なぜ、いま?(読売新聞記事の書き方、読み方)

 2022年12月24日の読売新聞(西部版・14版)の一面。
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「特定秘密」漏えいか/防衛省 海自1佐処分へ/OB依頼 複数隊員通し(見出し)
 海上自衛隊の1等海佐が、安全保障に関わる機密情報にあたる「特定秘密」を外部に漏えいした疑いがあることが、政府関係者への取材でわかった。防衛省は近く1佐を懲戒処分にする方針だ。特定秘密の漏えいが発覚するのは初めて。
 政府関係者によると、海自OBが、知人の現役隊員に接触し、複数の隊員を経て1佐の元に依頼が届き、漏えいにつながったという。
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 「政府関係者への取材でわかった」と書いてあることからわかるように、これは防衛省の発表ではない。「特ダネ」である。
 どうして、わかったのだろうか、というよりも、私は「いつ」わかったのだろうか、ということの方に関心がある。
 きょうの、ふつうの新聞各紙のトップは「来年度予算」だと思う。(確認していないので、わからないが。)その内容といえば予算規模が114兆円、防衛費が今年度より6・7兆円増えることだろう。
 なぜ、そんなに防衛費だけが増えるのか。
 だれもが疑問に思うだろう。
 その疑問に答えるには、日本が攻撃される危機が強まっている、というのがいちばんである。その「攻撃の危機」は、特定秘密の漏洩という形でも起きている。日本の情報が狙われている。
 でも、どこの国が、あるいは誰が、特定秘密を手に入れたのか。それは、読売新聞の記事には、まだ、書いていない。「海自1佐」が漏洩した(処分を検討する)というところまでわかっているのだから、当然、漏洩先もわかっているはずだが、それは「政府関係者」から教えてもらえなかったのか、教えてもらったけれど、「特ダネ」の第二報に書くために残しているのかわからないが、書いていない。
 これは逆に言うと、今後もこのニュースが「一面トップ」に書き続けられるということである。そして、それは「予算」の問題をわきに押しやるということである。
 これが、このニュースのほんとうのポイントだと私は考えている。
 「安保の危機」をアピールする。その結果として、防衛費の増額を当然のこととする。その方向に世論を誘導していく。
 「特ダネ」だから、今後次々にたの報道機関がこのニュースを追いかけるだろう。つまり、このニュースのつづきが、紙面を埋める日がつづくのである。その間、防衛費が大幅に増えるということが忘れられる。あるいは、「特定秘密」まで狙われている、防衛費が拡大されるのは当然だという方向に世論が誘導される。
 そういう誘導をするための、リークである、と読む必要がある。

 で、問題はもとへもどって、「いつ」リークされたか。
 やはり、このタイミングで、リークされたのだ。予算の閣議決定に合わせてリークされたのだ。
 読売新聞の記事を読むかぎり、漏洩した人物は特定されている。そこからさらに漏洩が広がるということもない。すでに漏洩された内容も把握されている。処分することも決まっているらしい。
 海自1佐と漏洩を巡る「過去」はこれから次々に出てくるが、きょう以降(未来の時間に)漏洩が起きる可能性はない。だから、このニュースは、海自1佐を処分してからの発表でもかまわないわけである。
 だとしたら、やはりいちばんのポイントは「リークした時期」、なぜ読売新聞がその記事をきょう書いたかである。
 一面のトップ記事が予算ではなく、「特定秘密」漏洩か、という疑問形のニュースであることの意味を、私たちは考える必要がある。そのニュースは、私たちの生活に直結する予算よりも重大なニュースなのかどうか、考える必要がある。

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