(過去記事再録)『怪奇・幻想・綺想文学集 種村季弘翻訳集成』(国書刊行会)おぼえがき

注・2012年当時使用していたtwitterアカウントで投稿した内容をまとめたものです。

ヨーハン・ペーター・へーベル「奇妙な幽霊物語」。初出は『ドイツ怪談集』(河出文庫)。十九世紀はじめのバーデンの暦に掲載された暦話の一編で、旅の紳士が幽霊が出るという城に宿泊したときの体験談。
ヘーベルはジャン・パウルやゲーテからも評価された詩人にして聖職者。暦話を通じて民衆の啓蒙にもつとめた。同作も含めた暦話は木下康光編訳『ドイツ炉辺ばなし集 カレンダーゲシヒテン』(岩波文庫)で読める。


E・Th・A・ホフマン「吸血鬼の女」。初出は『ドラキュラドラキュラ』(薔薇十字社、1973年)。父が嫌っていた老男爵夫人の娘に恋をしてしまった伯爵。娘が語る夫人の過去と二人の恋の恐るべき顛末。
種村先生の解説にあるように「『砂男』のエディプス・コンプレックスによる吸血恐怖と、この物語の「悪い母親」への両極性感情を機軸にしたエレクトラ・コンプレックスの産物たる嗜血ー嗜肉癖を対照させながら読んでみるのも一興であろう」。


E・Th・A・ホフマン「ファルンの鉱山」。初出は「ユリイカ」1975年2月号。その後『書物の王国 6 鉱物』(国書刊行会)に収録された。船乗りが母の死を機に坑夫となり、地底で不思議な老人の導きで山の女王を幻視したことで起こった悲劇を描く。
種村先生の解説によればシューベルト『自然科学の夜の側』に収録された「ファルンの坑夫」が下敷きになっている。ちなみに岩波文庫の『ホフマン短編集』には本書解説者の池内紀訳の「ファールンの鉱山」が収録されていて、二人の翻訳を読み比べることができる。
種村訳のホフマン作品はほかに『砂男 無気味なもの』『くるみ割り人形とねずみの王様』(河出文庫)『ブランビラ王女』(ちくま文庫)がある。

ボナベントゥラ「夜警抄」。初出は『澁澤龍彦文学館 5 奇譚の箱』(筑摩書房、1990年)。「ドイツ・ロマン派のニヒリズムの書」とも呼ばれている作品で、芝居がかった独白で生の虚無を叫ぶ断章。
種村先生の解説では「強烈なペシミズムの倍音を奏でる謎の作家」ボナベントゥラの正体についてF・G・ヴェッツェルが定説と書かれているが、『世界文学大事典』(集英社)によると近年E・A・クリンゲマン説が有力視されているとのこと。

アヒム・フォン・アルニム「ド・サヴェルヌ夫人」。初出は『澁澤龍彦文学館 5 綺譚の箱』。世間知らずの裕福な未亡人があやしげな男に狙われる。後半の「ファブリオーのおおらかな笑話性と早すぎた精神病理学のパロディーともいうべき現実観察」(本書解説)が楽しい。
種村先生は『ドイツ・ロマン派全集 8』の月報に寄せた「転んだあとの杖」で自らの好むロマン派作品の特徴として「物の唐突な出現」とそこから導き出される恐怖または笑いをあげている。本作では最後に出てくる搾油機がまさにその役を担っている。
アルニムはロマン派の詩人。ブレンターノとの共編の民謡集『少年の魔法のつのぶえ』(岩波少年文庫)や幻想小説『エジプトのイサベラ』(国書刊行会、世界幻想文学大系)など幅広い作風で知られる。

オスカル・パニッツァ「エラとルイとのあいだのあらゆる時代の精神における愛の対話」。初出は「別冊幻想文学 怪人タネラムネラ 種村季弘の箱」(アトリエOCTA、2002年)。恋人同士の性的にあけすけな会話とみえて実は…。
『パニッツァ全集』(全三巻、筑摩書房、1991年)を個人で全訳するほど入れ込んだ作家。作家論としては全集解説のほか「梅毒としての文学」(『愚者の機械学』所収)、「パニッツァ復活」(「ちくま」1991年6月号)がある。
『世界文学大事典』(集英社)のパニッツァの項も執筆。「ユグノー亡命者の家系のフランス語を話す母とカトリック系のイタリア人の父との間に生まれ,プロテスタンティズムとカトリシズム,母語フランス語と母国語ドイツ語との間にたえず引き裂かれながら書いた作家」。

