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PPP的関心2023#14【更新版PFSアクションプラン。行政サービスを「品質」視点で眺める機会】

2023.03.02に令和4年度第3回関係府省庁連絡会議が開かれ、令和7年度までの取組事項等を取りまとめた「成果連動型民間委託契約方式の推進に関するアクションプラン(令和5~7年度)」が決定されました。
今回はそのニュースをもとにPPP的関心を書いてみます。
*4月も半ばに差し掛かり早くも散り始めた桜を惜しみつつ。最近撮影した近所の桜の写真を(内容とは何の関係もないけどw)。

以前の記事でも紹介したPFSアクションプランの更新版

上記のリンクは1年半くらい前のPPP的関心で取り上げたアクションプランに関する記事です。令和2年度〜4年度のアクションプランでは実施手引き策定といった記載もあるように医療・健康・再犯防止という領域を絞り込むことで「まずはやってみよう(と考える)」対象を明確にし、計画年度終了時の実施団体数を100団体にするといったアウトプット(数量的)目標が掲げられていました。

令和2年度〜4年度アクションプランでは、期待成果の達成程度に連動させることで取り組んだ地域課題の改善や改良が見られることかつ合理的な費用と時間・労力の投下によって、地域課題解決に取り組む施策を「効果的で効率的な」支出で実現するという「従来的な行政の施策推進とは異なる」方法を推進が目指されたわけです。
ということで「成果設計を検討しやすい(と思われる)分野に絞り」「まずは取り組むことを促す」ことに主眼が置かれたものだったと考えられます。

更新版アクションプランの概要

PFSアクションプラン(令和5年度~7年度)の概要(2023.03.02閣議決定)

今回更新されたアクションプランで個人的に注目する点は
・以前絞っていた重点分野に加え、普及に向けた注力分野として就労支援・まちづくり・環境といった分野も言及された
・「先導的」という表現で「アウトカム指標(を明示した)」「複数年度(にまたがる)施策」を「公募で」「専門家の助言のもと」行う
といった点だと思います。

PFS採用の際に自治体の地域経営に求められる「力」を考える

先ほども注目として紹介した「先導的なPFS事業」の要件に示されているのが「アウトカム指標に連動した成果支払」です。
前回までの「件数」とか実施自治体「数」といった国全体としてのアウトプット(数量的)指標だけでなく、アウトカム(効果品質的)指標という考えを明記している点は言葉のちょっとした違いに見える以上に「相当大きな」違いだと思います。

「アウトカム指標」を設定するという言及は、PFS施策を導入する自治体の地域経営の「力量」が問われることになるはずです。
少し分解してみると
・「現場」への高い関心(暮らしの中から問題の発掘・抽出)
・「問題」から「課題」の設定へ(背景にある因果の的確な分析)
・「課題」の選択と集中の決意(優先順位付け)
・「解決」策の具体化(ゴール設定と効果的・効率的なアプローチ策)
さらに
・適切かつ明快なビジョンの発信(「なぜ」その課題を選択・設定したか、そして地域の将来をどうしたいか)
といった一連の「コーディネイト力」が問われるのではないかと考えます。

改めて。アウトプットとアウトカム

先日も書いたばかりですが、30年前から言われている「アウトカム目標」について再び触れておきます。

前回書いた内容を絞り込んで①から③の指摘を一言で言い換えるとすると、という視点で整理すると

①プロセスの測定と成果の測定の間には大きな相違がある
アウトプットはアウトカムを保証するものではない。
能率の測定と効果の測定の間には大きな相違がある
能率とは単位あたりのアウトプットがどれくらいのコストかを測定することである。効果とはアウトプットの優劣を測定するものである。
③「計画のアウトカム」と「政策のアウトカム」との間には重大な相違がある
住民がもっとも関心を抱いているのは、このアウトカムなのである。

特に大事なことは③の「住民が関心を抱いているのは(自治体が何をどれだけ行なったかといった数量的なものではなく)アウトカム(自分の暮らしの周辺にどんな変化が起きたかといった品質的なもの)である、という指摘を十分に自覚しておくことだと思います。

行政サービスを「品質」という視点で眺める機会

地方自治法
第一編 総則
第一条
 この法律は、地方自治の本旨に基いて、地方公共団体の区分並びに地方公共団体の組織及び運営に関する事項の大綱を定め、併せて国と地方公共団体との間の基本的関係を確立することにより、地方公共団体における民主的にして能率的な行政の確保を図るとともに、地方公共団体の健全な発達を保障することを目的とする。

地方自治法の総則(法律の冒頭にある法全体、各編・章等の全体に通用する事項を表すもの)に「民主的にして能率的な」という記述があります。
(個人的な感覚として自治体の取り組みに関する議論では)能率的(仕事が無駄なく捗る)ということについては高い関心が払われる一方で、民主的であること(顧客・関係者を巻き込み、顧客・関係はとともに事をなす)にはさほどの関心が払われている印象を持っていません。

PPP的関心の連載を始めた原点でもある公民連携(官民連携)の考え方は、総則が指摘する「民主的」な行政手法の実践的な意味を体現するものだとも私は思っているのですが、たまに「大きな勘違い」をしたままの自治体では公民連携(官民連携)を「自治体の足らず(お金、マンパワー)」を民間に「補わせる」位にしか考えていない様子を見聞することがあります。

少々話がそれましたが(笑)、PFSを用いた行政手段検討は行政サービスを「品質」という視点を持ってことにあたる機会となると思います。
アウトプット(施策として決めたことを何回やったか)ではなくアウトカム(その時々に必要とされている・欲しいとされている事柄を実現したか)を指標とするPFSでは、市民の期待を的確に理解した上で期待に応える必要があるということになります。

性能と品質という対比がありますが、更新版PFSアクションプランで示されたアウトカム指標は、(行政サービスを届ける)機関として決めた事を一定期間に何回できるかといった能力発揮の程度(≒性能)だけに気を取られるのではなく、行政サービスの届け先(市民)の期待をどの程度上回れるか(≒品質)の議論そのものだと思います。

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