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[日記]2020年8月28日(金)

 そういえば、今日はプレミアムフライデーであったことを思い出す。ほんの一瞬だけ、人々の口の端に上り、もはやメディアも話題にすることはなくなった。世間では消え去った概念だけが僕の身体の中に残っている。

 消え去ることと、残ることは等価で重要なことであるかもしれないと考えている。日々胸に浮かんでは消え去るもの。残るものは残り続けるから大切にすることができる。しかし、通り過ぎて行ったものでも何かしらの痕跡が残っていて、例えばそれを轍と呼ぶように、なにがしかの言葉を持って名付け得ることができる。それらを僕は思い出と名付けたり、記憶と名付けたりする。それらが思い出や記憶という形として残らなくても、皮膚や血を形成している分子はようなものは存在しており、結局はそれらがないと自分が自分でなかったということも考えられる。

 プレミアムフライデー自体が、その分子のようなものにあたる訳ではない。しかし、プレミアムフライデー的な、という形容詞が許されるのであれば、プレミアムフライデー的ななにがしかが、記憶の彼方に集積していることもまた事実であるのだ。その集積すらも消え去ってしまうことが最も恐れるべきことであり、名付けられなくなった時に本当に消失してしまうものでもある。

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