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消えた 04FJ

7月30日付の Aviation Wire で、「FDA、退役4号機パーツ寄贈 頭部・翼端を長野県へ」という記事に目が留まりました。そういや、しばらく前に退役のニュースを見た気がします。

FDA(フジドリームエアラインズ)は、ブラジルの航空機メーカーであるエンブラエル社の “ちょっと小さめジェット機” で地方路線を運航するリジョナル(地域)航空会社… という私なりの理解。2009年の初就航以来、着々と機数を増やし続け、1号機から16号機まで、計16機もの運航体制になっていました。

ことし2024年の3月に初めて、16機のうちの1機である4号機(JA04FJ)が退役したのです。ん?4号機? 1~3は残して何で4から?

FDAが導入した16機のうち、中古機は4号機のみ。ほかの15機はすべて「新車」(新造機)を購入していました。だから機体の製造年の順だと、4号機が一番古いことになります。

1号機(JA01FJ)E170:製造2009年、シリアルNR.17000271
2号機(JA02FJ)E170:製造2009年、シリアルNR.17000289
3号機(JA03FJ)E175:製造2009年、シリアルNR.17000304
号機(JA04FJ)E170:製造2006年、シリアルNR.17000129 =退役済み
5号機(JA05FJ)E175:製造2010年、シリアルNR.17000317
(以下略)

やぶ悟空調べ

04FJ(面倒なので 以下 “JA”は省略)の機齢は およそ18年ってことですね。以外に早い気がしますが、世界の E170 の中で最も着陸回数が多かった機体(製造メーカーによる)とのこと。また FDAのwebサイトには、2017年1月に国内でランディングギア交換作業を行った、とありました。

FDAでの13年4か月で、30,848飛行時間、27,557フライトサイクルだったそうなので、単純平均すると1日あたりの着陸回数は5.7回。毎日どこかの路線を3往復ほど飛行した働き者だったようです。

フライトサイクル:「航空機運航サイクル」といい、「完結した一連続離着陸」と定義されています(JIS)。通常であれば、離陸して着陸するまでの飛行が 1フライトサイクルで、着陸回数も1回となります。

やぶ悟空


▲ フジドリームエアラインズの4号機(2021年12月撮影、冒頭の写真も)

以前にこの機体を使っていたのは、米国のリパブリック航空。その ERJ 170-100 SU(N866RW)を、2010年に導入したとのこと。それなら…と、連邦航空局の登録情報から “N866RW” を調べてみました。

シリアル番号:17000129
製造者名:EMBRAER
モデル:ERJ 170-100 SU
製造年:2006

FAA Registry

…と続き、2006年5月31日に登録証が発行されていました。そして2010年10月5日、日本へ輸出するため その登録が抹消されました。

輸入後は日本で JA04FJ として登録され、FDAで 2010年10月から就航していました。

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FDAが運航する航空機は全てエンブラエルのいわゆる「E-Jet」ファミリーですが、大きく2種類に分けることができるでしょう。E170E175 です。

E170 は、ERJ 170-100 STD とか ERJ-170 STD などと、そして
E175 は、ERJ 170-200 STD とか ERJ-175 STD などと言われるので少々ややこしい。(さらに “STD” 以外の設定もあり、退役した 04FJ は “SU” でした。ますますややこしい)

16機体制だったときのFDAフリートは、
E170 --- 3機(01FJ と 02FJ、そして退役した 04FJ)
E175 --- 13機(03FJ、05FJ から連番で 16FJ まで)
でした。現在は15機体制で運航されています。

例えば、2019年6月に新規登録された E175(14FJ)を次の写真で見てみましょう。

▲ FDAの14号機、E175(2023年2月撮影)

これは、ERJ 170-200 STD(ERJ-175 STD)です。退役した緑の4号機(04FJ)の写真と見比べると、翼端が大きく変わっていることに気付きます。


▲ 翼端の比較(APMの図に加筆)

エンブラエル社のAPM (Airport Planning Manual) にある図をベースにして、一部書き加えてみました。

FDAの資料によると、2015年3月に導入された9号機(09FJ)以降には燃費改善パッケージが適用されているそうです。この図のように ウイングレットの大型化に加え、ホイールカバーの採用や ラムエアドア・APU付近の形状変更などにより、約5.5%の燃費改善になるとのこと。(2014年3月13日付ロイターの記事などでは、新たな翼端や空力面の改修によって当初5%と発表されていた燃費改善効果が 6.4%にまで向上した、との報道もあります。)


▲ ホイールカバーの有無

上の段2枚の写真は、ホイールカバーがない 04FJ と 05FJ です。脚を格納するとツライチ(面一)にはなるのですが、デコボコで隙間が多いホイールの外側面がむき出しなので、そこにカバーを付けて少しでも抵抗を減らそうということでしょう。

燃費改善パッケージの導入経費などは分かりませんが、その改善効果はかなり大きいようです。

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JA04FJ は 2024年3月9日で運航を終了し、同年5月7日付で抹消登録されました。その理由は「機体解体のため」。売却も検討したのかもしれませんが、古い機体を飛ばし続けるには何かと維持費がかかるもの。退役させて解体し、使える部品などは同社の他機で使うという判断なのでしょう。

「運航を終えた4号機は拠点の県営名古屋空港(小牧)にとどまり、部品取りや、別の製品へのアップサイクル(作り替え)などに活用」(Aviation Wire、2024年7月30日)されるようです。そして、

「…退役4号機パーツ寄贈 頭部・翼端を長野県へ」(同)という見出しを見たとき、「頭部」は機体の顔なので残すのは分かるけど、それに加え「翼端」はどうしてかな?と思ったのです。古い 04FJ の翼端は、もうFDAの他の機体で使うことはない…ということなのでしょう。その翼端を再利用できるのは、機齢の古い2機の E170 だけですからね。

もし長野県で展示されるのなら、松本空港のあたりかなぁ。機会を作って見に行きたいなぁ。ついでに中部空港のフライト・オブ・ドリームズにも立ち寄ってみようかなぁ。そういや各務原かかみがはらの航空宇宙博物館にも長いこと行ってないなぁ… な~んてツアーを夢見ています。


▲ 新千歳空港から出発するボーイング787。その衝突防止灯の向こうで、着陸した 04FJ が787のブラストに揺らぐ(2021年12月)


▲ 折り返し、新千歳空港から離陸した FDAの4号機(2021年12月)

ハードディスクの写真を探してみると、04FJ を撮影したのは 2021年12月のこの日だけだったようです。


※ 写真はすべて新千歳空港で、やぶ悟空撮影

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