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[日記]2021年2月15日(月)

 昨日の延長の心地が本日まで垂れ込み、気怠さで身体の質量を感じるが、仕事のために起き出してシャワーを浴びて目を覚まさせる。打ち合わせをふたつ済ませると、時刻は夕方に向けて傾き出す。

 十五時までは午後、十六時からは夕方と考えると、十五時から十六時の間は何処に属するのであろうか。時刻がゆらゆらと揺れる頃に共鳴し、自分の意識も時のない空間を漂うようである。白昼夢とはこの時間に目の前を過ぎる夢ではなかろうか。

 在宅勤務を終え疲弊した身体をベッドに横たえながら、手に取った本を乱読する。床に積んである本は大方の並びは把握しているが、手当たり次第に手に携えて眠気を感じるまで読もうと試みる。『小説』(増田みず子著 田畑書店)は難しい言葉は使用されていないものの、一篇一篇が誠実に書かれているからであろう、著者の感情が濾過されることなく、時には濁流のように届く思いで読む。認知症となった両親との関係を淡々と書く様、淡々と見えるように書いているだけかもしれないが、伝わる言葉の裏側の言葉にできない葛藤が切実さを持って伝わってくるようである。この切実さは簡単には表現しえない、葛藤を発酵させたような情念を持たないと書き得ない凄みがこの本にはある。このまま読み進めるには勿体ないと思う。覚悟して読むだけの気概を持たないと思わず吸い込まれそうである。

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