オリンピックは中止すべきだ(17)

 8月5日の読売新聞(西部版・14版)。

  政府は4日、新型コロナウイルスの感染が広がっている福島、茨城、栃木、群馬、静岡、愛知、滋賀、熊本の8県に「まん延防止等重点措置」を適用する方針を固めた。国内ではこの日、過去最多の1万4207人の感染が判明。東京や京都、福岡など14都府県で最多を更新。福岡県は、5日にも緊急事態宣言の発令を政府に要請する。

 東京都では4166人の感染が判明した。これまで最も多かったのは、7月31日の4058人だった。この日の死者は1人、重症者は前日から3人増の115人。自宅療養者は1万4783人に上り、6日連続で最多を更新した。
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 感染拡大がとまらない。たいてい木曜、金曜日くらいに、その週のピークを迎えるから、2万人も超してしまうのではないか。福岡の4日の感染者は752人。こちらも1000人を超しそうだ。
 さらに気になるのが「自宅療養者は1万4783人に上り、6日連続で最多を更新した」という東京の状況。管は入院患者は重症者に限定する方針を打ち出したが、方針を出すより先に、現実が先を行っている。入院したくてもできないひとが1万4783人。ここから、さらに感染が拡大するだろう。1万4783人に「濃厚接触」するひとは何人になるのだろうか。
 感染症対策の基本は、「感染したらかならず病院で治療します。完治させます。安心してください」ということだと思うが、菅のやっていることは逆。「全員入院させることはできないから、軽症者は自宅にいろ、重症になったら入院させてやる」というもの。入院するためには重症にならないといけない。こんなばかげた治療方針があっていいのか。だれだって「軽症」のうちになおしたい。その方が後遺症も少ないだろう。
 コロナ感染が問題になったとき、中国は隔離病棟を即座に建設した。韓国はPCR検査を徹底した。近隣の成功した対策を知りながら、管は(安倍も)何もしていない。いまからだって病院を建設すべきだろう。いまだからこそ、かもしれない。PCR検査も徹底すべきだろう。東京五輪が終われば、「抑制されている」といわれるPCR検査が解禁になり、感染者がさらに急拡大するだろう。病院を一刻も早く建設しないと、大変なことになる。
 「人流」が感染拡大の原因というのなら、非常事態宣言を全国に拡大し、東京オリンピックを即座に中止すべきだろう。札幌でのマラソンは、きっと「大混雑」するだろう。

 読売新聞は、五輪関係の感染状況もまとめている。

 東京五輪・パラリンピック大会組織委員会は4日、五輪の選手や大会関係者らのうち、新型コロナウイルス検査で陽性と確認された人が少なくとも累計322人となったと発表した。このうち選手は28人。組織委は「一定の陽性者が出るのは想定内」としているが、競技に出られなかった選手もいる。
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 「一定の陽性者が出るのは想定内」とは、無責任すぎる発言だ。「ひとりも陽性者をださない」というのが「安心安全」というものだろう。陽性者が出たとき、「申し訳ない。対策が不十分だった」と謝罪するべきだろう。「想定内」だから、気にしない、では陽性になったひとに申し訳なくないのか。だいたい「想定内」というのなら、その「想定」を最初に掲げるべきだろう。後出しじゃんけんで「想定内」というのなら、何人感染しても「想定内」であって、私の責任じゃない、と言い逃れられる。

