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音楽遍歴のようなもの。 #4 「横山輝一」

彼のことをどうやって知ったのか思い出せない。

随分冷たい言い方かもしれないが、いつの間にか好きになっていたのだ。

思い当たるとしたら、久保田利伸切欠で読むようになった「GB」かもしれない。

「GB」という音楽雑誌は情報に特化した読みものという印象があり、私はその雑誌の隅から隅まで読むのが大好きだった。

なのでこの人ってどんな曲を歌っているんだろうと「GB」で胸を膨らませ、エアチェック(特にFM)に勤しむ日々。

横山輝一がデビューしたのは1986年4月23日。

「ブギー・ウォーキン ~君を忘れるための...~」という曲なのだが、横山輝一はこの「ブギー・ウォーキン」とタイトルのついたFM番組を当時持っていたのだ。

私はそれを聴いていた。多分夜の8時くらいからだったと思う。記憶を確かめたくて検索してみたがその情報は残念ながら出てこなかった。

テーマ曲は確かに「ブギー・ウォーキン」で30分番組。毎週聴いていたから幻ではないと思うのだけれど誰かご存知の方がいらしたら嬉しい。

この番組で朗らかに楽しく話す横山輝一という人が大好きになった。

「ブギー・ウォーキン」という曲の持つ失恋ソングなのに超ポジティブでポップなイメージとその人柄がリンクして、他にはどんな曲を歌っているのだろうと興味が湧いて他の曲も聴くようになった。

2枚目のアルバム「VOICE」が特に好きでよく聴いた。

横山輝一の歌声は真夏の青い空の下でキンと冷えたサイダーを飲み干したときのような清涼感と爽快感があった。

勿論それだけではない。大人の恋を歌い上げる時のしっとりとした声も、ダンサブルでファンキーな楽曲を鮮やかに歌う声も素敵なのである。

そして、どのタイミングだったのかこちらも失念してしまったのだが、地元のFM局主催で、先述した番組の公開録音が行われることになった。

多分私が中学一年の時だったと思う。
「横山輝一の曲で一番好きな曲」を往復ハガキに書いて観覧希望を出した。

すると幸運なことに当選し、私は父に連れ添ってもらい、会場となったサテライトスタジオ前に並べられた折り椅子に緊張感一杯で腰を掛けた。

そして初めてガラス越しに生の横山輝一を見て、心の中で「うわあ、そこにきいっちゃん(勝手に呼んでいた愛称)がいるー!!」と興奮し、どんな内容だったのかは今となっては覚えていない(あかん)

ただハガキに書いた「好きな曲」のランキングを行っていたのは確かで、私はこの番組のテーマ曲である「ブギー・ウォーキン」を1位として選んだのだが、残念ながら第2位の結果だった。

しかし。
そこで奇跡は起こったのだ。

「この曲をリクエストしてくれたのは~」の後に、横山輝一と共に番組を進行していた地元局女性アナが私の名前を読み上げてくれたのである。

一瞬、「え?」となったその後、

きいっちゃんが私の名前を聞いてくれたーーーーーー!!

声は当然上げられないので、静かに喜びを噛み締めていたのだが、実は有頂天。名前を読まれただけなのに、だ。

あれ?1位の曲ってなんだったっけ?
 
あまりに名前を呼ばれた記憶が強すぎて肝心なことを忘れてしまっている。

ああ、やっぱりそっち(の曲)かと思った記憶はあるのに(おかしいな)

収録が終わり、そのサテライトスタジオのあるオシャレなビルの地下に父と食事に向かい、串揚げを食べながらも先程の喜びが幾度も湧き上がって、美味しさもひとしおだったのはいい思い出だ。

それからこの話も。
横山輝一と久保田利伸、仲が良かったのだ。

デビューが2ヶ月違いで近かったというのもあるのか、活動的に何か接点があったのか私にはよく分からなかったけれど勝手に思っていたのは音楽性の一致だったのだろうか、一度FMの番組に久保田利伸がゲストで来てくれたか電話で話したかしてくれて、私にとっては突然に訪れた推しと推しの共演に飛び上がるくらい嬉しかった。

内容はまたしてもよく覚えてないのだが(すみません)とにかく二人がマブダチだというのははっきりくっきり伝わってきた。

できることならその放送をもう一度聴いてみたい。カセットテープに録音していたのだが随分昔に実家に置いてきたまま処分されてしまった、無念。

それからの私は久保田利伸と同時に応援しながらも、以前お話しした新たな推しの出現によって距離が開くことになってしまう。

だがずっと横山輝一の歌声は胸に残り続け、現在に至るまでも定期的に体というか耳が欲して聴いてしまうくらいには好きなのだ。

横山輝一の歌声を知らない方も、ZOOの「YA-YA-YA」やMAXの「Ride on time」を作曲したと言えば「あー!」となられるかもしれない。

いやいや横山輝一自身も色々なCMや番組とのタイアップも多く、もしかしたらその世代を生きた方には聴き覚えがあるのかも。
 
今回かなり長くなってしまったが、横山輝一というアーティストをまだ知らない方にも彼の声や楽曲の良さを是非知って頂きたいと思った。

彼の天性の歌唱力は解放感に満ち、聴いている者の心を躍らせ、はたまたその陽の魅力と背中合わせの切なさで胸を優しく締め付ける。

現在彼は表立っての活動はしていないようだが、80年代の音楽が注目されている中、「横山輝一」という素敵なアーティストに是非目を向け、耳を傾けて頂きたいと思う。

幸運なことに、某所にて彼の楽曲に触れることが出来る。下記にて掲載し、再び強くおすすめしてお別れを。



雪まつり凱旋。「口からCD音源」とよく聞くが、それを生で越えてくる横山輝一の素晴らしさをとくとご覧あれ。


私の超個人的な思い出がいっぱいに詰まった彼のデビュー曲。横山輝一という人のおおらかさがよく滲んでいるポップでポジティブな爽快失恋ソング。


車のCM曲。そのCMも例に漏れず確保してビデオで鬼リピ。サビの駆け上ってゆく伸びやかな流れが心地良い、その軽やかな歌唱力に幸福感すら湧き上がる大人の優しく眠らない子守唄。


MAXへの提供曲をカバー。MAXがコーラスを担当し華を添えている。横山輝一の魅力は作詞(本曲は松井五郎)や作曲もさることながら、実は編曲に於いて素晴らしい力を持っているのではないかと個人的に思っている。それがこの曲に色濃く反映されているのではないだろうか。


他にも沢山素敵な曲があるので是非検索して、「横山輝一」を聴いて頂きたい。

(個人的にSpotifyで聴くことが出来るようになって欲しいと切望)

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