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その時タカクラは

 昨日、「矢部明洋のお蔵出し」を更新したのだが、日付をよく見ると長男の出産1ヶ月前くらいの日だ。

 このお蔵出しを掲載していたのは、1998年に私が開設した「たかくら&みえぞう製作所日誌」という個人ホームページというやつである。数年前に長らく契約していたインターネット接続会社を変えたときに閉鎖してしまったのだが、私が出産休暇(休暇じゃねえ!)を自主的にとるために退職して、暇を持て余していた(暇もてあましてるじゃねえか!)時期に、山川健一『マッキントッシュ・ハイ』(幻冬舎)を読んで、「テキストファイルに文字(タグ)を打ち込んだらホームページ作れるんだ!」と感動して、エディタ(ワープロソフトのようなものと思ってください)で、コツコツとタグを一個ずつ書いて作り上げたのだった。

 主なコンテンツは、天神の書店地図とおすすめパン屋さんリスト、自転車会議時代に書いていた自転車山登りの記録、書店紹介(2軒で終了、福岡にきたばかりのヴィレッジ・ヴァンガードとブックス・キューブリック)、長男みえぞうの妊娠日記(まだ産まれてなかった)、などである。
 1人で作ってるにしては盛りだくさん。臨月近い妊婦が。タグ打って。

 その当時、結構出版されていた、おもしろホームページ1000みたいなムック本(『WWWイエローページvol.8』エーアイ出版)に掲載されたこともあるのだ(えっへん。写真は、その掲載部分)、という自慢は置いといて、上の写真のトップページのデザインは、だいぶ穏やかな感じになっているが、開設した最初は、テキストサイトにありがちな黒バックに白抜き文字、ロゴは、3Dロゴ作成無料ソフトで作った金色の立体文字。覚えたタグは全部使いたいから、左から流れてくる文字とか、点滅させたりとかを駆使して、自転車会議仲間から頂戴した褒め言葉は「トラック野郎みたい」。臨月妊婦が作ったトラック野郎みたいなトップページのホームページ、読みたいですか?

 で、当時の日記を再掲載いたします。


とうとう臨月だ。  京都へ帰省してきた 1998.07.27

  8月の2日をもって臨月へ突入するところのタカクラである。この暑苦しい体型で、京都へ帰省し、なおかつ福井県まで一泊の海水浴へ行くという強行スケジュールではあったが、たかくらと同様に「臨月だからやめとけば」とかの配慮は全く無い実家の者どもでワタクシは嬉しい。兄の奥さんは8カ月で弟の2人目の子は4カ月の乳児で、同居人の弟さんの2人目は帰省中の最終日に産まれたしで、タカクラの周辺は子ラッシュである。
 17日の午後に新幹線「のぞみ」で京都へ向かい、まずは同居人の実家へ。同居人の家は京都市内の下町である。産まれたときからそこにいるとの事で、ご近所さんが親戚のようなものである。タカクラのような流浪民には、年末に帰った時にでくわした、末の弟さんが(小さな頃によく預かって貰っていたらしい)向かいのおばちゃんにお年玉をあげにいくというような光景が随分と珍しく懐かしいのだった。
 タカクラは妊婦にあぐらをかいて何もせずにでんと座ったままだ。あれこれ気遣って貰って申し訳ない気分だけれど、このごろではちょっと動くと動悸がするという情けない状態なので甘えておく。通常はふつうの人の脈拍より若干少な目のスポーツ心臓タイプなので、よけいにみじめだ。横になって本を読んでいて、ちょっとお茶を飲みに台所まで行って戻っただけで、心臓がばくばくしてしまう時があり「きー」となる。強靭な心臓を返せ!みえぞう。と胎児に愚痴っても仕方ないが、残りの一ヶ月が早く過ぎ去ってくれる事を祈るばかりだ。
 9カ月に入ってから急速に腹が出てきて重心のとりかたが難しい。
福岡市総合図書館の新刊コーナーは、入り口付近の目立つところにあるが、棚が足下にありその上に表紙を見せるディスプレイがのっかっている。棚を見るためにはしゃがむ必要があって、これが妊婦には辛いことが判明。たかくらは関節が固くて、いわゆるヤンキー座りが出来ない、ムリにやると踵が浮いてしまうので非常に不安定だ。その上にいつもよりお腹がでっぱった状態なので、自分ではまっすぐにしゃがんでいるつもりでも幾分重心が後ろに傾いてしまう。それで本を眺めていたわけだが、何かのひょうしにバランスが狂いしゃがんだ姿勢のまま後ろにふらついてしまったのだった。みえぞう分の腹さえなければ、棚をつかむか手を地面につくかして危険回避はできたのだろうが、伸ばした手はみえぞう分の空間が邪魔して棚に届かず、タカクラは見事に後ろ向きにころりんと転がったのであったよ。嗚呼。 7月の27日ごろに、図書館の入り口付近で、マット運動の後ろまわりを失敗した子供のように転がっていたのは、わたくしです。はい。

webサイト「たかくら&みえぞう製作所日誌」より

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