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[日記]2020年5月10日(日)

 朝の六時半ごろに目が覚める。せっかくなので、珈琲を淹れて読書に勤しむことに。『あとは切手を、一枚貼るだけ』(小川洋子・堀江敏幸 中央公論新社)を読み耽る。すんなりと入ってくる文章ではないものの、それでも一文は大変に美しい。浮かび上がる情景が淡いセピア色を帯びて立ち上がることもあれば、色彩の粒ひとつひとつが躍動しているように見える光景もある。じっくりと噛み締めることで、ようやく物語が身体の中に取り込まれる。物語の時制と物語を読んでいる現在の時制が共鳴し合っているように思えて、全身で物語を味わっているような感覚に陥るのだ。非常に充実した読書体験である。

 今日は母の日であるので、母にメッセージを送る。弟とともに購入したプレゼントも届いたようで安心した。地元には帰ることができるようになったら帰省をしてみる。おそらく自分が見たことのない風景になっているであろう。

 午後、昼寝をして再度『あとは切手を、一枚貼るだけ』を読み進める。今日は読書が進む日だ。最近では珍しい。三月ごろから、なかなか読書が思うように進まない。環境が変わり、時間の使い方も変化したことも原因だろう。ストレスもあるのかもしれない。読みたい本が多すぎるのも、なかなか贅沢な悩みであろう。部屋の積読はどんどん増え、居住スペースを日に日に侵攻している。しかし、読書はスピードではないので、焦らずにじっくりと進めることを心掛ける。バランスが重要である。

 夜はBOOKSELLER CLUBのメンバーとオンラインで飲む。初めてお顔を拝見できた方もいて良い機会であった。この期間の本の売り方について話し合い。この期間が明けても、リアルとオンラインを連動させること。確かにそうであると思う。時代は着実に重要な転換点を迎えている。時代の波間に取り残されないよう、目を見開き続けなくてはならない。間借り本屋のホームページ作成を再開し、新しいプラットフォームをひとつ持っておくことも今後のためになりそうだと再認識した。本の売り方について再度調査しなくては。

 BOOKSELLER CLUBでの話題に刺激されて、ようやく「Bookstore aid基金」に賛同する。自分が今まで生き抜いてくることができた要素の中に、本屋、古本屋があったことは、間違いなく挙げることができる。その場で出会った数々の言葉と物語、そして何より人々がいた。今の自分にできることは、意思を表明し賛同すること。この先も、言葉、物語、人々との邂逅を分かち合うためにも。大袈裟に言えば、今までの人生を振り返りながら、コメントを入力する。この感情を感慨で済ますわけにはいかないと思う。

 明日は暑くなるらしい。知らぬ間に春は過ぎ去っていったようだ。

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