最近の記事

「aftersun /アフターサン」

11歳のソフィは父親のカラムとトルコにバカンスに来ている。 具体的な事は一切説明されないけれど、おそらくソフィの両親は離婚していてソフィは母親に引き取られている。 カラムはこのバカンスの間に誕生日を迎え31歳になる。 若い父親だ。 のどかな親子のバカンスの描写が続く。 映画館で私の前の席の男性は眠ってしまうぐらい、特別大きな出来事は起こらず淡々とした描写が続く中、時折差し込まれる不穏なシーン。 微量だけど確実に積み重なっていく不穏さ。 それらがとても痛々しくて、でも美しくて、

    • 「くもをさがす」

      西加奈子さんががんにかかっていた、ということを知った時なんともいえないショックを受けた。 生命力にあふれてて強いメッセージがこめられている小説を書く人、というイメージがあったからだと思う。 留学先のカナダでがんにかかっていることがわかり、治療を始め寛解になるまでのことが書かれているこの本は、闘病記は闘病記なんだろうけど、次々と起こる出来事について淡々と書かれているせいか、湿っぽいところがない。 読み進めながら、その湿っぽさがないところに拍子抜けしてしまって、私は西さんががん

      • 食べ物の恨みは

        うちの職場は離職率が非常に高いので、退職時のお礼のお菓子をもらう事も非常に多い。 30人ぐらいの部署なのでなるべく全員に行き渡るように、と数が多めの個包装のお菓子を選んできてくれる人がほとんどなんだけど、毎回全員に行き渡ることがない。 なんなら半日もたたないうちにもらったお菓子が消え去っている。 それがみんなが大好きなおいしいやつだとか、限定でなかなか買えないやつだとか、そういうものの時は半日すらもたないこともある。 なぜかというと、うちの部署にそういうお菓子を独り占めする人

        • 「母という呪縛 娘という牢獄」

          この事件のことはよく覚えている。 母親に医学部へ入るのを強制され9年間も浪人させられていた娘。 9年かかってようやく娘が医師になることを諦めたのかと思いきや、今度は助産師になることを強要する母親。  そして娘は母親を殺害し遺体をバラバラにしてしまう。 当時のニュース等のざっくりした情報だけでも、この母親の異常さがわかったけど、この本には事件にいたるまでの長い年月のできごとが詳細に書かれていて、下手なホラーよりよっぽど怖い内容だった。 本当にところどころ寒気がして鳥肌がたつぐら

        「aftersun /アフターサン」

          悪意の正体を教えて

          ここではない、違うサイトで文章を書いていると、コメントをもらうことがある。  概ねはその文章の内容に沿ったコメントでありがたく読ませてもらっているんだけど、ごくたまにものすごく突っかかってくる感じのコメントを残されることがある。 まぁネット上のことだし、いろんな人がいるっていうのも重々承知してるので、あるあるだなぁ、と思ってはいる。 そこではあまり性別や職業についてはっきりわかる内容の文章を書いていないせいか、その突っかかってくる人の中で私は「ひきこもりの無職の陰キャおっさん

          悪意の正体を教えて

          女王蜂「MYSTERIOUS」大阪フェスティバルホール

          女王蜂のライブは去年の対バンツアー以来。   ひさしぶりのワンマンライブかつ初の声出し解禁ライブだったのでものすごく楽しみにしていた。 開場されてすぐにホールに入ったけど、かかっていたSEが女王蜂ワールド炸裂でますます期待が高まった。 セトリとかネタバレ禁止なので曲名は書かないけど、一曲目がもう「これしかないやん!」と思わせる曲で、会場のぶち上がりかたが最高だった。 そこからの10曲はもうほんと女王蜂ぶち上がりメドレー。  私は2曲目で涙腺が崩壊して泣きながらジュリ扇をぶん

          女王蜂「MYSTERIOUS」大阪フェスティバルホール

          髪のはなし

          去年の11月に髪をばっさりと切った。 どれぐらいばっさりかというと、約40cm。 ロングから一気にあごラインのボブになった。 別に特別な理由があるわけでもなく、ただ短くしてみたい、というそれだけのことで切ってみた。 お風呂の時間が半分になった。 ただ朝は寝癖がついてる時にアイロンで直さないといけなくなったので時間的なことはプラマイゼロみたいな感じ。 ロングの時はヘアケアに関しては無頓着だったので、たまに家でトリートメントをする程度。 今は傷んだ部分がなくなってさらさらなこの状

          髪のはなし

          最近の今さらなはなし

          去年突発性難聴になり、通院して服薬していたけど耳鳴りが続いたりでなんとなくすっきりせず、先生の態度も気になったので病院を変えてみた。 そこでまた検査をしたところ難聴は難聴だけど突発性ではなく、低音が聞こえていない難聴だ、と言われた。 薬が変わりそれを半月ほど服薬したあとまた再検査をしたら、聴力が戻っていることがわかった。  耳鳴りもほぼなくなり、薬ももう飲まなくていい、と言われた。 今さらながらセカンドオピニオン大事。   Netflixでハリー・ポッター全作が解禁されたので

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          一郎さんと私

          サカナクションの一郎さんが休養に入ってから配信されたインスタライブをいくつか見た。 ご本人の辛さを他人の私が本当には理解できないんだろうけど、それでも「しんどかったんだな」ということはすごく伝わってきた。 昨日のインスタライブでは「自分が本当に好きなものを作れなくなっていた」というようなことを話されていた。 メンバーやスタッフやファンに受けそうなもの、ライブの集客とか、そういうことを考えるようになっていた、というようなことを。 プロである限り売れてお金を稼ぐ、ということは大

          一郎さんと私

          最近のこと

          他部署の仲良くしてた人が突発性難聴にかかり、それが原因で退職してしまった。  音という音が耳に響いて気持ち悪くなって、そこからめまいが止まらなくなるのでまず通勤ができなくなった、と。 恐ろしいなぁと思っていた矢先、まさか自分も突発性難聴にかかってしまった。   朝起きた瞬間から右耳の中で高い金属音が鳴り止まず、明らかに聞こえにくい。 テレビをつけたら音が割れまくって聞こえて、エコーがかかったように二重、三重に聞こえる。 本当に突発的に起こるんだなぁ、と思いつつ、職場に欠勤の連

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          隣の芝生の青さ

          安倍さんの事件についてコメンテーターが「手製の銃で不釣り合いな、不条理な亡くなり方をして」と言っていた。ひねくれている私はそんなの安倍さんじゃなくても誰にとっても不釣り合いで不条理な亡くなり方だ、と思ってしまう。 今この世の中で自分が置かれてる状況を自分には「不釣り合いで不条理」だと思っている人って、ものすごく多いのかな、と思った。 そんな状況だからといって、その鬱屈とした思いをぶつけるため、他人の命を奪うことなんて絶対許されないことだ。 蛮行でしかない。  でも許されない、

          隣の芝生の青さ

          女王蜂のこと

          友人から「女王蜂のライブに行かへん?」と誘われたのは去年の12月のことで、仕事終わりに大阪から神戸の会場まで行くのはなかなかギリギリな感じだったけれど、これを逃してはなるものか、と女王蜂のライブ初参戦することになった。 開演の20分前に最寄駅に着いたらまさかの土砂降りで、その日雨が降るなんて天気予報で一切言ってなかったので、ずぶ濡れになってなんとか会場に辿り着いた。 仕事帰りの上ずぶ濡れの自分と違い、チャイナドレスを着てジュリ扇をひらひらさせてるファンの方々をうらやましく

          女王蜂のこと