「安倍称賛」をつづける読売新聞(のゴマのすり方)

                   自民党憲法改正草案を読む/番外389(情報の読み方)

 2020年09月06日の読売新聞(西部版・14版)の2面。
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敵基地攻撃「年内結論」/安倍首相が談話発表へ
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 「ミサイル迎撃体制の確立」(防衛)ではなく、「敵基地攻撃態勢の確立」(先制攻撃)を、読売新聞は、どうしても安倍の「レガシー」に仕立て上げたいようである。
 記事は、こう書いている。
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 安倍首相は、「ミサイル阻止に関する安全保障政策」についての首相談話を週内に発表する方針を固めた。いわゆる敵基地攻撃能力の保有に関し、年内に結論を出すとの政府方針を示す方向だ。
 首相は当初、在任中に攻撃能力の保有を決断することに意欲を示していたが、検討は次の首相に引き継がれる。首相談話については、将来の政権により強い拘束力が生じる閣議決定を行わない見通しだ。
 政府は、米国や公明党にこうした方針を伝えた。
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 菅はたしかに「安倍政治(政策)を継承する」とは語っている。しかし、私が読売新聞を読んだかぎりでは「敵基地攻撃」という問題については、安倍の政策を継承するとは明言していない。
 去っていく安倍が、日本の安全保障について「談話」を出すというのは、どういうことか。
 記事に中には「首相談話については、将来の政権により強い拘束力が生じる閣議決定を行わない見通しだ」とあり、あくまでも安倍の「談話」にすぎないかのように装っている。
 しかし、
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政府は、米国や公明党にこうした方針を伝えた。
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 そうであるなら、「閣議決定」以上のものなのではないか。まさか「閣議決定」のすべて、「昭恵は私人である」というようなことをアメリカに伝えるはずがない。「談話」を発表する前に、アメリカに伝えたのは、武器購入(爆買い)を忘れてはいない、必ず実行するという「言質」を与えるために伝えたのだろう。「陸上イージス」の代わりに、かならずミサイルを買う、と。
 (こういう、書かずに置けば、だれも気づかないかもしれないことを、「私はここまで知っている、政権の内部に入り込んでいる」と自慢げに読売新聞は書くので、とてもおもしろい。つまり、「ニュースの本質の先取り」がわかる。)
 だから、記事中には、「陸上イージス」を見送ったが……。
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米国から購入予定の装備を転用することで、米側の理解を得やすくする狙いもありそうだ。
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 と書いてある。アメリカの理解を得るために「適地攻撃システム」をつくる。それを菅に託す。菅に託すけれど、路線をつくったのは安倍である。だから安倍を忘れないで。
 その安倍の叫びを、読売新聞は後押ししている。
 そして、おそろしいことには。
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防衛省は、①イージス艦の増艦②レーダーとミサイル発射装置の分離配備――などとともにさらに詳細に検討していく方針で、今月末の来年度予算の概算要求では、金額を示さない「事項要求」となる見通しだ。
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 「金額を示さない」は「上限を設定しない」(いくらでもアメリカの要求のままに爆買いする)ということに他ならない。安倍は、ここまで「準備」して政権を去る。だから、トランプが再選されたら、また一緒にやれるように手を回して、と安倍は言っているのだ。

 安倍が「自己保身(と再復活)」のために言っていることを、「独自(特ダネ)」と称して紙面化し、さらにそれによって日本の安全保障を「決定」づけようとしている。
 ジャーナリズムがいましなければいけないことがらは、安倍の8年間の検証であり、また「敵基地攻撃システム」が安全保障にもたらす多様な議論の紹介であるはずだ。安倍がこう言っているから、安倍の言うままにアピールします、ということではないだろう。
 こんなにまでして安倍を「よいしょ」するのは、安倍が再復活してくる「証拠」でもあるだろう。安倍が再復活したとき「読売新聞は、安倍政権のレガシーがなんであるか、それが実現する前から報道し、応援してきた」といって、さらにすり寄るつもりなのだろう。

(このニュース、台風が接近しているため、西部版=九州地区では2面だったが、東京でも2面だったのか。1面だったのではないか、と私は危ぶんでいる。もし1面なら、この駒のすり方はいっそう異常だ。)


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