、少し手を入れるとするなら
 雑踏に面影香り泣いている
 君の姿はどこにも無いのに
かなあ、と思います。
雑踏という聴覚に刺激があるざわざわした環境にいて面影を見るという視覚刺激を嗅覚で感じ取っているズレと、もう会えない人を思い出してしまった寂しさを表現したかったです。

玄関を開けて笑顔が溢れ出た
きょうのご飯はカレーだ
やったあ

カレーって家が近づいてきたらもう作ってるのわかるよね、って思ったのでその気持ちで詠みました。ただ、お隣が作ってる可能性もあるので、玄関を開けてうちがカレーだ!確信!やったー!のきもちのつもりでした。
玄関にたどり着くまでは、いい香りだなあ、うちだといいなあ、おなかへったなあ、というきもちで居るとかわいいなと思います。
中学生くらいの、学校から帰宅してくる場面を思い浮かべました。

鮮やかに懐う歳月頻く頻くと
君が最後に告げた花の香

川端康成の「別れる男に花の名を一つ教えておきなさい。花は毎年必ず咲きます。」から着想しました。
毎年香って来たら思い出してしまう、毎年だから年月が過ぎてもまだ鮮やかに思い出される、というイメージです。
「懐う(おもう)」は懐かしく思い起こされること、「頻く頻く(しくしく)」は重なりという意味の上に泣いている表現であるしくしくという音も少し含めたらいいなと思って選びました。
漢字をできるだけ選んで使って、読んだら意味を取れるようにと思って色々調べてみました。
お別れのお手紙にお花の香りがついている、というシチュエーションかも?という読みをいただいて、それもいいなあ!と思いました。

「眠」3/19

こもれびの きらきらひかる みどりいろ
きみがとなりで ねむるしあわせ

絵本みたいな情景を思い浮かべて詠んだので、あえてすべてひらがなにしてみました。あたたかくて気持ちの良い、嘘みたいに平和な世界です。
木漏れ日っていい単語だな、お昼寝と相性がよさそう、と思って詠みました。お天気のいい日に大きな木の下で大好きな相手と一緒にお昼寝できたら幸せだろうなあと思いました。この「きみ」はパートナーでも家族でもペットでもよいと思っています。ペット目線のかいぬしでもよいです。

春暁に眠る姿は溶け出して
温もりのある場所で永遠

ひとつ上の短歌に少しひっぱられつつ、実は死ぬことを詠みたかったです。コメントで気づいてもらえてとても嬉しかったです。
亡くなった相手を想うと天国みたいな場所でその相手に花が降る、という話を見かけたのが印象的でそこから詠みました。
「アンナチュラル」というドラマの中のセリフに、「温かい場所で綺麗な花に生まれ変われたら幸せじゃない?」というものがあります。こちらも着想の一端です。
永遠に眠る場所はせめて温もりを、という祈りです。
季語:春暁

「嘘」4/2

四月馬鹿 春休み中の悪ふざけ
あなたに話しかける口実

捻りがないですが、ただその分意味はそのまま取れるかなと思います。
「嘘」で考えてたらどんどん暗いのばかりになってきたので、明るくて暖かめのものを詠もうとしました。
4月頭は春休みだから学生でいる間はあまり人と会わないしクラスも変わってしまうしで、エイプリルフールを口実にして好きな人に連絡入れちゃう♡というだけの歌です。 調べたら四月馬鹿が季語だったのでこれを入れよう!となりました。
下の句の77を7と7で切らずに14音で考えてみました。 
季語:四月馬鹿

朝月夜 淡い言葉で赤い嘘 あなたと紡ぐ新しい歌

「ああ」で始める遊びをしてみました。(あさ、あわ、あか、あな、あた)
楽しかったですが、そちらがメインになってしまい内容は浅くなってしまいましたので反省しています。まだそういう言葉遊びに手を出せる技量は無かったです。
耳障りの良い言葉で真っ赤な嘘をつく人と明け方に言葉を交わす情景です。綺麗に見える言葉を選んで地獄を詠んでみました。新しい歌を紡ぐって楽しい始まりみたいなのに、上の句で嘘だと言ってしまっているので偽りだとわかりきっている悲しい歌です。嘘というお題で考えていた時に思いついたフレーズ「微温い地獄」を使いたかった名残が見えます。 淡い言葉の部分は、「浅い言葉」か「甘い言葉」でもよかったかもしれないです。
残念ながらこの歌はあんまり気に入っていないですね……。
季語:朝月夜