(追記:種村が遺したパニッツァの訳稿が多賀健太郎の共訳という形で『犯罪精神病』として2018年に平凡社より刊行された。)

グスタフ・マイリンク「こおろぎ遊び」。初出は『ドイツ怪談集』。ブータンの研究員から届けられた白いこおろぎと手紙。蠱毒を思わせる恐ろしい魔術と第一次大戦前夜の終末のヴィジョンが鮮烈な印象を残す。

グスタフ・マイリンク「ヨブ・パウペルムス博士はいかにしてその娘に赤い薔薇をもたらしたか」。初出は『澁澤龍彦文学館 5 綺譚の箱』。巨人症の研究をしていた博士にもちかけられたある計画。怪しげな話から一転、感傷的な結末へと向かう。この作家としては異色作か。

グスタフ・マイリンク「チンデレッラ博士の植物」。初出は『現代ドイツ幻想小説』(白水社、1970年)。テーベの砂漠で発掘された像のポーズを真似した男が経験する幻視体験。

グスタフ・マイリンク「レオンハルト師」。初出は「幻想と怪奇」3号。単行本には初収録だから本書の目玉のひとつだろうか。老人の回想。呪われた出自と恋愛から放浪の旅へ。
種村訳マイリンクはほかに『ナペルス枢機卿』(国書刊行会バベルの図書館12、1989年)。同書月報に作家論「道化服を着たマイリンク」、代表作『ゴーレム』については「巨人ゴーレムの謎」(『怪物のユートピア』)、「ゴーレムの秘密」(『怪物の解剖学』)で言及。
両親の「貴族的高踏的反俗性とユダヤ人的道化的反俗性とがドイツ俗物をサンドウィッチのハムのように挟撃している構図」を背景に「現実にも超自然にも、そのどちらかに決定的に荷担することができない」「だんだら模様の道化服を着た作家」(「道化服を着たマイリンク」)

マックス・ブロート「無気味なもの」。初出は『狂信の時代・ドイツ作品群III 1945-1957 創られた真実』(学芸書林、1969年)。第一次大戦直前の不思議な体験が語られる。「幽霊談の食餌療法」という発想がユニーク。

マックス・ブロートは現在ではカフカの遺稿の管理人・紹介者・伝記作者として知られていて、自身の作品はほとんど読まれていない。

ハンス・ヘニー・ヤーン「無用の飼育者」。初出は『狂信の時代・ドイツ作品群II 1938-1945 おおわれた世代』(学芸書林、1969年)。馬の出産をスケッチした小品。

ハンス・ヘニー・ヤーン「北極星と牝虎」。初出は『ドイツ短篇24』(集英社、1971年)。没落し離れ離れとなった恋人を追う女の前に北極星の精霊が現れる。中国説話風の変身・転生譚。
ヤーンの特徴として、種村先生は「近親姦、黒人との同性愛、動物(馬)への偏愛、瀆神」(『十三の無気味な物語』解説)をあげているが、本書収録の二作品には性的に放埒な要素はほとんど見られず、動物愛が前面に出たものになっている。
「ブロンネンやブレヒトとならんで〈黒い表現主義〉とも評された」(岩村行雄「ヤーン」、『世界文学大事典』集英社)ヤーンの代表作は『岸辺なき流れ』三部作だが、邦訳は第一部の『木造船』(沼崎雅行訳、現代思潮社、1969年)のみ。
(追記:第一部・第二部の翻訳および第三部の梗概が国書刊行会より2014年に刊行された。)
種村訳の短編集『十三の無気味な物語』(白水uブックス)は、『岸辺なき流れ』三部作中のエピソードを「ほぼ元型のまま採録」(解説)したもので、「《ハンス・ヘニー・ヤーン入門》というにふさわしい作品集といえよう」(同)。

