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[日記]2021年3月12日(金)

 鎌倉に着き、たらば書房に寄る。鎌倉を訪れたら必ずこの場所を訪れる。長い期間探し求めていた本が片隅に並べてあるという邂逅こそがこの場の醍醐味である。今日も『船出(上)』『船出(下)』(ヴァージニア・ウルフ著 岩波文庫)を購う。屡々足を運ぶ新刊書店にも並べられていなく、中古での邂逅にそこはかとない期待をかけるのみであった矢先の邂逅となる。

 その後、みるめさんのアトリエを訪れ、夕食をいただいた後に明日の準備に取り掛かる。今回は書肆 海と夕焼の本のみではなく、友人である棚主三名の方々も出していただけることとなった。送っていただいた本の順序を考慮しながら棚を整理して、写真を送り本の並びを確認してもらう。一度の整理で意思の疎通が叶うと、言葉はなくともその方の言葉が理解できたように思える。

 『ひびをおくる』の初回特典を制作し、自らの本も並べてしまう。並びには毎回迷うものの、思考する度に来ていただく方の行動を考慮する。視線の流れる様相を想像し、手が伸びる様相に思いを馳せる。幾度も思う動きが明日の模擬訓練となり、反芻が蓄積されてゆく。蓄積がこれからの意義となるようで心地が良い。

 ふたりともお酒を空けることも忘れ作業を進めていると夜が更けている。ポップを作成し就寝することにする。短く、しかし言葉を尽くして伝えることは非常に難しい。模擬ではない訓練を繰り返す必要がある。とにかく明日の反応が気に掛かる。

 同時に天候も再び気に掛ける。晴間に揺らめく鎌倉の海を細目で見たいと思いつつ、いつの間にか眠りについている。

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