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私の光る君へ11

大河ドラマ『光る君』第11回目「まどう心」について
 やっと話は、本来の紫式部の人生に近づいてきました。
 道長と紫式部の間に、友情あるいは男女関係、はあったかもしれない〜が、ラブロマンスはありえない〜。それが私の考え方なもので、吉高さんと柄本くんの、ステキなラブシーンをみても、ドキドキ💗しない〜困った視聴者です。
 私は、紫式部という人を、とても尊敬しています。同時に私は、藤原道長という人を、源氏物語とその周囲の平安女流文学を、千年後まで遺る程に保護工夫を加えてくれたことにおいて、彼の度量の深さ大きさを、非常に高く評価しています。私は、源氏物語は道長の政治的制作で、二人の関係は政治的なものだと思っています。
 一方私は、彼が政治家として、その時代(藤原摂関政治)の大きな変革者であったとは思えないのです。紫式部もまた、その時代の女性の生きづらさを痛感しながらも、それを描くことはしても、その社会通念と闘ったとは思っていません。極めて聡明な彼女が、ただひたすら「書き連ね、書き遺す」ことによって、いつか時代の変わった後に、それでも平安の女性たちの、哀しいだけではない、強さを読み解いてくれる後世の読者を、千年前ののどかな光の中で待ってくれている気がするのです。

 まひろは三郎(ここでは私の意識混同を避ける為)に、「北の方にしてくれるの」と問いますが、紫式部は言うはずがありません。三郎は「勝手なことを言うな!」と、怒鳴ります〜令和女子は【まぁなんてひどい】と思う、テレビの前で言う❢わけですが、平安時代の社会通念の中で勝手なことを言っているのは、まひろなんです。
 「招婿婚・ショウセイコン」(夫に身支度や食事を提供する為、妻も経済力が必要)という、令和からみた納得のいかなさは、これも高校古文の教科書にあった「伊勢物語・筒井筒」のわけのわからなさを思い出してみて下さい。あの彼は結局初恋を護る形で収まりますが・・・
 
 「貴族は良い血の娘と結婚しなければならない」(ミュージカルMe&My Girlより)これが極々近代に至るまでの貴族社会、洋の東西を問わない常識でしょう(敢えて【だった】とは申しません)。
 天皇のおじさんであり、皇太后の弟になった三郎に、まひろは「政治家として権力を握り、貧しい者が貧しいというだけで、殺され、死ぬことのない世を作ってほしい」とも言っています。二人のラブロマンスより、余程こちらの方がリアリズムがあります。
 だから、三郎が「良い血」(=権力を固めるもの)を求めて動きだしたとしても、決して不実なわけではないと思わなければなりません。それを本来の紫式部は非常に冷静にわかっていたと思うのです。そうでないと、源氏物語・桐壺の巻の計算し尽くされた冷静な文は書けないと思うのです。
 桐壺の更衣は、大納言の父を既に失っていて後ろ盾がない。弘徽殿女御は第二皇子の光が皇太子になったらと危ぶんで、桐壺更衣をいじめ殺す。しかし、桐壺帝は早々に最愛の吾子・光を臣籍降下させて源氏とする。
 天皇でさえ「良い血の娘」と結ばれなければならない。源氏物語の登場人物の多くは、紫式部の周囲にモデルとして存在していたはずです。それは、一人の天才の手によって、ジグソーパズルのパーツのように、丁寧に、繊細に、美しく、組み合わされていく。弘徽殿女御は、千年も悪役を担わせられているわけで、当時の社会通念的に彼女は性格を歪められただけで、悪人ではない。その視線の共通項として、幼い帝を抱きしめる、道長の姉の詮子の悲しさ、苛立たしさ、翻っての強さも゙あるわけです。これからの吉田羊さんの演技がかなり期待できます。

 ドラマのまひろは、父の就活の為に、摂政兼家に面会します。貴族としては底辺の、言わば一般役人の娘が総理大臣にアポ無しで面会してもらえた〜宣孝(演・佐々木蔵之介、将来の夫、ドラマではまだ未定)が会えただけでも凄いと〜褒めてくれます。兼家(演・段田安則)にしてみれば、実は父為時(演・岸谷五朗)だけでなく、まひろにも左大臣家(源雅信の娘倫子、演・黒木華)へのスパイもさせていたから、後腐れを怖れたのでしょう。が!!「虫けらが迷い込んだだけ」と、道長に問われて言い捨てている。それを聞いた道長が父親への怒りに燃える〜というわけではなさそうなのが、今回のドラマのラストシーン、「父上へのお願い」ではないでしょうか?

 実際の動かし難い史実があり、当時の社会通念も゙よく知られているわけですから、あまりにラブロマンス、悲恋で、二人の関係を語ってしまうのは、私の本義ではない⁉〜と思うわけです。(柄本・三郎道長クンは確かに素敵です❤平安F4❤の配役も学習意欲が上がり、吉岡・まひろも愛くるしい❤)
 「俺の中ではお前が一番」と、聞いたことがあるような、三郎のセリフに違うんだよと、「世界でただ一つの花」が私の頭の中で流れました。
 これから、人類史上、『最古の長編小説』(を書かせて遺した人と、書いた人)という❝偉業❞に二人がどう迫って行くか、大変楽しみにしています。
 
 兼家が、道隆一家を晴明に対面させているところに、道兼が怒鳴り込んでくる場面。兼家に、適当に丸め込まれてしまう道兼。さもありなんという、リアリズム場面でした。伊周(演・三浦翔平)はもう大人での登場でした。幼い定子は、将来帝の女御にと言われても、よくわかっている落ち着いた雰囲気でした。後の男の子、紹介して貰えてませんでしたが、彼こそ私のイチ推し隆家サマでしょう❤ 
 やっと昇進させて貰えた上地・道綱が、道長に挨拶に来て、なんだか仲良さそうで、これならきっと年末まで上地さんのホッとする場面があると期待します。(道綱、案外長生きなので)赤染衛門先生(演・凰稀かなめ)の「言葉の裏に込められた思いを理解できるようになると良い歌が読めるようになりますわ」に続く、倫子姫とまひろのやり取りも、次回の予告同然でつらい、ヤバイ会話です。
 予告の中で、秋山・実資が、なにやら「釣書」(お見合い用履歴書)を見ていて、実資(富のある方)とまひろのお見合いがある、あったら楽しい気がしてきました。



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