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千歳管制圏と 千歳特別管制区(その3)

お隣り同士で くっついてる「千歳飛行場」と「新千歳空港」のはなし…の3回目。

1回目で「千歳管制圏」の、2回目では「千歳特別管制区」の理解を深め、私自身はこの空域を少しイメージしやすくなった気がしています。

そこで気付いたのが、高度2,000~3,000フィートの空域の大部分が 千歳PCAから除外されている、という事実。どんな理由でそのように設定したのでしょうか?


▲ 千歳特別管制区と計器進入コース(地理院地図に作図)

小さくて見にくいのですが、千歳PCAの図に、精密進入コースとウェイポイントを書き加えてみました(情報源は 2024年10月3日のAIP)。よく使われる ILS進入のとき、高度2,000~3,000フィートの空域との関係が気になったもので…。

・ILS Z(Y) RWY01R --- YOTEI, YODAI, YOSEI
・ILS Z(Y) RWY01L --- BAMBI, MIREI, TENSI
・ILS Z(Y,X,W) RWY19R (CAT II & III) --- ISIYA, NACKS, WHITE, LOVER
・ILS Z(Y) RWY19L --- NAPRO, PUNCH, NESIC
・RNP RWY19L --- PUNCH, FAF(精密進入じゃないけど参考までに)
・ILS Z(Y,X) RWY36R --- NOBIG, ARAPA


AIP : Aeronautical Information Publication、航空路誌
ARP : Aerodrome Reference Point、飛行場標点
CAT : Category、カテゴリー
CTR : Control Zone、管制圏
ILS : Instrument Landing System、計器着陸装置
PCA : Positive Control Area、特別管制区
RNP : Required Navigation Performance、航法性能要件
RWY : Runway、滑走路
TACAN : UHF Tactical Air Navigation Aid、戦術航法装置

ICAO Abbreviations and Codes などから


平面図だけでは分からないので、ILS進入の断面図も描いてみました。

▲ 滑走路01R/19Lおよび01L/19Rの ILS進入パス・断面図
▲ 滑走路36Rの ILS進入パス・断面図

ILS進入方式だけでも滑走路ごとに複数設定されていますが(18Lと18R/36Lには設定なし)、その多くは 千歳PCAの空域を出ない設定になっていました。進入中に高度2,000フィートでいったんレベルオフし、その高度で ILSのグライドパス(3.0°、36Rでは 2.7°)を捕まえるのです。

でも、他のいくつかの方式では千歳PCAから除外されている高度2,000~3,000フィートの空域を通過します。

・ILS Y RWY01R
・ILS Y RWY01L
・ILS Y(W) RWY19R (CAT II & III)

これらの方式ではレベルオフの高度が3,000フィートなので、そこから3度のパスで降下すれば 当然3,000フィート以下になって千歳PCAの空域を一時的に出ることになります。また、

・ILS Z RWY19R (CAT II & III)

でも、千歳PCAの空域から一時外れる場合がありそうです。

とはいえ、新千歳空港では、ターミナルに近い滑走路(01L/19R)を離陸専用に、遠い方(01R/19L)を着陸専用に使う運用がほとんどなので、滑走路19Rへの ILS進入は ほぼありません(ヤマト貨物の深夜早朝便ぐらいじゃないのかな)。なので、実運用で気にするのは「ILS Y RWY01R進入」だけです。


滑走路36Rに進入する T-4 練習機


高度2,000~3,000フィートは、もしや F-15戦闘機とか T-4練習機のために空けてあるのでは? (冒頭写真は滑走路18Lに進入する F-15J)

戦闘機などが IFR進入することは、悪天候でない限り、ほぼないだろうと思います。滑走路が見えるのに延々とファイナルを直線飛行するのは無駄だし、何より有事にはとても危険でしょう。VFRで飛行場に向かって来て、高度2,000~3,000フィートの間を縫って着陸態勢に入る…ってことなのかな?


▲ 直前を横切る着陸

そういえば思い当たるフシがあります。千歳飛行場の東側から帰投してきたF-15や T-4が、01Rまたは19Lに最終進入中の民間機の「直前」を横切るシーンを何度か目撃しました。その後はオーバーヘッドで1周して着陸するのですが、民間機の操縦士も「直前」横断と感じて状況によっては「異常接近(ニアミス)」とも捉えられかねない距離でした。小さな自衛隊機にすれば、大型旅客機の後方乱気流に巻き込まれるのがイヤで、後ろには回りたくないのでしょう。


▲ 航空安全推進連絡会議の要請書(2017年5月6日)から抜粋

少し前ですが、航空安全推進連絡会議からこんな要請書が出ていたことを思い出しました。この記事で検討してきたことを言っているような気がします。


▲ 東から千歳飛行場に向かう高度(地理院地図に作図)


▲ 東から千歳飛行場に向かうイメージ

空を見上げていると、こんな飛び方をしているように見えます。

つまり、東の方から千歳飛行場に戻るVFRの自衛隊機が使いやすいように、高度2,000から3,000フィートの間を空けてあるのではないか、というのが私の考えです。

千歳特別管制区(PCA)の空域がこんなに複雑に設定されていることについて、本当の理由をご存じの方がいらっしゃいましたら教えていただけませんか?


滑走路19Lに着陸した エアバスA350-900


※ 図は やぶ悟空の独自解釈で描いたもので、説明文も含めて誤りがあるかもしれません。ご承知おきください。

※ 写真はすべて、やぶ悟空撮影

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