 組織委によると、7月1日~8月2日の1か月間で、選手やボランティア、大会スタッフらを対象に50万件の検査を実施し、105人の陽性が判明した(陽性率は0・02%)。これとは別に、空港や民間検査などで陽性が分かった人が217人いたという。
 全陽性者322人のうち、半数は警備や清掃といった業務委託スタッフで、国内在住者は203人だった。
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 検査自体も、実態がわからない。「50万件」というのは延べ数だろうが、実際に検査しなければならない総数の何%なのか。「体会関係者」はいったい何人? それもわからない。どこでやっている検査かわからないが、組織委と仮定しておく。組織委で検査し判明したのが「105人」に対し、組織委とは別のところ、「空港」「民間」での検査で判明したのが「217人」。空港と民間の個別の実数が不明確だが、民間の検査で陽性だと判明したひとがいるということは、組織委の検査が検査になっていないという証拠である。そんな検査で「陽性率は0・02%」と発表しても意味はない。検査すべき人を検査していないのだから。
 「全陽性者322人のうち、半数は警備や清掃といった業務委託スタッフ」というのも、なんだか、ぞっとする表現である。「業務委託スタッフ」は「選手村」という「バブル内」に居住するわけではないだろう。自宅から通勤してきて業務に当たっているのだろう。つまり、「業務委託スタッフ」の周辺には、多くの「濃厚接触者」がいるはずである。そのひとたちの検査はどうなっているのか。「民間」任せか。
 そうであるなら。
 東京五輪が「感染源」となって感染したひとの数は322人ではすまないはずである。ここには、見えない「数字の操作」が入り込んでいる。ジャーナリストなら、そういう「発表されない数字」を掘り起こす仕事をすべきだろう。組織委のいわれまままに、その数字を鵜呑みにするだけではなく、「想定内」という組織委が正しいかのような宣伝までしている。
 私は、こういう記事を読むと、腹が立ってしようがない。

 さらに、こんな記事。(ギリシャ選手の感染記事の続報)。

 東京五輪・パラリンピック大会組織委員会は4日、選手村(東京都中央区)に滞在していたアーティスティックスイミングのギリシャチームの計5人が新型コロナウイルス検査で陽性と判定されたと発表した。高谷正哲スポークスパーソンは記者会見で「同じグループで5人の陽性者が出たのでクラスター(感染集団)と言わざるを得ない」と述べ、今大会で初めてクラスターが発生したとの認識を示した。
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「クラスターと言わざるを得ない」も無責任である。クラスターが発生しないように、どう対策をとってきたのか。これからどう対策を進めるのか。「クラスター発生」も「想定内」のことなのか。

 もうひとつ、こんな記事。

 豪州の五輪委員会は4日、東京都内で記者会見し、東京五輪に出場した同国代表の選手や関係者が帰国の際に日本航空の機内で飲酒して騒ぐなどの迷惑行為を行っていたことを明らかにした。7月29日のシドニー行きの便で、9競技の49人が搭乗し、一部が迷惑行為を行った。同国のラグビーとサッカーの協会が所属選手らの関与を五輪委に報告しており、両協会はさらに人物の特定を進める。
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 迷惑行為をした選手を肯定するつもりはないが、「バブル」で行動を制限されていたのだから、どうしたって気が緩むだろう。それこそ、こういうことは「想定内」のことである。こういうことを「想定」していないとしたら、それは想定しない方がおかしい。
 帰国した後、さらに選手たちは、それぞれの場所で「はしゃぐ」だろう。大会はどうだった、あのとき私はこうした云々。そういう「報告」は数限りなく展開されるだろうと、私は想定している。その選手のなかに、PCR検査では判明しなかった陽性者がいるかもしれない。そうすると、そこから感染が拡大するおそれがある。そのときの「感染拡大」は、「東京五輪が感染源」とは言えないのか。
 問題は、それだけではない。
 読売新聞のこの記事は、ギリシャ選手のクラスターの記事につづく形で書かれている。つまり「リンク」されている。その「リンク」を意識すると、私には、ギリシャ選手のクラスターと、豪州選手の迷惑行為は同じもの、と言っているようにみえる。ギリシャ選手がなんらかの不適切な行為をしたためにクラスターが発生した、と言っているようにみえる。
 おかしいだろう、こんな書き方。
 「安心安全」を宣伝して選手の参加を促し、何かあれば、「ルールブック」を守らない選手のせいでクラスターが発生し、感染が拡大している、という「印象操作」になりかねない。いざとなれば、「日本選手は感染しなかった。ルールブックを守り、適正な行動をしたからだ」と自画自賛するかもしれない。日本選手は「選手村」に閉じ込められて、行動制限を強いられているわけではない。外国人選手とは状況が違う、ということは無視されるだろうなあ。

 テレビを見ていない。五輪の結果は新聞を斜め読みしたときに知る程度だが、そんな私でも、これだけ疑問をもつ。実際に取材していれば(現場にいれば)、さまざまな情報があるだろう。どうしてそれを記事に反映させないのだろう。
 日本の金メダルラッシュだけを報道するための東京オリンピックは、即座に中断、中止すべきである。


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