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矢部明洋のお蔵出し日記編 1999年5月

▼5月某日・ぜい肉がプルプル

  今月から山口市内の川の側で暮らしている。川沿いにジョギングに最適の自転車道がある。丸々1年ぶりくらいで朝、走った。30分程度だから5kmくらいか。2カ月前にぎっくり腰をやったうえ、引越し作業や子守りでぶり返し気味(子育てや介護は腰痛持ちには出来ませんゼ)。おっかなびっくり走ってみたのだが無事だった。それより、休んでる間についた腹や太ももの肉がプルプル振動し、むずがゆかった。時間を置いてランニングを再開する時の、この不快感はいやなもんだ。
 

▼5月某日・ボケてきた

  前日のジョギングで少々、腰がツッパリ気味。しかし続けないと習慣づけられないと考え、また朝、走る。前日の約半分の距離で腹に異常を感じる。そのまま腹のグルグルいう音をなだめながら家へ帰り、トイレに直行した。トイレから出ると愚妻が「寝てるときからお腹がピーピーゆってたから大丈夫かなと思ってたんやけど」と言う。「知ってたら教えんかい!」と怒気をにじませ言い返すと、「自分の腹のことやのに、なんで気づかへんのんじゃ!」とやりこめられ、黙った。ボケてきたのかもしれない。 

▼5月某日・プロレスファンは成熟した

  毎週のことだが、『週刊プロレス』を買った。FMWの冬木のインタビューが出色の面白さ。プロレスをウォッチングする楽しみの一つに「プロレスとは何か」を考えることがある。五輪競技をスポーツというなら、プロレスは一線を画するだろうし、ショーと言ってしまうと何かが欠落する。プロレスはプロレスとしかカテゴライズのしようがない、独立したジャンルなのだが、猪木はキング・オブ・スポーツと言い、ライガーは芸術に例え、他ジャンルに接近を図りファンを迷わせてきた。しかし、冬木は「エンターテインメント」と言いきり、その難しさを明快に、赤裸々に語っている。最近のプロレス記事の中では『紙のプロレス』のSWS関係者への連続インタビューと並び、面白かった。
 しかし、こんな記事がプロレス雑誌に載るのだから時代も変わったものだ。「プロレスなんて八百長だ」と鬼の首をとったみたいに言い募るのは40~50代の世代くらいだろう。今の若いファンは良くも悪くも興奮できればいい人たちで、他の何かと比較してプロレスを考えたりしない。一つの成熟だと思いたい。 

▼5月某日・自転車に転向か

  1日休んで、朝走る。時々立ち止まり腰をほぐしながらのジョギングだ。途中で腰痛体操をやると、その後、楽に走れた。次からは最初に腰痛体操をやることにしよう。  帰りつくと会社(因みに私の職業は新聞記者)から電話があったという。「A新聞の一面に何か記事が出てるねんて」と愚妻。A紙を見ると介護保険がどうたらこうたら書いてある。いわゆる「抜かれた」というやつである。  折悪く、この日は愚妻が失業保険をもらうため職安に行くという。生後8ヵ月の愚息を私が見てなければならない。予想外の仕事ができたのでキャンセルを申し出ると、「何でー」と口をとがらせる愚妻。まったく夫への理解のない奴だ。  夕方くらいから腰がつっぱり始める。やはりランニングは無理なのか。自転車に転向するか。幸か不幸か、愚妻の自転車道楽のせいで我が家にはロードレーサーやらマウンテンバイクやらが3台もある。明日考えよう。 

 

▼5月某日・自転車に転向す

  朝、走るのを自転車(マウンテンバイク)に変える。川べりの芝生で腰痛体操をしてから、秋吉台まで続いているというサイクリングロードを約8キロ走って引き返した。往復16キロ。川沿いにアオサギら野鳥も多く、道端でマガモが昼寝ならぬ朝寝をしているのがのどかで快適だった。何より腰への負担が少なくて安心だ。帰宅すると、図に乗った愚妻が「7月にマウンテンバイクの耐久レースがあるから一緒に出えへん」と言い出す。このまま自転車フリークの深みにはまってしまうのか。
 休暇だったので、午後から山口インター近くの古本屋を回り、藤原審爾の『昭和水滸伝』上中下3巻(角川文庫)セット660円也を買う。ぼろい本の割りに高かったが一般書店では中々見つけられないので買った。
 帰宅後、ハヤカワ文庫『警察署長』下巻を読了する。達者な脚本を読んでるような技巧とテンポの良さで面白かった。 

