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一振りの剣

ぴいんと張った寒空に両の手が尖っていく
触れるものを傷つける硬さに
ふれた心追いつけぬ速さで
悴んだ脚は立ち尽くしたまま
変容していく自身を観ていた
歩き出す。
歩く。
歩く。
歩く。
あくる夜に追いつかれぬように
太陽の残り香を追うように
心臓がうねって血を送り出すことの不思議
硝子細工のように繊細で
鋳鉄のように鈍慢ないのち
走る。
走る。
奔る。
どこへ向かうやも知れぬまま
変容を喜べぬまま
一振りの剣になりたい
冷たいいくさばの丘に据えられて
錆びゆくまま見向きもされぬ
されどそれを観ている
一振りの、剣

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