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PPP的関心【『地方創生のファクターX-寛容と幸福の地方論-』を読んで】

「地方創生」、地域活性化というテーマは、まさに自分の活動テーマです。

自分で仕事を始めるために設立した合同会社RRP。社名の由来はごく単純で、"Regional Revitalization Partner"からとったものです。地域密着型産業である建設業・不動産業を元気にして、新・建設業、次世代不動産業と行政・地域をPPP的取り組みで結び付け地域活性化に貢献する。そんな取り組みのパートナーになることを活動領域と考えて仕事をしています。また客員教授としてお世話になっている東洋大学大学院公民連携専攻ではPPPビジネスに関連する講義を担当しています。

その「地方創生」について、前々職(リクルート住宅総研)で一緒に仕事をした現・LIFULL HOME'S 総研の島原氏の企画による、斬新で興味深く、今後の地方創生に関わる方針検討や施策に影響を与えることになるであろう調査レポートが昨日2021年9月15日にリリースされました。すぐに全文を読ませていただくとともに、調査報告会(レポート発表会)にも参加しました。

地方創生に関わる基本方針の「あと一歩」感

全国各地での「地方創生」に関わる施策・方針検討の基調、指針となる情報の一つとして、内閣府地方創生推進事務局による「まち・ひと・しごと創生基本方針」が挙げられます(最新の情報はこちら )。基本方針が示す対処すべき課題は、(少子化による)人口減少や(各地からの人口流出による)都市圏への人口集中による地域の規模縮小によるや経済活動の停滞を食い止める。この根本課題に対して、第一期以降、何度か改訂を重ねてきた「まち・ひと・しごと創生基本方針」(最新の基本方針は閣議決定された「基本方針2021」)において継続して設定されてきた「目標」は、端的にいうと、地方に仕事、学びの場(魅力的な大学)を創ること、それにより地方への人流を作ること(最近では、一足飛びではなく関係人口と呼ぶ「接点」を持つこと)、とりわけ子育て世代の暮らしへの支援を行うことなどが挙げられてきました。

ただ、これらの目標はある意味「手段を目的化したような目標」とも言え、「なぜ」場所を変えるのかという「動機」は「良い仕事があるから」「魅力的な学び場があるから」というだけで形成されないのでは?といった、施策対象者の内面にまで踏み込んで設計されているとは言えず、私も以前から「あと一歩モヤモヤした何か…」が気になっていました。

「あと一歩」感を埋める、出る人・留まる人・入る人の動機と環境の「根本」に迫った調査。 『 地方創生のファクターX  -寛容と幸福の地方論- 』

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レポートの詳細(←何と!全編PDFで無料公開されている)は、レポート内の調査・分析はどれも大変面白いので、ぜひとも読んでいただければと思います。(かなりネタバレ的ですが)レポート大きな結論として

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を提示し、人口減少に歯止めをかけ、魅力的な人材の移動や定着を促すための重要な「因果関係を持つ背景的要素」として「寛容性」を示しています。加えて

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寛容性とWell-beingとの相関を捉え、レポートの「提言」として、島原氏は以下の4点を挙げています。

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この提言の反射先を考える。

例えば、「寛容性とWell-being(自己肯定)実感」を育むには、PPP取り組みが教育機会になるのではないか

ともすると、報酬やの良いやりがいのある仕事や魅力的な学びの場や機会があれば、地域から出て行ったりしない、入ってきたくなるんでしょ!ということで仕事作りや学び場作りが施策化され、その実行と進捗が目標となってきたとも言えるわけですが、この提言(途中の調査結果も含め)では、そうではなく、あの場所に帰りたい、行きたい、出たくない…という人間の行動に繋がる気持ち、動機が如何に形成されるか?への着目を抜きに、期待する結果は生まれないのではないか、と指摘しています。

今回のレポートを見聞きしながら、具体的に行政あるいはPPP的な取り組みとして官民が共創できる施策、機会って何だろうと考えていました。個人的に考えついたのは「教育」という言葉でした。教育といっても、ただ単純に何かを教える、伝えるという範囲にとどまるのではなく、例えば、地域で各々の背景や価値観の違う主体が手を組み、お互いの理解をしながらコトやモノを創り出す中で、寛容性とWell-being(自己肯定)を実感するといった行動自体を「教育機会」とするようなイメージです。などと考えると、実は地域課題の解決にPPP的な取り組みを普及、拡大させること自体が「寛容性とWell-being(自己肯定)の実感」を得る教育機会となるかもしれません。

締まりのないまとめとなってしまいましたが、「地方創生のファクターXは寛容性」であった、という調査結果と提言、引き続き教えている学生さんや自分の仕事の仲間との議論の肴にしてみたいと思います。

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