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「脱成長コミュニズム」ってなに?②

前回につづいて、「脱成長コミュニズム」を考えていきます。

『人新世の「資本論」』の著者が筆者が挙げる『脱成長コミュニズム』の実践に向かう5本柱はこちら。
・使用価値経済への転換
・労働時間の短縮
・画一的な分業の廃止
・生産過程の民主化
・エッセンシャルワークの重視

分かりやすいところから考えていきましょう。ちなみに、私なりの解釈、理解なので、専門的には間違っているかもしれないのでご注意下さいませ。

・「使用価値経済への転換」と「エッセンシャルワークの重視」

10万円するブランドもののカバンと、同じ材質、同じサイズ、同じ機能のカバンが1万円で販売出来るとしたら、使用価値は1万円で残りの9万円はブランドの価値と言えます。
「使用価値経済への転換」というのは、この9万円分のブランドの価値を否定し、1万円分の使用価値を重視する経済を目指そうということでしょう。

また、「エッセンシャルワークの重視」というのも同様で、人々の生活に真に必要な仕事(例えば教育とか医療とか生産現場とか芸術とか、ですかね)を重視しようというものです。

モノに注目すると「使用価値経済への転換」という言葉になり、サービスに注目すると「エッセンシャルワークの重視」という言葉になると理解しました。

ここから見える「脱成長コミュニズム」の世界観は、本来的な価値をもたない付加価値を否定し、本来的な価値にもっともっと価値を見出そうということかと思います。

こういう価値観の世界になると、まず世の中で販売される商品は無駄な機能がなくなり、質素なデザインになるでしょう。(私は無印良品のような商品をイメージしました。)しかし、無駄なものにコストをかけていないので、品質に見合った価格がつくことになり、今販売されている価格よりは安くなるんじゃないでしょうか。

また、ブランドマーケティングなど付加価値を生み出すことに費やされていたコストが削減され、本来価値を生産するところによりコストがかけられるようになり、エッセンシャルワーク(モノとかサービスとかを生み出す仕事)に携わる方のお給料が増えるということになろうかと思います。

【参考】東洋経済の記事(2018年)によると、64業界別40歳年収ランキングでは1位コンサル、64位介護だそうです。これじゃ、介護に人材が集まるわけないですよね。。。

私もそうですが、現在、企業はどうやって付加価値をつけるかを常に考えていると思います。本来価値だけだと差がつかないんですよね。付加価値の方が差がつけやすいです。だから皆、付加価値をつけてここで競争しようと考えるわけです。

しかし、そもそもなぜ競争して他社よりもたくさん売らなければならないのでしょうか?それは会社として利益を生まなければならないから。利益を伸ばすことで、投資家(株主)に魅力的な姿を見せなければならないから。それが資本主義だから。

会社が成長を求めなければ、最低限、従業員が”豊かに”暮らすだけの給与を払い、会社が存続できる程度の利益を稼げばいいということになります。すべての会社がその価値観で活動すれば、変な付加価値を追い求めることをしなくなるかもしれませんね。

ただし、会社が成長を求めないということは、株主(資本家)が成長を求めない(=利益を求めない)ということなので、これは資本主義の大原則に反します。よって、「脱成長」の世界は資本主義の世界ではありえないということになりますね。

資本主義ネイティブの私にとって、そんな世界がバラ色とはまだ感じられないのですが、もう少し考えていきたいと思います。

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