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千歳VOR/DME、リニューアル(その2)

VORやDMEのアンテナが新しくなった様子を 2021年10月9日の「千歳VOR/DME、リニューアル」で紹介しました。その続きです。

木々の葉がすっかり落ちたので、少し近くからVOR/DMEサイトの写真を撮ることができました。

▲ VOR/DMEサイト入口

入口は進入道路から立入禁止になっています。ここでは何も見えないので、少し高い方へと回り込んでみたところ…

▲ 千歳VOR/DME

フェンスの外側からカウンターポイズ全体を見ることができました。VOR/DME局舎は 小さなシェルターになっていました。右手に見えるのはトイレらしい。

▲ カウンターポイズ下のケーブルラック

ケーブル長は短い方が損失が少なくて良いのですが、シェルターをカウンターポイズの下に置くとクレーンが使えないため、少し離したようです。

▲ 旧VOR/DME局舎

以前の局舎はこの低い位置(左の建物)。高周波ケーブルを長い距離引き回すことになり、電力損失はかなり大きくなります。VOR送信機の出力が200Wでも、アンテナに給電される時点では数分の一になったでしょう。

24時間運用の千歳VOR/DMEには、停電時でも運用を継続できるよう発電装置があります。旧局舎に設置されているはずですが、それも更新に合わせてシェルター化されるそうです。千歳VOR/DME 30kVA発電装置(製造・設置・調整)についての官報の入札公告(R3.8.6)によれば、履行期間が令和4年3月22日までとなっています。写真右手のカウンターポイズそばに基礎が並んでいるので、たぶんこの位置に発電装置のシェルターが設置されるのでしょう。

▲ 千歳VOR/DMEアンテナ(2021年9月)

白色からオレンジ色へとアンテナ群が新しくなりましたが、以前から気になっているのは周辺の木々です。夏の終わりにはカウンターポイズの高さをはるかに超えて、森のように生い茂っていました。どの程度か分かりませんが、少なからずVORやDMEの電波に良くない影響が生じていると思います。

▲ 伐採された木々とカウンターポイズ

この冬に訪れると、敷地に近い場所の木々は上の方だけ切られていました。やはり電波への影響を気にしたのでしょう。根元から切り倒すことはせず、枝を掃って幹の上部だけを切り、木の命を生かしたようです。

▲ DME使用不能領域(地理院地図に加筆)

千歳VOR/DMEを使うことができない領域(unusable)をAIPで見てみました。VORに unusable はありませんが、DME unusable情報を基に地理院地図に示してみました。精密ではなく概略図ですのでご注意ください。地磁気の偏角は、AIPでは(decl. : 10°W/2020)となっていました(国土地理院のサイトで計算すると、2022年1月16日の予測値で 9.52°)。VORの方位は磁北基準です。

西側の 260~310°方向は、樽前山、風不死岳、恵庭岳、札幌岳など1000メートルを超える山々が連なるため、直進性の高い周波数帯を使用する千歳DME1203MHz)の電波が、山の陰になる低高度エリアでは使えないことは予想がつきます。距離35海里以遠の高度7000または9000フィートという数値は、山々の距離と標高から求める仰角(2°前後)と概ね一致します。

不思議に思ったのは 210~250°の方位です。高い山もないのに、フライトチェックで なぜ使用不能エリアとされたのでしょう?

▲ 千歳VOR/DME近傍の地形(地理院地図に加筆、着色)

VOR/DMEサイトの近くに障害になりそうなものがあるのかな? AIPによれば DMEアンテナの標高は26.4メートル。地図では近くにそれより高い場所は見あたりません。しかし、240~280°方向の地形は標高15~20メートルほどあり、その裾を高架の日高自動車道が走っています。もしや、その鉄筋コンクリート構造物がDME電波に悪さをしているのでは? サイト周辺の木々のせいでないのなら、高速道路以外に理由が思いつきません。


▲ VORモニタアンテナ

VORの方位誤差や電界強度を監視する3方向のモニタアンテナのうち、北側の1本です。ちょうど A350機が新千歳空港の滑走路01Rに進入していきました。


※ 特記のない写真はすべて、2021年12月、やぶ悟空撮影


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