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第8回製本教室「ブックリメイク」2020.01.26_レポート[後半]

いよいよ後半。

5.表紙作成


私が表紙に選んだのは和紙
この用紙もそのままだととても薄くて扱いにくいので、「2.見返し作成」で行う過程と同じように裏打ちを行う。
A4のコピー用紙に、シワにならないように注意しながら和紙を貼り付ける。
ここではスティックのりを使って慎重に貼り付ける。スティックのりは乾燥するとゴムのように柔らかくなるので、パリパリになってしまう糊よりも使いやすいのだ。

次に本文よりも少し大きめの幅で、厚紙を2枚切り出す。
この2枚が表紙、裏表紙となる。この2枚の寸法が互い違いになっていたり、平行でなかったりすると、本として格好悪い仕上がりとなってしまう。

正確なサイズを測り慎重に厚紙を切り出す。
サイズが心配だったら、先生にチェックしてもらった上で切り抜く。このあたり、とても教室っぽい雰囲気。

さらに背表紙部分の厚紙も切り出す。細長いので怪我には十分注意が必要だ。

この工程で一工夫。
表紙や背表紙でタイトルや著者名を貼り付けたい部分の厚紙をくり抜いておくと、表紙の用紙と接着した時にくぼみができ、より手の込んだ仕上がりとなる。
私もKさんも挑戦してみる。

厚紙も用紙を重ね合わせ貼り付けて制作されているので、案外容易にくり抜くことができた。くり抜きすぎたか!?と思うくらいの感覚がちょうど良いかもしれない。

厚紙を切り出した後は、厚紙と表紙を貼り付ける。
ここでも位置は正確に。この過程でようやくイメージする“本”の形になってきた!

実はこの時点で開始から4時間ほど経過。
しかし、ここまで夢中になり過ぎたせいか、本当にあっという間だ。

そして最後に、表紙に金のパッチワークを施す。
ここが最大の踏ん張りどころ。
裏打ちした表紙の和紙をパッチワークの型通りに剥がしていく。剥がした部分にパッチワークを嵌め込み、糊付けすればOK。
和紙を剥がした箇所にパッチワークの用紙を貼れば、用紙同士の段差がなくなりとても滑らかな仕上がりとなる。

——和紙和紙和紙パッチワーク和紙和紙和紙——
—————————コピー用紙————————

※図解するとこんな感じ。和紙とパッチワークとの境目をできるだけ滑らかにしたい。

和紙を剥がす際に、裏打ちしたコピー用紙は切らずに和紙のみにカッターを入れるのが難しい…。
この時ばかりはひたすら黙々と作業。

そして15分くらい作業しただろうか、こんな状態に。

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まずまず剥がれてくれたかなという印象。
この剥がした箇所に金のパッチワークをのり付け。さて、上手くいくのか緊張の一瞬。



うん、とても良い笑。
完全なる自画自賛だが、想像以上に良くできたので嬉しくなってしまった。心配だった用紙と用紙の境目の段差も割と滑らかに。
後は上下を間違えずに、表紙と本文を接着するのみ!

6.表紙と本文を接着

いよいよ最後の工程。表紙と本文を接着する。
あまりボンドが多すぎるとはみ出してしまい表紙を汚してしまうので、竹ひごで丁寧に作業。
背表紙と表紙の間の溝はこれまた竹ひごで押さえ、確実に接着する。表紙と本文が貼り付いたら、表紙と見返しを貼り付ける。本ののどまでしっかりと、シワにならないように糊を付ける。

最後の最後に、表紙、背表紙の厚紙をくり抜いた部分に、タイトル、著者名を貼り付ける。
これは元の文庫本から表紙を剥がし、そこから切り抜いたパーツ。いつも見ているような文字だが、切り抜いて別の場所に貼り付けると、全く異なるものに見えてくるから不思議だ。

息を止めて、背表紙に著者名を貼り付けようやく完成!
仕上がりはこちら!

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もはや元が何かわからないくらい生まれ変わらせることができたことに感動。
じっくりと丁寧に作成したので、喜びも一入である。

ちょっと解説を。

表紙は主人公の「私」の内面を表している。
病弱や性的不能に悩まされる「私」の内面の表れだ。
その内面に金箔をモチーフとした「仮面」を被っているイメージである。

ポイントはその内面が、表紙という<表側に表れている>ということだ。
「告白」という言葉を作品名として、語り手は現在までの半生を「告白」しているように思う。
しかし、そのような単純な「告白」ではないと私は思っている。
語り手自体に物語を仮託し語らせることは、本当の意味で「告白」たり得ないのではないか。本当の「私」はどうしても作品中には登場しないので、メタフィクションとしての「告白」なのではないか。
純粋な「告白」などあり得ないのではないか?
そのような意味も込めて、後ろの見返しをより禍々しいマーブル模様にした。
ちなみにはじめの見返しは、子どもが生まれる前に見ている世界感のイメージだ。静謐、或いはテレビの砂嵐のような

しおりを2本にしたのは、生まれたての「私」=白と、物語を通して人間として血が通っていく様子=赤の色に準えた。

レポートとトーンが異なっていることには目を瞑っていただきたいが、
そんな想いを込めた世界でたったひとつの文庫本を作成することができた
最終的な所要時間は5時間20分ほど。
先生やKさんとの会話も楽しみながら、あっという間の充実した時間だった。
先生、Kさん、ありがとうございました!

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【感想】
自分が今まで親しんできた“本”を自分好みにリメイクするという非常に貴重な機会。実際に体験してみて、この過程は慣れれば自分でもできるかもしれないと思えた。
それは、「製本」という型式ばった過程を踏まないと到底できない難しい作業という前提を払拭できた気持ちであるし、先生がおっしゃっていた「もっと自由な発想で楽しむ」ことに直結する。
「本も自由に!!」という柔軟な発想で、誰でも気軽にできるのが「製本」ではないか、とイメージが180度変わった日となった。
何より、自分が作成した本はさらに愛着が湧くし、また新鮮な気持ちで読み直すことができる機会となった。


このレポートを読んで参加を決意していただいたら何より嬉しいです。
ありがとうございました。

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