見出し画像

PPP的関心【一歩先ゆく「公マネ」行政マンとのディスカッション】

先週、「木造施設協議会」主催の公民連携リレーセミナーで、一歩先をゆく公共施設マネジメントの実践者である行政マンの取り組みを伺うとともに、その話題を深めるトークセッションのファシリテーション役をさせてもらいました。今回の記事はその時の話を自分用のメモとして書いてみます。

登壇者のお二人の紹介。

一人目。川口さん(岡山県津山市)

一人目は、津山市役所の川口さんです。
シーズンには相応に稼ぐけどもそれ以上に大きな経費がかかる公営プールをどうするか、また、地方創生関連の方針が決定していながら諸般の事情から止まりかけた街中の重伝建地区の古民家活用をどう進めるか、といった話題について、その突破としてさまざまあるPPP的な手法からコンセッションを選択した取り組み事例をお話しいただきました。
取り組みの詳細については以下のリンクを参照ください。

川口さんのお話の中で、
実は公共施設は「使われていない(お話の中では学校施設を除けばせいぜい数%程度の稼働(時間、面積、利用者人口割合などの観点から)で、複合化などで総面積を減らしても期待できる効果は薄いとか、廃止を決定する公共施設にはすでにお金かかっていないから財政支出削減効果は小さいといったことを踏まえれば、単なる面積削減主義や投下費用圧縮によるマネジメントだけでなく既存ストックが生み出す収益に着目する公共施設FM+P P P が重要だとお話しされていました。

川口さんのお話で印象に残ったことはお金の流れを意識していることです。
例えば街中の古民家活用事業(宿泊施設)では、当初想定では役所から民間にお金が出てゆく(指定管理料)という流れを、運営を全て任せたうえで事業成果から納税をしていただくという、マイナスを0にしてさらにプラスを獲得すると言うお金の流れ、あるいは、(上記の例には示していませんが)学校施設のエアコン施設投資を断熱改修による省エネ化(低稼働で同じ効果が期待できる)や仮にエアコン投資をするにしてもより少額(小型)で良いことを実証して支出を抑える、といったように施策と施策の効果によるお金の流れを常に意識している点が注目ポイントです。

そんなことは民間事業者の経営感覚であれば当然だと言われそうですが、
・(主な収入である)税収拡大はルールに基づく民間活動の結果によるものであって工夫によって増やす(増やせる)という経験が少ない
・支出において、使い道の工夫でより小さな投資で期待成果を上回るよりは計画通り(=予算額通りに)消費するにものという経験が多い
そのような行政の経営感覚(お金の流れの認識経験)と比較して、川口さんの視点は注目すべきだと思いました。

二人目は杉山さん(東京都東村山市)

二人目は東村山市役所の杉山さんです。彼は東洋大学PPPスクールのOBでもあります。
彼の話で注目した点は、行政と民間(市民)の関係は主従関係ではなく同じ課題に同じ方向で向き合うパートナーである、という価値観が考え方の軸として貫かれている点です。
行政の財政制約による職員数、特に専門技術職員確保の難しさと言う自治体の都合で問題が起こること(当日の話題では、以前に発生した市民プールでの痛ましい事故のことを例に出していましたが)があってはならないと言う主張をされていました。

杉山さんの話題の中で印象に残ったのは、
・行政における人材制約は一朝一夕に解決しない一方で、まちなかで起こっている大小様々な問題の解決に使うことができる「技術」の進化は指数関数的な進化を遂げている。
・進化した技術を自治体の問題解決に使い成果(利益)を得ようとするには投資がいるが、従来的な育成や採用ペースでは専門的な知見が(行政に)不足し、進化を遂げる技術への投資判断をする機能が十分に発揮できない。
こうした危機感をクリアするには民間の力を借りるべきであり、故に先ほどの「主従関係ではなく同じ課題に同じ方向で向き合う」パートナーとしての官民間の約束が必要だと言う考え方でした。

杉山さんも関わったPPP的取り組みは、以下のリンクです(以前、私の記事でも扱いました)。
川口さんの例ではコンセッション方式によるPPP(PFI)的な取り組みでしたが、杉山さんの例では「包括管理協定」と言う取り組み方が特徴です。

コンセッション、包括管理。
PPP的取り組みの「選択肢」と「最適利用」

公的サービスの「提供"主体"」は誰なのか?に着目して、主体の連携を示す官民連携という言葉に対して、公民連携という言葉は、官と民という主体が連携して提供するサービスの「目的」に着目した考え方を示すものです。
つまり、公的サービスの質的向上や持続可能性の向上などのために官民間の連携による取り組みであることが公民連携の前提あるわけですが、目的的であるためにPPP的な取り組みには方法の選択肢が多様にあります。

「包括管理委託(*複数業務を含む私法に基づく官民間の業務委託契約)」や「指定管理(*地方自治法に基づいて自治体事務を民間に行わせる)」、
「PFI(*PFI法に基づく施設整備と運営事業)」、「Park PFI(*都市公園法による公募設置管理制度)」など、所管する法律も方法も異なりますが、地域にとって必要な政策目的を実現する、すなわち目的的であることは共通です。

まさに、たまたま今回お話を伺った二人が採用した手法は異なっていましたが公的サービス向上(品質、持続可能性、生産性など)という目的においては同じだと言えます。
これは見方を変えると、民間活用によって公的サービス品質向上を目指す上で、地域ごとに問題の背景にある課題や連携できるプレイヤーの得意分野や技術が異なりことを踏まえ、問題の解決手法(PPP的取り組みにおける方法の選択)も異なるということが伺えます。

追加。川口さんのコメント「要項を自分で作る」の意味

冒頭に紹介したコンセッション方式を採用した際、当時の川口さんはPPPやPFIなどに詳しい行政マンとは言えなかったと告白しています。
ただし、いざ取り組もうとなった以降は、自分のお金と自分の時間を自分に投資してPPPのことを学ぶスクールに参加したり、徹底して選考事例の研究をしたそうです。
その上で、事業の公募要項は先行事例を単純にコピペにせず、地域の問題やその背景を思い浮かべ何を解決したいか、その際にどんな力を民間サイドに期待しているかを思い浮かべながら書いたのだそうです。
つまり、実際に目の前に怒っている問題を解決するための「方法の選択肢」を最適化するために自分の頭で考え自分の言葉にしたということです。

爺さんの小言みたいになって恐縮ですが、このことはこの後に公民連携事業に取り組みたいと考える行政マンにとって、とても重要な分かれ道になる気がしています。
方法の選択肢は様々なところに提供され、それを活用した事例も整理されはじめています。そういった情報を手に入れれば「やること(何をやるか)」はコピーできます。
しかし、なぜやるのかという「志」、自分がやるという「責任感」、地域の問題は自分の問題という「自分ごとの問題意識」まではコピーできません。

ということで。今回は自分用のメモということで少し散乱していましたが、ここまでにしたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?