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「Tobetsu」って、どこ?

Tobetsu VOR/DME」が試験電波を出すという情報に目が留まりました。AIP JAPAN を見ていたときです。 当別??


▲ AIC 024/22

途別VOR/DME(TUE)の試験電波発射について」というサーキュラー(2022年9月8日付AIC)が出ていました。「Tobetsu」は「途別とべつ」のことだったんですね。数十年も前ですが「当別とうべつVOR」という無線施設があったので、あれっ?と思ったのです。

AIC : Aeronautical Information Circular、航空情報サーキュラー
AIP : Aeronautical Information Publication、航空路誌
DME : Distance Measuring Equipment、距離測定装置
VOR : VHF Ominidirectional Radio Range、超短波全方向式無線標識施設

それぞれの意味は、こちらで。


その「途別」って、場所はどこだろう? サーキュラーに記載された座標から探すと、帯広空港の敷地内であることが分かりました。近くに「途別川」が流れているので、そこから付けた名前のようです。

(冒頭の写真は帯広空港)


▲ 帯広空港(地理院地図に加筆)

帯広空港には以前から「帯広VOR/DME」という航空保安無線施設がありますが、その機器類が老朽化したため更新されることになっています。つい最近の7月3日、その工事の入札公告が出されました。(帯広VOR/DME更新工事、東京航空局)

▲ 帯広VOR/DME(Googleマップに加筆)

数か月かかる更新工事の期間中は、帯広VOR/DME の電波を止めなければなりません。このVORとDMEが発射している方位と距離の信号は、帯広空港の計器進入・出発方式はもちろん、千歳(V6)や 女満別(V4)とを結ぶ航空路や多くのウェイポイントを構成するために欠かせないものです。

▲ 帯広VOR/DME(2021年10月撮影)

帯広VOR/DME停波(電波が止まること)の影響を受けないように設置したのが仮設の「途別VOR/DME」で、期間中は代わりに任務を果たすことになります。


▲ 設置工事中の 途別VOR/DME(Googleマップに加筆)

Googleマップには、仮設VOR/DMEの設置工事中らしき写真が捉えられていました。基礎が放射状に並び、カウンターポイズ(円形の金属反射板)を組み上げる準備をしているようです。クレーン車やコンテナ状のシェルターも置かれています。

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6月、ドライブがてら その帯広空港まで足を延ばしてみました。

▲ 途別VOR/DME(手前)と帯広VOR/DME

途別VOR/DMEは、仮設とは思えないほどしっかりした造りで完成していました。「CAB VOR/DME」と書かれたシェルターが6個並び、非常用電源として発電機シェルターもあります。着陸したエア・ドゥ機の向こうに見えるのが、更新予定の 帯広VOR/DMEです。

真ん中に立っている棒状のものが DMEアンテナ。その下と周りにたくさん並ぶキノコのようなものが VORアンテナで、ドップラーVORを構成しています。


▲ 途別VOR/DMEの全景

この写真の左の方に1本立っているのが、VORのモニターアンテナです。

サーキュラー(AIC 024/22)によれば、途別VOR/DMEが試験電波を発射する期間は2022年10月から今年の8月まで、とされています。でも、帯広VOR/DME更新工事の入札公告では来年1月下旬までの工期になっていますから、試験電波の発射期間はそれに合わせて2024年まで延長されることになるでしょう。

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私があれっ?と思った「当別VOR」を検索してみると、こんな告示がヒットしました。廃止されたのは昭和56年6月11日。1981年ですから42年も前でしたね。

▲ 廃止された 当別VORの告示(抜粋し編集)


当別VOR(TUO)
昭和42(1967)年7月 運用開始
周波数:113.9 MHz、出力:200 W、常時

当別VORは コンベンショナルVOR(CVOR)で、DMEや TACANは併設されていませんでした。現在の日本では、より方位誤差の小さい ドップラーVOR(DVOR)にすべて置き換わっています。でも、ロシアなどでは今でも CVORが新設されているようです。


最近の大事なことはすぐ忘れるのに、こんな昔の記憶がまだらに残っていたりするので、そんな老化現象も楽しむように心がけています。

今回はとてもマニアックな内容になってしまいました。仮設のVOR/DMEについては、こちらにも詳しい記事があります。よろしければご覧ください。


※ 写真はすべて、やぶ悟空撮影



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