どうしても伝えたい!怒りのパワー炸裂
先日、メキシコの高校に留学していた子の話をzoomで聞く機会があった。本来なら10ヶ月のプログラムなのだが、新型コロナの影響で、少し早い帰国になった。
せっかく生活に慣れ、スペイン語も話せるようになって、これから大いに楽しむぞーという時期で、現地で予定していた事ができなくなったりと、残念な気持ちも大きいと思う。
でも、例年なら、すぐに忙しい日本の高校生活に戻る子たちも、2週間は家から出られない期間があり、zoomでの報告をたくさんできるという、思わぬ良い点もある。
彼女は、ホスト家族、メキシコの食べ物、学校生活、ことばについてなど、色々な話をしてくれた。
その中で、人種が違う人が同じ市内で生活し、それぞれのコミュニティで使われていることばも違ったりする事を、初めて体感したという話が興味深かった。
いわゆるメキシコ人、先住民族系の人、ドイツ系の白人の3種類の、見た目が違う人達がいて、人種による差別意識も感じられたそうだ。
この話を聞いて、思い出したことがある。
昔、もう20年以上前に、メキシコの人が我が家にホームステイに来たことがあった。当時私は、メキシコのことをよく知らなかった。
メキシコにもヒッポファミリークラブができたが、まだメンバーはそんなに多くなかった。ヒッポに関心を持って欲しいということもあり、メンバー以外の人にも日本でのホームステイに参加したい人を募って、団体で日本にやってきた。
うちに来た人は、ヒッポのメンバーではなかった。
うちは、当時2LDKの狭いアパートに住んでいて、ゲストが来るといつも自分たちの寝室をゲストルームにしていた。狭めの6畳間に、ダブルベッドと婚礼ダンスがずらりと置いてあり、小さなテレビまで置いたその部屋で、畳が見えるスペースは、わずかだった。
彼女は、大きなスーツケース2つ持って来ていて、運ぶのが大変で足だったか腰だったか忘れてしまったけれど、身体を痛めたので、病院に連れて行って欲しいと言いながらも、早朝から部屋で音楽をかけてベッドの上で踊っている、ちょっと変わった人だった。
子どもが嫌いで、当時年中さんと、2歳前の息子が、好奇心でゲストルームを覗くと、出て行って!と追い出された。
彼女は絶対にスペイン語を話そうとせず、ずっと英語だった。そして、メキシコから来ているのに、メキシコ人の事を嫌っていて、隣国アメリカの黒人の事もバカにしていた。
私は、今から25年以上前、ヒッポの創始者榊原陽氏の講演を聞いた。その中で、感動して、ヒッポに入るきっかけになった話がある。
今から40年ほど前、それまで英語とスペイン語の活動だったヒッポに、韓国語を導入する時の話だ。韓流なんてことばも無く、韓国語なんてほとんど誰も知らないような時代だった。
「うちのクラスに朝鮮人の子が入ってきたよ」という小学1年生の娘の何気ないことばに、偏見の匂いを感じとった榊原氏は、そういえば今まで、お隣の国のことばなのに、韓国語に関心を持った事がなかったと気づいた。ことばを大切にすることは、そのことばを話す人間を大切にすること。隣の国の背後に世界がある。隣の国を飛び越えて世界はない。
この話を聞いて、当時1歳だった長男に、世界を平らに見ることができる人間になって欲しくて、ヒッポを始めた私だったので、人種差別とか大嫌いだった。
メキシコからやってきた彼女の、あまりにも人種差別的な発言の数々に、カチンときた私は、思わず英語でまくしたてた。
その時、何と言ったかは覚えて無いけど、差別とか人権とか平等とかに関する難しい単語がたくさん入った文章がすらすらと口から出てきた。
話した後で自分でも驚いた。過去に習った事はあるだろうけど、そんな単語を覚えているなんて思ってもいなかった。
自分では、挨拶とか、自己紹介とか、なんとかショッピングできたりする程度の英語しか話せないと思っていたから。
今まで勉強してきたことも、無駄では無かったんだなぁとも思った。人間、本当に伝えたいと思ったら不思議な力を発揮するんだね。
今はまた、すっかり忘れちゃってるように思うけど、また、必要になったら出てくるのかな 笑
あとずっと、ホストなのに、彼女のこと全然理解できなかったという残念な気持ちがどこかであったんだけど、今回のメキシコでの人種の話を聞いて、もしかしたら?と思う部分があった。
彼女は、見た目が自分がイメージするメキシコ人と少し違って、白人って感じだった。もしかしたら、メキシコの中ではマイノリティで、多数派のメキシコ人が優遇されたりしていることに、腹を立てていたのかもしれない。
私が母語を大切にしたいという思いで、英語だけでなくスペイン語でも少しは話したいと頑張ってみてたけど、彼女にとっての母語はスペイン語ではなかったのかもしれない。
今となっては想像でしかないんだけど、20年以上の時を経て、こうやって新たな視点で見ることができる交流の思い出。
個人でホームステイボランティアをしているだけでは、なかなかこんな気づきは無かったと思う。
ヒッポで色々な年代の様々な交流の話を聞くことができるのは、私にとって本当に贅沢な時間だ。ありがとうね。
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