ハイミート・フォン・ドーデラー「陶器でこしらえた女」。初出は『狂信の時代・ドイツ作品群I 1933-1938 やむを得なかった歴史』(学芸書林、1969年)。陶器でこしらえた女のあとをつけていった男の見たものとは。実話風のサイコホラー。
ドーデラーは『世界文学大事典』によると20世紀オーストリアを代表する作家とのことだが、日本ではほとんど紹介されていない。単行本では『窓の灯』(小川超訳、白水社、1964年)だけ。

ローベルト・ノイマン「文学史」。初出は『ブラック・ユーモア選集 6』(早川書房、1970年)。ある自殺した詩人に関する真説の報告。
ノイマンは日本ではあまり紹介されていない。ウィーンに生まれイギリスに亡命、英語で作品を書いていた。文学的パロディが高く評価されているようだが、「本領は時代批判」(丸山匠、『日本大百科全書』)にあるという。
単行本に『ウィーンの子ら』(阿部知二訳、岩波新書)、短編に「マルクウスの決意」(『狂信の時代・ドイツ作品群II 1938-1945 おおわれた世代』(学芸書林)がある。後者は自身の亡命体験に基づく痛烈なイギリス社会批判の作品。

ゲルト・ガイザー「私が斃した男」。初出は『狂信の時代・ドイツ作品群III 1945-1957 創られた真実』(学芸書林、19699年)。いまの生活から抜け出そうと犯罪を犯した若者に警官がある復員兵の話を語る。
ガイザーは従軍体験をもとにした作品で知られ、やや感傷的な作風は50年代には高く評価されたものの「60年代になると急速に否定的評価へと転じ」(相沢啓一、『世界文学大事典』)たという。 邦訳に『瀕死の戦闘機隊』(松谷健二訳、ハヤカワ文庫)がある。

ペーター・ウルリッヒ・ヴァイス「郵便屋シュヴァルの大いなる夢」。初出は『ドイツ短篇24』(集英社、1971年)。フランス南部にあるシュヴァルの理想宮をめぐる詩的エッセイ。緻密な描写は微細小説と呼ばれる作風と共通している。
ヴァイスはピーター・ブルックの演出・監督で知られる通称「マラー/サド」の戯曲以降政治的な作風に向かうが、本作は「変貌以前の、いわばヴァイスのマニエリスム時代の相貌をもっとも雄弁に物語る」(種村解説)作品。
なお、ピーター・ブルックによる映画については日本公開時に「医者と魔術師との対話」(「アートシアター」63号)を寄稿している。

フリートヒッリ・デュレンマット「トンネル」。初出は『狂信の時代・ドイツ作品群III 1945-1957 創られた真実』(学芸書林、1969年)。郷里から大学の街へ戻ろうと列車に乗った男。いつもならすぐ抜けるはずのトンネルからいつまでたっても出られない。

フリートヒッリ・デュレンマット「事故」。戯曲。初出は『現代世界演劇 15 風俗劇』(白水社、1971年)。車のトラブルである家に泊めてもらうことになった男。そこには元裁判官や元弁護士がいて、彼は被告として裁判ゲームに参加することに。
デュレンマットはスイスの劇作家、作家。「グロテスクな誇張や痛烈な風刺で現代社会の機構や不条理を観客に認識させる」(宮下啓三、『世界文学大事典』)作風で知られ、推理小説もてがける。邦訳多数。
「トンネル」は光文社古典新訳文庫で近刊予定の『失脚/巫女の死』(増本浩子訳)にも収録されるようで、読み比べてみるのも一興。「事故」はデュレンマット自らが中編小説としても書いている(邦題「故障」、岩淵達治訳、『現代ドイツ幻想小説』所収)。
デュレンマットの代表作のひとつ「老貴婦人故郷へ帰る」はベルンハルト・ヴィッキの監督で映画化(邦題「訪れ」)されている。同作については「不条理演劇と現代映画」(『怪物のユートピア』所収)で論じている。
311ページの「事故」解説部分、7行目の「問題の中編小説」は「同題」の誤りだろう(原題が同じという意味)。ただ、これは本書の誤植ではなく初出の段階でこのようになっており、編集部としては先生に確認できない以上そのままにしたほうがいいと判断したのだろう。

