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PPP的関心【「スマート」てんこ盛りな感じのスマートタウン構想はスマートか?】

先日、偶然お邪魔した福島県いわき市(まちづくり活動に取り組む団体から講演依頼を受けてお邪魔しました*当社HP)。ご縁をいただきいわき市役所の都市計画課の方にも同じ日にお会いしたばかりでしたので、リンクの記事(いわきスマートタウンモデル地区推進事業の関連)が気になりました。
ということで記事を読んで思ったことを少々書いてみました。
*写真はその時に昼食に立ち寄った店の壁にあった「昔のいわき湯本」界隈を表したmap。なかなか味わい深い感じ・・・

いわき市のスマートタウンモデル地区推進事業とは

見かけた記事は「いわき市のスマートタウンモデル地区推進事業にあたって2回目のサウンディング調査をする」という内容でした。
そもそもこの地区は、既に街として開かれていたいわきニュータウンの最後の開発予定地(いわき市土地開発公社が平成21年3月にUR都市機構から取得した住宅用地造成事業用地)です。最初の分譲から既に40年以上経過したいわきニュータウンやいわき市全体が抱える課題(例えば市域のインフラと住民の"二重の老い"の同時進行や少子化など)の解決策として或いはコロナ後の社会を見据えた取り組みのモデルとして、「スマート」施策が盛り込まれた地区開発を進める事業だということです。

ところで、最終分譲地開発をスマートタウン化事業のサウンディング調査に応じてくれる民間企業の募集に先立って、令和4年3月15日(火)から4月5日(火)まで、民間事業者が提供するスマートサービスを把握するための「スマートサービスシーズ調査」というものが行われたそうです。
その結果も既に市役所のホームページで開示されていました。

結果一覧を眺めていると、実に多様な主体から「スマートサービス」の紹介がされていました。事業モデル(=一般的に考えれば、事業が利益を生み出すための「誰に、何を、どうやって付加価値を提供し収益を得るのか」が盛り込まれたビジネスの仕組みということか)という共通項目には、多種多様な「事業モデル(とはいえない感じのものもありましたが)」が挙げられていました。
・地域発電とエネマネでスマートコミュニティ作り、避難所作り
・ZEH(Net Zero Energy House)住宅の建設でスマート
・道路や(下水道)管路のレーダーによる点検、スマート維持管理
・スマホだけの買い物システム(無人小売基幹システム)
他にも地域電源、EVステーション、スマート宅配ボックスなどが列記されていました。
印象としては、実に「至れり尽くせり、てんこ盛り」なメニュー紹介です。

ところでスマートタウンの「スマート」って何

こんなサービスあります!という事業モデル?の紹介をみると、それだけで「スマート」って凄そう…などと思うのですが、ところでスマートっていう言葉は一体何を指すのでしょうか。

IT用語辞典なるものを引いてみると、『ITの分野では、原義の「賢い」「気が利く」などの意味から転じて、「コンピュータ化された」「情報化された」「高度な情報処理機能が加わった」などの意味で用いられることが多い』とあります。
また『スマートシティの実現に向けて 【中間とりまとめ】 (平成30年8月 国土交通省都市局)』の中では、類似するスマートシティの定義について、『都市の抱える諸課題に対して、ICT 等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区』と定義されています。

つまり、その場所での暮らしや営みにとって快適で便利で幸福感を得られる環境を創造するために、人々の暮らし・活動や住民、街のハード整備や施設状態(コンディション)がデジタルな情報として蓄積され、情報変動や変化が注視されて最適化されている街、ということでしょうか(確かに便利そうだけれども、人間の不完全なところを機械や機器が補ってくれる「程度」がいかほどかによっては少しばかり「気持ち悪い」感じを持ってしまいそうですが)。

提示されている事業に対するちょっとした違和感

先ほども、「事業モデル(とはいえない感じのものもありましたが)」が挙げられていました、と書きました。
なぜ「とはいえない感じのもの」と思ったのか、その違和感の根底には「誰のため」「何のため」が感じられないことにあります。

「誰のため」が感じられない理由はこんなところです。
土地分譲事業にまつわる話ですから将来の購入者はもちろん、既にニュータウンの開発済み地区にお住まいになっている市民が対象であることに間違いはないと思います。しかし、対象となる市民や住民の「需要」みたいなものが垣間見られず、記されているのは商品・サービス供給サイドができることの列記でしかないと感じたからです。従って「何のため」についてもピンとこないというのが正直なところです。

今のコンテンツが、もしもそのまま全て挿入されたとなると、そればもう「作りたい人のため」という「見え方」にしかならない気がします。

いわき、いわきニュータウンならではのスマートへの期待は何?

今回のいわきニュータウンのスマートタウン構想にある「スマート」につながるテーマ(① 豊かさと安心を持続 するまちづくり ② 必要なサービスに、誰もが アクセスできるまちづくり ③ 世代循環を促し、住み 続けられるまちづくり)については「いわきスマートモデル」と独自の表現のように見せているものの、要は国のスマートシティの定義のそのままと言える内容です。
きつい言い方ですが、だから「至れり尽くせり、てんこ盛り」になってしまうのだと思います。

ニュータウン住民や現在は他地域に住んでいる市民が抱える問題とその背景を理解し、解消の優先順位を整理、共感されるための情報開示が不十分ゆえに、この事業計画が総花的なものに映るのだと思います。
もちろん、この辺りは「これから」官民連携で始まるもので、自治体サイドから過剰な与件を与えない(与えられない)と言う側面もあるかもしれませんし、実際には「みんな」という市民はおらず、個別の意見や要望を集約し選び重み付けをしてゆくことは「言うは易し行うは難し」なワークであり、ボトムアップ的な共感を呼不ことができるような実情把握は大変そうです。

しかし、大変だからといってそうした地域にとっての順位づけを放棄するとどの駅に行っても同じような駅前になってしまったハード整備で「その場所ならではのキャラクターや街での暮らしが求めるもの」を失った過去の都市計画の二の舞になるのではないでしょうか(当時はそれが求められていたので仕方ない側面もあったでしょうが)。

・・・と、まぁ、勝手な思い込みもあったかもしれないですし、少しばかりネガティブな物言いもしてしまいましたが、せっかくご縁も頂いたいわき市ですので、未来につながる取り組みを応援していきたいと思っています。
再びいわき市にお邪魔する機会があるかもしれませんし、次回行くときには是非いわきニュータウン地区にもお邪魔してみたいと思います。


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