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PPP的関心【札の辻スクエアに行ってみました。良い空間だけどちょっと惜しい、と思ったこと】

最近、自分にとっても自分の仕事にとっても実に良い出会いがありました。たまたまその方との待ち合わせに、最近できたばかりの施設を見ながら、ということで、4月1日に開館したばかりの東京都港区にある札の辻スクエアという複合施設に行ってみました。
とても気持ちの良い空間でしたが、今回はそこで疑問というかもったいないと感じたことについて書いてみようと思います。

札の辻スクエアとは

東京都所有地だった「東京都港都税事務所」「三田警察署」の跡地と、別の場所の港区所有地を土地交換して港区所有地となったこの場所を港区が一体開発して、港区立産業振興センターそして港区立三田図書館にプラス民間連携床からなる複合施設です。施設名の「札の辻スクエア」は公募でつけられたようです。

これまでの経緯がわかるまこのようなおまとめサイトもありました。

区のホームページにある「産業振興センターは、商工会館、港勤労福祉会館の機能を再編し、新たな機能を追加」というのは以下のようなものを指しているようです。

■ホール大・ホール
小セミナー、発表会、展示会、式典、ワークショップ等、幅広い用途に対応
・立食パーティーやレセプション等の飲食・飲酒を伴う利用も可能
・展示会や即売会等の営利目的の利用も可能
■ビジネスサポートファクトリー
クリエイター、デザイナー、起業家等のアイデアの具現化、試作品製作のための先端設備機器が設置
・動画スタジオ、3Dプリンター
・アパレル3Dシミュレーションシステム、アパレルCAD、アパレルカッティングプロッタ、パターンスキャナー、業務用刺しゅうミシン
■コワーキングスペース
スタートアップ、起業家、個人事業主、中小企業者等の働きやすいワークスペースを提供。コミュニティー形成を促進するスペース
■三田図書館
新たな出合いと発見にあふれ、未来を開く「学び」を支える場として、移転開設。港区立図書館として最大面積および最多の蔵書を持つ図書館に

港区ホームページより

コーワーキングスペースで会員登録してみると

たまたま利用者がいなかったけど、コワーキングスペースの様子(矢部撮影)

以上のような施設で、ちら見程度ながらフロアをいくつか見て回った印象はなかなか広々して使いやすそうな感じですし、図書館スペースも閲覧デスクからの眺めも良く広々とした空間でした(前の三田図書館のどことなく暗い感じも「らしい」感じで悪くなかったですけど)。
ということで、たまに何かの時にこの場所を使えるようにしたいと思い立ちコワーキングの会員登録をしてみることにしました(実は、最近、有難くも良いご縁があって三田界隈には落ち着いて執務できるスペースはあるのですが、登録だけなら無料だそうですし多様な場所を確保しておくのも良いかなということで登録してみました)。

サービス水準は「まだ今の所は」十分とは言い難い印象

さて、早速登録を申し込んでみると。
その登録手続きにはちょっと驚きでした。紙に自筆で住所とか書いて身分証明書もコピーしてもらって … みたいな形式で申し込みをするものでした。
また、利用の際にはよく食堂にある券売機みたいな機械で時間券とか一日券を購入して、それをカウンターの受付に会員証(なんとこれも紙でした!)を提示して利用開始 … みたいな手順なんだそうです。
思わず「これそのうちネット申し込み可能になりますか?」「利用券も紙ではなくクレカ決済の対応でアプリで…とかにそのうちなるんですか?」などと聞いてしまいました。「多分…」みたいな答えではありましたが、きっとそのうちなるのだと思います(いつ頃になるかはわかりませんが)。

このサービス水準の背景を考える

札の辻スクエアの施設でも導入される指定管理者制度について

札の辻スクエアの施設運営は指定管理だそうですので、つまり行政サイドが仕様(手順や手続きなどに係る基本的な設計や方針)を決めてそれに基づいて民間に業務実施を依頼しているということが一般的で、上記のような状態は、そういう仕様要望だった「可能性」も想像できます。

参考:公の施設の指定管理者制度について(総務省)

条例の制定(第244条の2第3項・第4項) 
●公の施設の目的を効果的に達成するため必要がある場合は、条例の定めるところにより、 法人その他の団体を指定管理者とし、公の施設の管理を行わせることができる。
●公の施設において指定管理者制度を導入することとした場合に条例で定めるべき事項 
・指定の手続(申請、選定、事業計画の提出等) 
・管理の基準(休館日、開館時間、使用制限の要件) 
業務の具体的範囲(施設・設備の維持管理、使用許可)

公の施設の指定管理者制度について(総務省)

コーワーキングスペース(シェアスペース)は田町・三田駅界隈でも駅前をはじめ民間が開設しているスペースが既に多くあります。
もしも想像通りで行政による仕様(方針)のもとだったとすれば、競合もある環境下で民間が提供可能なサービスを実施する以上、せめて民間サービスの利便性の水準を理解した上で仕様を設計してほしいものだと思いました。

同様に民間連携床と称される民間施設の導入床は4月1日開館に間に合っていませんが、間に合わないままで開館するか?の判断もユーザー満足視点で考えれば、開館の時期の変更もあり得たかもしれません。

提供サービスの準備と提供開始日程をどう考えるか

周辺のいわば競合民間水準をターゲットにした際に、もしも要望仕様としては競合水準が十分意識されたものでたまたま実装が間に合わなかったとしたら、無理矢理に4月1日開館する意味はあったでしょうか。
一般的にこのようなプロジェクトに取り組むにあたっては、サービスカットオーバー日程から「逆算」して準備工程・業務に分解し着実にクリアしながら予定通りに開館へと進めるわけですが、仮に途中で仕様要望水準の具体化に時間が足りなくなることが判明すれば、4月1日を変更する選択もあると思うのです。

よもや「年度初め」なので日付は固定ですといった行政カレンダー的な都合があったということはないと思いますが、ユーザーの満足度を高める状態を作った上でサービスインさせるという選択はなかったのかという残念な感想が残りました。

とはいうものの。今後のサービス向上が楽しみ

…とまぁ、数時間の体験で思ったことを若干ネガティブな印象で書き連ねてしまいましたが、良い施設だと思いますし大きな投資をした場所でもありますから、より良いサービスが提供されることで「たくさん使われる場所」になってほしいと思います。

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