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[日記]2021年2月28日(日)

 清澄白河のbooks&cafe ドレッドノートに吉田結美さんの個展を観に行く。途中、仙台堀川に架かる橋の袂の一角にほぼ満開の桜を見つける。快晴の青空と水面の反射であろう、一部が緑色に見える水面との真中に鮮やかな濃い桃色が挟まれて、立春は疾うに過ぎ去ってはいるが直ぐ傍に春を感じる。

 個展「の、いろ。」は、写真に糸が縢っており、空間と空間の間、事物と事物の間、そして空間と事物とを結ぶように見える。そして空間と事物が延長線上で交わる先には、視る者の視線が必ず存在する。三点が結ぶ空間には時間さえも内包されてしまうかもしれない。なおすことで形になること、それは事物も我々も何も変わらないのではないだろうか。吉田さんは「つづくる」という言葉を使用しており、その言葉には過去から現在までの時間の層が積み重なっている厚みを感じる。言葉はただ現在に投げ出されるだけではなく、幾つかの時空に裂目となり存在する。観念さえも内包してゆく言葉に可能性を思う。

 紹介していただいた山食堂は料理も美味しく、日本酒も十分に堪能する。世情が変容すれば、もう少し長くいたいと思うが、強かに酔いが回り始めたので帰路に着くことにする。

 見えるものと見えないものが接続可能かどうかを帰りしな考えている。車窓を流れる光景を置き去りにした夜を越えれば、もう三月である。

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