オリンピックは中止すべきだった(29)

 8月22日の読売新聞(西部版・14版)。コロナ感染状況。
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(見出し)国内重症者1888人
(記事)国内の新型コロナウイルスの新規感染者は21日、全都道府県と空港検疫で2万5492人確認された。山形、群馬、岐阜、愛知、三重、広島、高知、大分、宮崎の9県は過去最多。全国の重症者は前日より72人多い1888人で、9日連続で最多を更新した。死者は計34人。
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 きのうも書いたが、新規感染者総数ではなく、「重症者」に焦点を絞って見出しをとるのは、菅の「コロナ感染出口対策」の先取りである。「重症者」が減った、コロナ対策が成功したという印象操作をしたいのだ。しかし、このまま「重症者」が増えたらどうなるか。たとえばの話、「重症者」が1万人を超えた場合、菅は「出口指標」として「死者」を持ち出すのではないのか。きょうの紙面の例でいえば「全国死者34人」。数字が極端に少なくなる。他の病気、がんや脳卒中で死亡した人は、きのうは何人か。あるいは交通事故で死亡した人は? 私は数字に疎いからわからないが、絶対に「34人」よりは多いと思う。そうすると、「コロナ感染死者34人」はたいした問題じゃないという「誤解」を招くだろう。
 実際、そういう「誤解」が広がっているのだと思う。
 西部版の紙面には、こういう見出しがある。
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福岡「宣言慣れ」傾向/緊急事態初の週末 前回より人出増
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 「宣言慣れ」だけではないのだ。感染者ではなく「重症者」に視点を移してしまうと、「重症」にならなければ大丈夫(死ぬことはない)という印象が強くなる。感染したって「軽症」ですむなら問題ない。外出したって(普通に行動していたって)死ぬことはない、と思ってしまう。コロナウィルスを媒介している(拡散している)ということに意識が回らなくなる。
 感染が拡大しているさなかに「出口戦略」というものを考えること自体が間違っている。感染が縮小し、そろそろ大丈夫かもしれないというときになって、それでは緊急事態宣言をいつ解除すればいいのかを決めればいい。いまある「指標」を目指すことが先決なのだ。いまある「指標」では、いつ解除できるかわからないから「指標」を変更することで解除を早めようとするのは、嘘の事実で「成果」を語ることになる。
 慎重に考えれば、いまある「指標」を達成したが、まだまだ再拡大の危険がある。「指標」を厳しく設定し直し、緊急事態宣言は延長すべきだという意見があってもいいはずだ。いままでの「解除」のタイミング、それから再拡大という繰り返しを見ていれば、どうしたって慎重に考えた方がいいだろう。
 やっていることが逆なのだ。経験から何も学んでいないのだ。
 「重症者○人」という菅のための見出しを「作っている」かぎり、コロナ感染は終息には向かわない。読売新聞は、菅の「出口作戦」を先取りするという形で、コロナ感染拡大に「貢献」しているとさえいえる。
 「宣言慣れ」しているは国民ではなく、菅とマスコミなのだ。
 web版には、全国の状況(東京の状況?)も書いてあった。
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 東京都は5074人の感染が判明し、4日連続で5000人を上回った。年代別では20歳代が1598人で最も多く、30歳代が967人、40歳代が750人、10歳代が565人。自宅療養者は2万6409人で過去最多だった。
 大阪府では、過去2番目に多い2556人の感染が確認された。
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 注目すべきは若者の感染が多いこと、自宅療養が増え続けていることだ。
 さらに、こんなニュースもある。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20210821-OYT1T50323/
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感染拡大で休園の保育施設、全国で100か所超に…10歳未満の感染は第4波の5倍
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 先に引用した記事には「10歳未満」の感染者数が書いていないが、10歳未満(園児)も感染している。数字というのは、どうしても「かぎり」がある。どの数字をみるか、そこから何を読み取るかは、とても「恣意的」である。どんなふうにも「操作」できる。そのことを踏まえてニュースを読む必要がある。
 パラリンピックに関しては、こういうニュース。
https://www.yomiuri.co.jp/olympic/paralympic2020/20210821-OYT1T50105/
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 東京五輪・パラリンピック大会組織委員会は21日、東京パラ関係者の新型コロナウイルス検査で、海外選手1人を含め、新たに15人が陽性と判定されたと発表した。来日後14日以内の選手で、選手は来日後14日以内で、東京・晴海の選手村には滞在していない。これまでに陽性となった選手は計2人となっている。
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 私が驚いたのは「来日後14日以内の選手で、選手は来日後14日以内で」と「14日以内」を繰り返していることである。これは何をいいたいのか。来日する前に(出国する前に)感染していたが空港検疫では「陰性」としてすり抜け、その後「陽性」になったということか。「東京・晴海の選手村には滞在していない」と付け加えることで、日本国内で感染したのではない(日本の安全安心対策は万全である)といいたいのか。
 しかし「東京・晴海の選手村には滞在していない」のだとしたら、その滞在先(つまり国内)で感染したということも考えられる。滞在施設がどんな施設なのかわからないが、当然「濃厚接触者」がいるはずだが、その数は書かれていない。またしても濃厚接触者数隠しが始まっている。
 (補足しておくと……。
 短い記事だが、ここにはいくつもの隠された情報があり、しかしそれを「隠している」ということを知らせるために非常に不自然な文章になっている。読売新聞にはかなりの頻度でこういう文章があらわれる。それが、とてもおもしろい。)

 一方で、三重県が「三重国体」の中止を申し入れたというニュースも載っている。中止は当然だろうなあ。
 東京五輪でもパラリンピックでも感染者がいなかったわけではなく、感染者が出ている。国体でも当然感染者が出るだろう。高校野球でも出ている。高校総体でも出ている。そういうことをなかったことにして、コロナ感染の実態を「重症者」に焦点をあてて報道するというのは間違っている。誤解を広げてしまう。
 何度でも書く。
 東京五輪は中止すべきだった。パラリンピックは中止すべきだ。高校野球も中止すべきだ。
 コロナが終息したとき、かならず、日本のクルーズ船対策が与えた世界への影響(厳しい対策をとらなくても感染は拡大しないという誤解を広げた)、東京オリンピック強行開催が与えた影響(国民の警戒意識を弱めさせた影響、人出抑制効果を弱めた影響)というものが検証されるだろう。そして、コロナが問題になったときから書いたことだが、十分な対策がとられなかったことに対する「未必の故意」が問われるということもあると思う。死なずに済んでいる人が、何人も死んでいる。先日の千葉の男児の死産などは、その例になるだろう。中国のように病院を建設する、韓国のように検査を徹底する、という「初期対応」の遅れがすべての間違いの出発点である。「手本」が隣国にあるのに、それを参考にしなかった。安倍、菅の責任は重い。


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