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トッポンチーノに包まれたい
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トッポンチーノに包まれたい

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私は妊婦なのだか、恥ずかしながら腹の中の子供に対して邪悪な気持ちになることがある。計画的な姙娠にもかかわらずである。出産後、育てる頃にはどんな悪意を自分が抱きやしないかと不安になる。

現状、どんな時に胎児に悪意を抱くかというと創作活動そのものもしくは前後に体調不良になったときである。私は安定期の妊婦であるが、安定期というからには体調・精神が安定(今はコロナだから聞かないけれど、安定期に海外旅行に行ったり、できちゃった結婚の場合はこの時期に結婚式をしたりする妊婦が多いらしい)するのかと思いきや案外そうでもないらしい。

どんなふうになるかというと、腹がぎゅーっとしめつけられ痛くなると石のように固くなる。多分これがよく聞く「お腹が張る」という現象に違いない。「冷えがよくない」と色々な人生の先輩方がおっしゃっていたがようやく理解できた。先日、待ち合わせをしていてほんの10分早くついてしまって立って待っていたら、足先から冷たさが襲ってきて「これはまさか冷えか?」と思っているうちに、腹ががんがん痛くなりその場に座り込んでしまった。冷え、恐るべし。

頭痛や腹痛が起きても妊婦は気軽に薬は飲めない。飲んでもいい鎮痛剤(カロナール)は私にはあまり効かないようで、ただ、じっとして痛みや張りが去るのを待つだけだ。出産の時、それはそれは痛いと聞いているがそうか、日常も若干、痛みを伴うのかと妙に冷静になったりする。

私は母性なんてひとかけらもないようで、アトリエで絵を描いているときや、今からアトリエに行って絵でも描こうという時に体調不良になると腹の中に生物に対し、憤りを感じしてしまうことがある。

家事の最中に体調不良になっても、なぜかわからないが全くイライラしないで「仕方ない、少し休もう」となる。いくらふにゃふにゃした絵や下書きであっても、自分なりに真剣に創作活動をしている。それを邪魔されるのがどうしても許せないのだ。「腹に何かいるんだから仕方がないじゃないか」と自分に言い聞かせても苛立つし、そんな自分に自己嫌悪。

「子どもができて部屋が雑然とするのが怖い」「空間に余白がないと精神的に落ち着かない」とも思う。まだまだ自分本位。

この感情はマタニティブルーとかそういうものなのだろうか?「子どもを恨んでしまわないか」という不安はもっとどす黒い気がして夫にはもちろん、他人にも基本的には隠すよう心がけていた。

気をつけていたのに、電話口の友人相手についぽろりとそんな思いをこぼしてしまった。その人は母親として頑張っている子で、自分の弱さが恥ずかしかった。口にしてすぐにマズイと焦った。あわてた。明らかに不自然な流れでくだらない話をし、話題をそらそうとした。

「あははは!大丈夫だよ!私も全然、子どものこと好きじゃなかったから隠さなくて大丈夫だよ〜あはははは!」

「無事に赤ちゃんが生まれたらのプレゼントを考えていて。先輩ママ的スマッシュヒットな子育てアイテムにしようと思ってたけど、それはそれはこだわり強そうだしあまり物を増やしたくなさそうだから、ギフト券にしようか、でもそれじゃあ先輩ママ的に悔しくって。だから、モノよりコト消費的な意味で、フォトアルバムチケットをプレゼントしようと思ってたけど・・・やめておく!育児しながらでも『一番好きなこと』ができるプレゼントにするね。小さいくせにやたら高いスケッチブックあるじゃん、あれとか。でも、最初の方は育児大変だから、寝っ転がりながら描くくらいしかできないからね」

「恨まないで済むのがいいね。恨むのは辛いものね。」電話を切った後、うっかり泣いてしまった。

とある依存症患者と長年関わってきていて(それは家族なんだけれど)私は結婚して家を離れるまで人を恨むことが当たり前だった。ちかしい人物に恨み慣れていたからか、子どもに対してその感情を抱きかねないのが怖かったのかもです。そのあたりもまるっとお見通しだったみたい。

恨むともう、それだけに感情が支配されてしまうんですよね。やたら子どもへネガティブな感情を抱いていたのは、子どもへではなく「そうなりかねない自分」へだったのかもしれないね。

だから気軽に使える画材は一番嬉しいな。産後っていうか今だって嬉しいくらいだ。誰かのせいにして恨んで、結局何もできない(「しない」ともいう)自分が一番嫌だから、「できる限りのできること」を増やしたいなあ。

写真(っていうよりも「家族の思い出」やら「メモリアル」みたいなもの?)って得意ではないからフォトアルバムはノーセンキューなんだけど、先輩ママ的スマッシュヒットアイテム「トッポンチーノ」っていう謎のアイテムは興味はちょっと深いかも。おかあさんの匂いをつけたクッションみたいなやつで、赤ちゃんをふんわり包むものらしいよ。赤ちゃんはお母さんのにおいに安心と無償の愛を感じるそうでトッポンチーノごと抱っこすれば「夫に抱っこさせたら泣き出してしまった」が減り、抱っこしていて眠ってしまった赤ちゃんをトッポンチーノごと布団に移動させれば「そのままスヤスヤ」率が高いらしい。

赤ちゃんによって合う合わないとかありそうだけど、安心と無償の愛というトッポンチーノ的概念はいいなあと思う。孕んでおいて、与える側が言うのもなんだけど、私もそういう、絶対安心できるものに包まれたい。心から。

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現代美術家。ペインティングやインスタレーションなど。http://yabesoy.jp/