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PPP的関心【にわかに関心が高まる電力(電気代)問題は自治体も同じ】

資源価格高騰などによる電気料金の高騰は、普段はあまり家計の細かな中身に目を向けていない自分のような者にとっても俄に関心が高まる話題です。
また、家庭用にまで広がった電力自由化に伴い「お得になる」と切り替えた新電力各社による供給も、調達価格の高騰によりそもそも新電力会社の経営が難しくなりつつあるという話もあります。
そのような経済環境は(地方政府を含む)政府部門にとっても同じです。
明らかに「にわか仕込み」ですが、重要な問題だと思いますので私も自分で考える材料集めを始めてみようと思います。
*写真は鎌倉某所でのプラベートショット。太い送電線を支える鉄塔。

気になったニュース。電力調達で入札不調

記事によると「そもそも入札が不調に終わる」だけでなく、結果的に「割高な料金での供給契約の締結」を余儀なくされる事例が出ているとあります。

電力価格の高騰が続く中、中央省庁や地方自治体による電力調達の入札がうまくいかないケースが急増している。
入札情報速報サービスNJSSを運営する「うるる」のデータベースや地方自治体の入札情報検索システムを用いて東洋経済が調べたところ、入札が不調になったことで高値での随意契約の締結を余儀なくされたり、セーフティネットとされる最終保障供給契約(どの小売電気事業者からも電気の供給を受けることができない企業に対し、送配電会社が電力を供給する制度)を結ばざるをえなくなるケースが相次いでいることが判明した。
記事より

公共施設運営にかかる電気代(行政コスト)の削減効果をより拡大しようと電力市場自由化に伴い参入した小売事業者との契約が、環境変化(卸売市場価格の高騰)によって目論見が崩れたということです。こうした環境の急変による問題発生であるがゆえに、もちろん特定に誰かの責めに帰するものとは思えませんが、この後にどう対応するのかについては考えどころです。

気になった記事。家庭用の「自家使用」への変化

リンクは東京大学・前先生の論説です。太陽光を利用した再エネへの懐疑論への反論を多様な観点から書かれたものですが、3ページ目の論点「屋根載せ太陽光は自家消費優先なら他人に負担を押し付けない」の中にある

今では太陽光の初期コストが大幅に下がり手頃になったこと、売電単価が下がり自家消費優先にシフトしたことから、安心して広く普及させるべきと考えています。
自分の家の電気代はしっかり減らしつつ、他人にも負担を押し付けない。系統停電時にも電気が使え、系統の託送料金を負担する必要もない。大事な国土を痛める危険もない。自家消費優先の屋根載せこそ、これからの再エネ普及の主役となるべき
記事より

という記述に注目しました。
前先生の話は家庭部門に関する内容で書かれていますが、冒頭のような急激な環境変化への対応を考える際の要点として「経済効果やリスクマネジメント観点から発電施設(例えば自宅建物に乗せた太陽光発電施設)を自ら保有して、自ら使う」という考え方にシフトするということは、自治体にも共通する検討すべき論点だと思いました。

電力自由化とは別文脈の話から。
公共施設における再エネ電力調達方針と自主電源

リンクは2020年冬のニュース記事ですが、電力自由化による経済効果を主眼とした取り組みとは別観点で、2050年カーボンニュートラルに向けた政府部門の温室効果ガスの排出削減に率先して取り組みが示されたということを伝えたものです。

これに関連して、環境省から「再エネ電力の調達」について、リンクにあるように②電力契約による調達に焦点があたったペーパーも出されていることにたどり着きました。

しかし、電力を市場調達「だけ」に絞っては、冒頭のような環境変化(市場価格の急変、給湯)があった際の電力確保や行政コストの安定化の目論見は大きく外れる可能性があるということが今回のことで明らかになりました。
すると、先ほどのリンクにもある環境省からの提案のうち「①専用線で接続された再エネ電源からの直接調達」「③再エネ電源証書の購入」という選択に注目が集まります。
③は家計部門に置き換えて言えば「再エネ賦課金」と同じで、施設や環境の整備に必要な資金を提供する原資となる資金を電力取引とは切り離して集める仕組みであり、いわば「施策の推進」のための貢献であり、その意味でも①の直接調達を検討することにより注目が集まるのではないかと思います。

PPP的取り組みと自治体新電力

地域内の発電電力を最大限に活用し主に地域内の公共施設や民間企業、家庭に電力を供給する小売電気事業を地域新電力と呼ぶそうです(自治体が出資するものを「自治体新電力」と呼ぶという区分けも目にしましたが、本記事の中では以下の環境省の記述をもとに地域新電力としてまとめます)。

地域新電力について

地域のエネルギー会社が地域の再生可能エネルギーを活用して地域にエネルギー供給する事例が多数出てきており、エネルギーの地産地消を促進し、地域の資金を地域内で循環できる取組として期待が高まっています。 

地方自治体の戦略的な参画・関与の下で小売電気事業を営み、得られる収
益等を活用して地域の課題解決に取り組む事業者を「地域新電力」と呼び
、民間の創意工夫の下、地域における面的な脱(低)炭素化に取り組む地域新電力の設置及び強化・拡充を支援する地域脱(低)炭素化推進事業体設置モデル事業 ※(以下「モデル事業」という。)を実施しています。
環境省 資料より抜粋

つまり、自治体が地域の民間企業と共に手を組み地域の公共施設あるいは公的空間への電源供給、並びに雇用創出や経済波及効果による地域の活性化を狙った取り組みが「地域新電力」ということであり、電力供給という領域でのPPP的取り組みと言えるものだと考えられます。

地域新電力の課題と可能性

東北経済産業局 カーボンニュートラル セミナーでのある団体からのペーパーとして、以下の内容を目にしました。ここでは地域新電力の現状とそこから見えてくる課題のようなものが示されています。
しかし、課題が明示されるということは、裏返せば指摘されている従来型の取り組みにおける不足を補うことで、地域にとって効果的なPPP的取り組みになると考えられます。

東北経済産業局 カーボンニュートラル セミナー 資料より

加えて、既に効果的な運営(資料内では「地域の担い手として「価値」を 創出している事例」として紹介されていました)がされている事例も例示されています。

東北経済産業局 カーボンニュートラル セミナー 資料より

大きな文脈として。
「エネルギー自立と地方分権」的なことを考える機会

直前で紹介した資料にも、2021年秋以降の急激な環境変化(電力市場の価格急騰や資源価格の急騰など)への対応の「一つの方向」として「地域での非FIT電源開発にシフト (足元では太陽光発電のオンサイトPPA、オフサイトPPAの 実施・検討が活性化)」が書かれています。
電源開発にはインフラ整備など民間のノウハウと資金の重要性が高まることが考えられます。一方で公有地の効果的な活用など自治体側にとってもこの機会活かす視点が求められます。

高度成長の実現のために集約による高効率化を目指した時代から、定常社会と言われる低成長な時代に入りつつある状況で、高度成長時代のインフラや仕組みにこだわり続けることがかえって非効率になる可能性もある、という視点からも電力の地産地消、自主電源確保という取り組みを見ておく必要があるな、と改めて思いました。
これまでの仕組みを取り巻く権益、インフラ再構築のための追加コストなど障害も少なくはなさそうですが、コンパクト&ネットワーク、自立した地域社会連携という方向は他分野でも見られる文脈で、こうした流れにどんなペース(スピード感)で実装してゆくかという問題でもあるのかな、とも思いました。

以上、不勉強、にわか仕込みの話をつらつらと書きましたが、このテーマについては引き続き勉強していきたいと思います。

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