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[日記]2020年10月28日(水)

 数多ある積読本の中を掻き分けて、『その姿の消し方』(堀江俊幸著 新潮文庫)を読み始める。とある絵葉書に書かれた一篇の詩を主人公は発見する。詩人の名は「アンドレ・L」。無名の詩人の詩に取り憑かれて、主人公はやがて詩人を巡る旅へ出ることとなる———。

 おそらくは誰しもかつて取り憑かれた文章があるように、この主人公も無名の詩人の詩に取り憑かれて、欧州を彷徨う。行くあてがあるようで、当てどない旅を続けることになるのは、まさに無名の詩人の詩の力に拠る。

 また、著者の堀江氏の文章は端正であると感じる。整っているように思える。しかし、極めて平坦な文章ということではなく、平熱ではあるが、内側にさらに熱を帯びているような感覚とでもいうのだろうか。整っているだけではない。おそらく文体であるだろう。文体がそうさせるように思う。

 これから必ず堀江氏の文体について考え続けるだろう。頭の中で言葉を捏ね繰り回して、当てはまる言葉を探し続ける。

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