▼5月某日

  自転車転向2日目。川から気分を変え、県庁を越えて一の坂川ダムまで走った。登り約20分。適度な有酸素運動というにピッタリの勾配と距離。何より山が間近に迫ってくる風景が、気持ちがいい。山口市街から見える背の低い山々は京都の北山を思い出させてくれる(因みに私は京都育ちの元ワンダーフォーゲル部員)。これを朝の定番コースとすることに決める。
 腰の調子が良くなって、早くこのコースを走りたいものだ。 

▼5月某日・マンネリ雑誌

  3日とあけずに早起きして一の坂ダムまで自転車をこいでるせいか腰は快調だ。ダムのベンチで腰痛体操を必ずやるようにしているせいもあるだろう。
 運動への意欲が枯れないようにと、およそ2~3年ぶりにジョギング雑誌『ランナーズ』を買った。特集は「朝走ればやせる」。以前にも見たような題材だが、メーカーの新シューズの広告を眺めるのも刺激になるので買った。
 とはいえ、この手の雑誌は1年間購読すれば一生使いまわしがきくと思えるほど毎号毎号似たような特集が続く。例えば、夏の練習法とか、秋になれば大会直前調整法とか。“12カ月そろえれば、もう買わなくていい月刊誌”は他にもある。

その一 『メンズクラブ』(まだあるのかな)《たかくら注、まだあります》
 トラッド志向なので良くも悪くも流行にあまり左右されない。 その二 『山と渓谷』
 そもそも山自体に変化が無い。取り上げる山域にしても長野県・北アルプスがダントツ人気なので年がら年中、槍だ穂高だ雲の平だ表銀座だとやってる(んじゃないのかな)。
 

▼5月某日・M日解散!?

  本日は某記者クラブの送別会。夕刻から山口市内の某レストランでビールとワインと伊料理で宴会となる。隣席したK同通信記者は4月転勤してきたが前任地は大阪。昨年、我がM日新聞が倒産との噂が業界をまことしやかに駆け巡った折、大阪に本店を構える我が社のメーンバンク幹部へ裏取りに走ったとのこと。「よく調べるとM日さんはかなり優良資産をもってるのが分かりました。これじゃつぶれませんよ」と太鼓判を押していただく。情けないやら安心するやら。しかし我が社内では、同業他社の給与水準になかなか追いつけないせいで、「資産を全部処分し、社員で山分けして解散しよう」というグッドアイデアがささやかれているのであった。いや、これホント。 

▼5月某日・ナンパな乳児

  本日は休暇で、市内の一の坂川に愚妻、愚息と歩いてホタル見物に出かける。「ホタルより人の方が多い」と山口の人は言うが、どうしてどうして、東京や京都、福岡の混雑に比べれば可愛いものである。
 生後8カ月の愚息はネット上では「みえぞう」の通り名でおなじみだが、ホタルより眠気で散歩を始めるとすぐ眠ってしまった。
 生まれて間も無いころは、難産のせいもあって、はかなげで可愛く思えたものだが、今や立派なデブに成長してしまった。起きてると見られる顔も、寝てしまうと顔の筋肉が一挙にゆるみ、ホッペの肉がひしゃげ、つぶれた饅頭みたい。まるでたれパンダである。寝顔が猫のヒデヨシに似ていると言えば分かっていただけようか。
 ところが、このデブちん、やはり男なのか、若い娘に目がない。帰り道で目が覚めたのだが、愚妻が「夜店で何か買う」と駄々をこねるのでガードレールに腰掛け待っていると、隣に同じように腰掛けていたアベックのお姉ちゃんに、猫なで声風に甘えるように「あー?」と声をかけるのである。こっちを向いてもらえると、しばらく見つめ、次に、はにかんだように視線をそらす。それからまた甘えた声をかける、という手順を踏んで若い娘を篭絡するのである。一体、誰に似たんだ! みえぞう!!
 お歳を召した方にはこんな素振りを決して見せないことは言うまでもない。 

▼5月某日・朝夕の寒さが腰にこたえる

  山口は昼と夜の寒暖差が激しい。
 最近、昼間は真夏のようにじりじりするのに、朝夕は寒いほどだ。おかげで腰の具合が悪い。やはり水泳リハビリに再度、転向するかなー。

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