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[日記]2021年3月13日(土)

 久々に目覚ましを鳴らすことなく起きて、今日が鎌倉支店の本番であることを自覚する。漸くとしか言い様がない期待感に追われ、密やかにシャワーを借りて目を覚ます。

 お湯にあたった後は目が冴えて、慌てることもないのに慌ただしく準備を始める。前回とは陳列の配置を替えたことによってより新鮮な気持ちでいることができる。その内、棚主さんも続々と来ていただき、自分の手を動かす横で続々と棚ができ上がってゆくのが分かる。

 いつしか開店の時間となり雑談をしながら待っていると、雨の中をお客さんが訪れてくれる。目紛しくではなく、ひとりひとりと話ができる距離感で接したことを印象として覚えている。大学時代の友人やZINEの編者の友人も訪れてくれて、いつしかレコードを流しながら流れる時間に身を任せている。

 降り出した土砂降りの雨に霞む窓の外を眺めながら、温かい珈琲を飲む。その隙間に、また本の話をする。視線は空間の中を移りゆきながら、目の前の様子をただ楽しく見ている。

 盛況を惜しみつつ片付けをしていると、土砂降りの雨は晴れて虹が架かっている。虹を見上げる、虹の緩やかな曲線を同じ高さから見ることは、果たして今まであっただろうか。窓のガラスも気にも留めないまま、写真に収める。刹那を収めて、また次へ向かう糧とする。

 夜はみるめさんの友人と食事をして帰宅する。取り留めもない話をしながら意気投合して、三人で炭酸を飲みながら駅へ向かって別れる。それぞれの人生が円環となって重なり合う瞬間を多く目撃できたことに喜びを覚えたまま、電車の座席に深く座り込む。

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