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PPP的関心2024【視察メモ@廿日市市・広島、山陽小野田・山口②「廿日市市地域医療拠点等整備 PRE事業」】

東洋大学PPPスクールの先生方、メンバーと一緒に行った視察メモ@廿日市市・広島、山陽小野田・山口の①は「まるくる大野」に続き、今回はその2として廿日市市が行った地域医療拠点等整備事業の視察記録です。

廿日市市地域医療拠点等整備事業とは

詳細はリンクから

廿日市市地域医療拠点等整備事業の概要より(概略抜粋)
・現在必要とされている地域医療の確保、さらには将来にわたって持続的な行政サービスの提供のために、医療・保健・福祉が相互に連携協力する拠点整備
・地域包括ケアシステムの構築、安心な医療体制の整備、切れ目のない安心な子育て環境の提供という3つのテーマに、「福祉」・「医療」・「まちづくり」の3つの機能をもつ拠点とする

現地の状況(筆者撮影)

個人的な注目点1。地域課題への対応方針と先手を打つ不動産取引への参入

今回の事業用地はもともとは大手SCの店舗だったそうです。地域の変化に伴いSCが撤退することになった際、跡地の行方は民間による土地取引に委ねられるのが一般的なわけですが、一方で行政としても例えば公序良俗の視点や安全安心の視点など多様な観点で「そこにふさわしい土地利用とは何か」を考えることもあるわけです。
「そこにふさわしい土地利用」を実現するにあたって、大手SC店舗の撤退後の(デベロッパーや多様な地元商業主の)民間需要動向を把握、民民の取引だけに任せておくと地域の求め(医療機能の持続可能性や高齢化対応など)に合わせた行政サービス需要を実現できないとなれば、対象用地取得に行政が参入することも必要です。この事例でも市は先手を打って動いたそうです。

なぜか。
今回のSC跡地でも一時遊技場が取得し事業を開始するというウワサがたったそうですが、市としてはこの場所をどうしたいかという都市経営ビジョン、そこまで大袈裟無言葉使いでなくとも目に見えている都市課題を念頭にこの場所の使い方を考えたわけです。特に市民病院を持たない廿日市市では隣地のJA病院を市民病院機能として支援してき経緯や地域の高齢者への福祉サービス提供の創造などを踏まえた検討すべき事項が元々あり、その対応方針があったということです。こうした方針がなければ、不動産取引に必要な費用を議会に承認してもらうのにも時間がかかったかもしれません。
余談ですが、以前視察した盛岡市の盛岡バスセンターの整備(公有地の上に民間施設で再建した例)でも、街の中心部を一時的な利益(住宅開発など)のために使うのではなく、(市民の記憶・誇りとしても、もちろん機能としても)重要な交通結節機能を失わせないという方針を固め、旧バスセンター廃業後の用地取得に向けた盛岡市が素早く跡地取得に動いた例を思い出させます。

何でもかんでも買えばいい、参入すればいいわけではないのはもちろんですが、今回の廿日市市や先の盛岡市の取り組みには地域の求めを理解し、持続可能で将来につながるような行政サービスを構築する「行政の役割」を果たそうとする姿勢を感じます。

個人的な注目点2。施策の効果を考え、民間の取り組みやすさに寄り添う丁寧なPRE事業

もう一つ視察時にお話を聞いて注目したことは、一つ一つ自治体が自ら考えた施策であることです。
そんなことは当たり前だと思われるかもしれませんが、先行事業事例の内容をコピーアンドペーストして計画や実行策を表すようなことや、一般的なPFI方式の「雛形」を活用しようとすればそれも可能であるわけで、そのなかであえて事業仕様の検討、実施にあたって雛形的な仕様書で策定を進めるのではなく、誰が何をどのようにすると行政が目指した目的を実現できるのか、実現の水準が高まるのかを考えた上で定期借地契約や建物譲渡契約など個別の契約を丁寧に組み合わせたPREの進め方は、市役所・ご担当の皆様のご苦労も多かったと思いますが「効果を考える」行政取り組みとして注目すべきものだと思いました。

参考)PREって






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