H・C・アルトマン「ドラキュラ ドラキュラーートランシルヴァニアの物語」。初出は『ドラキュラ ドラキュラ』(薔薇十字社、1973年)。婚約者を連れてドラキュラ城を訪れた男の物語。様々な原語の言葉遊びやドラキュラもののモチーフをちりばめたパロディ作品。
アルトマンはオーストリアの詩人。「既成のジャンルに収まらない新しい試みによって〈言葉の魔術師〉の異名がある」(池内紀、『世界文学大事典』)。訳書には種村訳の『サセックスのフランケンシュタイン』(河出書房新社)がある。

ペーター・ローザイ「オイレンシュピーゲル アメリカ」。初出は「ユリイカ」1980年7月号。単行本初収録。シュトラウスの交響詩でも知られるドイツ民衆本に出てくるいたずら者が、タイトル通りアメリカに渡ったという設定の話。
ローザイは現代オーストリアの作家。本書収録の作家の中では唯一の戦後生まれ。日本ではほとんど紹介されておらず、本作が唯一の翻訳と思われる。

ルイージ・カプアーナ「吸血鬼」。初出は『ドラキュラ ドラキュラ』。未亡人と結婚した男が精神科医に相談に来る。皮肉な結末が印象的な怪奇小説。
カプアーナはイタリアの作家。ヴェリズモ(真実主義)の小説で「〈イタリアのゾラ〉と呼ばれるようになった」(須賀敦子、『世界文学大事典』)。邦訳は『シチリアの少年』(清水三郎治訳、岩波少年文庫)がある。

アロイス・イラーセク「ヤン様ーー人形劇」。初出は「新日本文学」1954年2月号。単行本初収録。時期から大学在学中のことで、最初期の仕事と思われる。山の王に狙われた王女を学生や村人たちが守ろうとする四幕の戯曲。
イラーセクはチェコの作家。「フス派の運動など各地の史実や伝説を題材として、民族独立の精神を鼓吹するものが多く、文体も簡潔で、代表的国民文学作家である。」(飯島周、『大日本百科全書』)。邦訳に『チェコの伝説と歴史』(浦井康男訳、北海道大学出版会)。
なお、『チェコの伝説と歴史』は、人形アニメの巨匠イジー・トルンカの代表作「チェコの古代伝説」の原作。

マルセル・シュオッブ「吸血鳥」。初出は『ドラキュラ ドラキュラ』。古代ローマの饗宴らしきところで語られる、通夜に現れる吸血鳥の話。
シュオッブ(シュオブ、シュウォブ)はフランスの作家。語学に通じ博学で「恐怖や憐憫の主題に皮肉と幻想を織り込み,透明簡潔な文体によって成功を博した」(吉田城、『世界文学大事典』)。
シュオッブの訳書は『黄金仮面の王』(大濱甫訳、国書刊行会)、『少年十字軍』(多田智満子訳、王国社)など。『黄金仮面の王』(矢野目源一訳、南柯書局)の解説は種村先生が書いている(『壺中天奇聞』に収録)。

ハンス・アルプ/ビセンテ・ウイドブロ「深夜城の庭師ーー犯罪小説」。初出は「ユリイカ」1979年3月臨時増刊「ダダイズム」(編集・種村季弘)。単行本初収録。推理小説のモチーフをちりばめたダダ小説。
ハンス(ジャン)・アルプは彫刻家、画家、詩人。「青い騎士」への協力、チューリッヒ・ダダの創設に参加、有機的な形態の彫刻で知られる。種村は『ナンセンス詩人の肖像』で一章を割いて論じている。
ビセンテ・ウイドブロはチリ出身の詩人。創造主義の創始者、パリでダダ運動に参加、スペインの詩人にも影響を与える。リヒャルト・ヒュルゼンベック編著『ダダ大全』(鈴木芳子訳、未知谷)に二つの詩作品が収録されている。

