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太平洋警察構想

Column~№14
 8月28日にオーストラリア政府が太平洋諸国フォーラムで「太平洋警察構想」を発表してこれが承認された。太平洋諸国に警察訓練センターを設け、更には多国籍の警察組織を創設するという。
 この目的は太平洋の島嶼国に対する中国の影響力を排除することにある。中国は警察活動への協力ということで、現地に中国の警察官を派遣して訓練をしている。オーストラリアは中国の進出を日本人が想像する以上に警戒している。
 この構想の狙いは別として太平洋警察構想は素晴らしいが、これを実現するためには問題も多い。特に捜査権と管轄権の問題は簡単に解決できるものではない。
 まず日本国内で言えば、○○県警察の警察官が△△県警察に勝手に行って捜査することはできない。県境を越えて捜査する場合には事前連絡をすることが規定されている。つまり○○県警は△△県警に「捜査に行きます」と連絡しなければならない。
 ただし犯人を追跡している場合など一部の特例はある。この事前連絡は刑事だけでなく、公安や生活安全などすべてが対象となっている。
そして日本にはFBIのような組織はない。ただ「FBIがなくても警察庁があるではないか」という意見もあるだろうが、警察庁は自ら捜査権を行使することはない。したがって全国を自由に捜査のできる「FBIのような組織はない」と考える。
 また県内を見ても隣接する○○警察署と△△警察署の間にも管轄権がある。つまり同じ県警でも警察署間には管轄権があり、その上の県警察間でも管轄権がある。そして管轄権だけでなく法律の適用範囲にも問題がある。
 日本国内で犯人を逮捕するには日本の裁判所が発布した逮捕状が要件となる。つまり海外の指名手配犯は日本では逮捕できない。したがって国外退去を命じて指名手配をした国に帰国させるのだが、ここにも問題がある。国外退去は命じることができても出国先を指定することはできない。したがって指名手配した国に引き渡せない。
 ただし国外犯規定というのがあり、海外で犯罪を行っても日本の法律が適用される犯罪もある。ただ逮捕状は発布されてもその国に行って逮捕することはできない。
 振り込め詐欺グループが海外から捜査員に逮捕されて戻って来た映像を見た方も多いと思うが、国際法では自国の航空機や船舶は自国領土と同じ扱いになる。そのため海外の空港で飛行機に搭乗させた時点で逮捕するが、日本の場合は基本的に公海上空に入った時に逮捕状を執行している。
 活字の問題で深く説明できなかったが、関係国を自由に捜査できる組織が創設されることは簡単ではない。だが是非実現を期待したい。

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