「花」4/16

「また来よう」
彼方に交わした言葉
ほら ネモフィラの海 変わらずにある

ひたち海浜公園のネモフィラを思い浮かべて詠みました。
ネモフィラの花言葉は「あなたを許す」です。
春の花がいいなと思ってぱっと思いついたのがネモフィラで、海浜公園で見た一面のネモフィラが綺麗だったので海と表現してみました。
ほら とするか 見て とするか悩みました。そばにいない人に呼びかけている感じを強く出したかったので「ほら」に軍配です。
また来ようねって約束したのに長い時間が経っても来られないまま、約束が果たされないままだった話を想像しました。もう一緒に来ることはないだろう、だから一人で見にきた、そうしたらネモフィラは変わらずに一面真っ青に綺麗に咲いてる、私はあなたを許すよ、というやさしい気持ちがあります。ほら、って虚空に呼びかけている悲しみもあります。ネモフィラは変わらずにある、のでそれ以外は色々と変わってしまったね、というさみしさもあります。
さみしいのに爽やかで明るい情景があるイメージです。
結構気に入っています。

かわいいね 咲いた咲いたのチューリップ
どの花見ても だいたい同じ

春のお花でチューリップも思い浮かべたので考えていたのですが、思ったよりキツい描写になった気がして没にしました。
途中までは可愛い雰囲気で、チューリップのうたをそのまま歌っています。最後の5音で不穏になってしまいました。
チューリップの花言葉は「博愛」です。
ひろく愛しているということは特別がいないということで、並んでいるチューリップを「どの花見ても綺麗だな」なんて、違いもわからずに口先だけでなんとでも言えますね、というひねくれた気持ちです。
お花畑を見たときにきれいだなと思うけれどそれは全体を見ているだけで、1本1本に焦点をあてては見なかったなあ、と思いながら詠みました。
季語:チューリップ

「旅」4/30

旅先も君がなにより眩しくて
カメラ目線が一枚もない

自分の写真を撮ろうとするカメラマンの「君」が好きでカメラの方を向けない、というイメージで詠みましたが、詠んだ後に逆目線(カメラマンが被写体を好きで、こっち向いているときには写真が撮れない)で詠んでもかわいいなあと思いました。旅先「も」なので、いつも眩しいなと思っているわけですね。かわいいですね。カップルを想定していたのでそもそも両想いです。かわいいですね。
普段の私は人が映らないように写真を撮るので、人を含めて思い出を残そうとするのがかわいいなと思って詠みました。どんなテンションで映ったらいいのかが分からなくなるので自身がカメラに撮られるのも苦手なのですが、こんなかわいい理由だったらよかったのに……という気持ちも少し入れました。
歌会中には「カメラマンさん(第三者)に撮られる時も君をつい見ちゃってカメラ目線にならない」という解釈もいただいて、それも大変に可愛らしいと思います。

「こっち見て
せっかく綺麗な景色だし」
カメラが苦手な君を説得

こちらはひとつ上の歌のカメラマン側の目線のつもりで詠みました。
「カメラが苦手だ」って本人が言ってるからそうだと思っていて、でもちょっと思い出に残したいし写真撮りたいなあ(と思いきや実はカメラが苦手というよりも……)という歌ですが、上の歌が無い単体ではそういう意味が取れないなと思って没にしました。
実は「カメラが苦手な君を説得」というフレーズが最初に思い浮かんで、この歌をざっくり作って、そのあとに「カメラ目線が一枚もない」というフレーズが浮かんで、上の歌が生まれました。

「家」5/14

寂しくて電気消せない玄関に響くただいま
僕らは独り

一人暮らしの帰宅時を詠みました。玄関の電気ってなんか消せないんだよね、という台詞をウン年前に漫画で読んだのを思い出して入れました。最近、友人も同じことを言っていました。私は玄関の電気は消す派ですが、きもちは少しわかると思っています。帰ってきたときに玄関の電気が消えていると、ちょっと寂しいですね。「消さない」のではなく「消せない」のが寂しさを強めているといいなと思います。
最後の7音がなかなか思いつきませんでした。最初は「がらんどう」という字余りでしたがしっくりこず、ここだけで数日使いました。独りで居るのって本当に楽だし本心から楽しいと思っているけど、そしてそんな風に思って独りのままでいる人が私以外にたくさんいるのも知っているけど、そう思っているあなたも、私も、選んだ独りを寂しく思う日もあるよね、というきもちです。


見返すとたくさん詠んでいてびっくりしました。
今まで一切触れてこなかった短歌をこんな風に楽しめるようになって嬉しいです。素敵な機会をありがとうございます。
引き続き楽しみながら唸りながら詠みたいと思います。

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