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『 モーラー の話 』

昔、僕がまだ幼稚園児だった頃

モーラーというオモチャがあった。

CMでは、手のひらや、指の間をくねくねと動きまわる、ケムシのようなものだった。

僕は、モーラーが欲しくて欲しくて
家の向かいにあるスーパーに行った。

そこには、2台のガチャガチャがあって(お店の外に)
覗くと、いくつか"モーラー"が入っていた。

10円玉を二枚重ねて、手前に入れて、回すと中の景品が出てくる。

僕は、20円を入れて、回そうとしたが、
となりのガチャガチャが当たる気がして
その10円玉を持ち上げようと掴んだ瞬間

横にいた、ケンジロウくんがいきなり勝手にハンドルを回してしまった。

僕の指は機械に挟まれ、爪が剥がれ、けっこうな血が出た。

僕がギャーギャー泣いてると、家から母が走ってきて、そのまま病院に連れて行ってくれた。

包帯でぐるぐる巻きになった僕に母は聞いた。

「どうしたの?なんで指を挟んだの?」と。

僕は、ケンジロウくんのことは言わずに

ただ 一言、モーラーが欲しかったと言った。

それでは、説明になってないが、母はそれ以上何も聞かず

スーパーにもう一度、僕を連れて行った。

レジで、数千円分を10円玉に両替して
ガチャガチャをはじめた。

この おっきなのが欲しいんでしょ?

と、見本のガチャガチャの写真を指差して言った。

僕は、うん…と、うなづいた…。

母は何かに取り憑かれたように、一心不乱に
ガチャガチャを回した。

お金がなくなると、またレジに行って、
数千円を両替して、ガチャガチャを続けた。

途中、小さなモーラーは出たが、大きなモーラーは、なかなか出なかった。

そのうち、周りに子供たちの人だかりができ

母は、ハズレカプセルや、小さなモーラーは、
全部 他の子ども達にあげてしまった。

2台のガチャガチャが、ほとんどカラになる頃

やっと、一番大きな 青いモーラーが出た。

僕ははしゃいで喜び、母はホッとしたようだった。

指の痛みも忘れ、そのまま家に帰って
モーラーを開けてみた。

目がクリクリしてかわいい。

僕は、モーラーを手のひらに乗せたり、つまんだり、手の甲にも乗せたりと

いろいろやってみたが、

モーラーはまったく動かなかった。

そして、よーく見ると、釣り糸のような透明っぽい糸がついていた。

それを引っ張ると、モーラーは動いた。

CMだと、まるで生きてるかのように
手のひらや、指の間を、ハツラツと動いている
モーラーだったのに

糸を引っ張らないと、うんともすんともいわない。

なんだか、騙されたような気分だった。

10分も遊ばず、僕はポイっと、リビングのテーブルにモーラーを、置いて部屋に行った。

それ以降、モーラーで遊んだ記憶もないし、
どこにやったのかもわからない。

簡単に言えば、ガッカリし、すぐに飽きてしまったのだ。

今にして思うと、

お母さん、ごめんなさい…

と、素直に申し訳なく思います。

と、いう 心暖まる 思い出話でした。(笑)

まったく…  やれやれ…    

わがまま ヤッチャンと、優しい母の話ということで勘弁してやってくださいね。

最後まで、読んでくださり ありがとうございます。

康幸







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