ジャン・ミストレル「吸血鬼」。主人公はハンガリーの城で出会った若い娘と恋に落ちるが、無気味な伯爵が彼女につきまとう。「典雅な擬古典体で綴られたこの牧歌的な吸血鬼物語」(種村解説)。
ミストレルについては日本語の文献はまったく見つからない。政治家でアカデミー・フランセーズ会員でもあった。「カスパー・ハウザー」という著作もあり、『謎のカスパール・ハウザー』執筆時に参照している。

ルイス・ブニュエル「麒麟」。初出はアド・キルー『現代のシネマ 3 ブニュエル』(三一書房、1970年)第三章のブニュエルのテキストのプチ・アンソロジーから。『澁澤龍彦文学館 11 シュルレアリスムの箱』(筑摩書房、1991年)収録時に改訳。
改訳では文末の処理や訳語の変更に加え、初出で原文のままにしていたラテン語の部分を翻訳している。つくりものの麒麟の斑のなかに見えるイメージを描写した作品で「いわば全ブニュエル映画があらかじめここにある「シノプシス一覧表」といえよう(種村解説)。
ブニュエルはスペインの映画監督。シュルレアリスムから出発しフランスやメキシコで多様な作品を撮った。
ブニュエルを論じている文章としては「ルイズ・ブニュエル論 聖なる暴力への内通者」(「映画芸術」1966年5月号、単行本未収録)、「スキャンダリストの栄光」「子供部屋のブニュエル」(『夢の覗き箱』)がある。

カルロ・マンツォーニ「ブレーキ」。初出は『ブラック・ユーモア選集 6』。凍った道を走るバスの運転手と男の会話を描いたショートショート。マンツォーニはイタリアのユーモア作家。ほかに邦訳はないようだ。

マヌエル・ヴァン・ロッゲム「窓の前の原始時代」。初出は『現代ドイツ幻想小説』。窓の前に恐竜が見えるという男が分析医の診断を受けるが…。

マヌエル・ヴァン・ロッゲム「ある犬の生涯」初出は『ブラック・ユーモア選集 6』。一年前に妻を亡くした男のもとに小犬が訪れる。
ロッゲムはオランダの作家。ドイツ語でも作品を発表していたらしい。ほかに邦訳は見当たらない。種村解説によればかつて『新潮』でSF論が紹介されたという。

P・C・イエルシルド「モビール」。初出は『ブラック・ユーモア選集 6』。芸術家のモデルをつとめる女性による半生の告白。現代芸術を戯画的に描いている。
イエルシルド(イャシルド、ヤシルド)はスウェーデンの作家。社会精神医学の研究者を経て専業作家に。社会風刺の作風で知られる。邦訳は『洪水のあと』(山下泰文訳、岩波書店)、『生きている脳』(菅原邦城訳、人文書院)。

スワヴォミル・ムロジェック「残念です」。初出は『ブラック・ユーモア選集 6』。なにかを祝う行進の実況。最後にやってきたのは…。
ムロジェク(ムロージェック)はポーランドの劇作家、小説家。「戦後ポーランドの不条理演劇の第一人者として国際的にも高い評価を受ける」(沼野充義、『東欧怪談集』解説)。
ムロジェクの邦訳は『タンゴ』(米川和夫・工藤幸雄訳、テアトロ)、『象』(長谷見一雄・吉上昭三・沼野充義・西成彦訳、国書刊行会)、『所長』『鰐の涙』(芝田文乃訳、未知谷)ほか。

ハンス・アルプ「一本足で」。初出は「思潮」2号(1970年)、「平べったい鉛色の雲」のみ『ナンセンス詩人の肖像』(竹内書店、1969年)。単行本初収録。同タイトルの詩集からナンセンス詩8作品を訳出。
初出誌にはほかに散文や評論5作が掲載されているが、本書は小説・戯曲・詩を対象としているため収録していない。アルプについては58)参照。「賽を投げる男」(『ナンセンス詩人の肖像』)の文中で詩集『一本足で』から2作が訳出されている。
「思潮」巻末広告によると、種村訳による『アルプ詩集』の刊行が予定されていたが実現はしなかった。未発表の訳稿が残っている可能性も考えられる。

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