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『ふくすけ』の思い出(「スナック松尾」宛に書きました)

なんと、この記事の文章、2024年3月9日に開催された松尾スズキ氏のメルマガの特別編「スナック松尾」で取り上げられ、河井克夫氏に読み上げられました。
嬉しいやら恥ずかしいやらで、アップするのを躊躇われていましたが、この件を受けてnoteにもアップすることにしました。
とても嬉しかったです。ありがとうございました。


僕は昔から、松尾スズキ氏の大ファンで、ずーと書籍やメルマガの創刊号とかから読んでいます。この度、メルマガ読者のためにある「スナック松尾」のために、今年夏に演るという『ふくすけ』というお芝居についての思い出を募集します!というメールがありましたので、僕なりに少し書いてみました。
ご笑覧いただければ幸いです。

拝啓 松尾スズキ様

私は2000年の4月に実家のある広島から22歳の時、演劇をしたくて上京しました。
私らの代がENBUゼミの3期生ということになります。
今から思えば、松尾さんが1期生しか教えていないのが悔しくてしょうがありません。
今でも、松尾さんの授業を受けてみたかったと本当に心から思っています。
なので、今、京都で教えていたり、コクーンアクターズスクールをやられている生徒たちが羨ましくてしょうがありません。
ENBUゼミ3期生の私は、特に受けたい講師が見つからず、
平田オリザ氏から戯曲の書き方を習ったり、ヴィレッジの社長で、現劇団新感線のエグゼクティブプロデューサーをされている細川展裕さんと毎週のように飲み歩いたりと、本当にデタラメな生活をしていました。

『ふくすけ』の噂を聞いたのは、松尾さんのクラス、ENBUゼミ生が出演するという1998年の公演のものでした。世田谷パブリックシアターで演られたやつだと思います。
私は残念ながらその当時は広島に住んでいましたので、観ることはできませんでした。
それから私は2001年の23歳の時に、心の病になり東京をあとにし、実家の広島に帰ってしまいます。
しかし、その時の噂は聞いています。
松尾さんが受け持ったクラスのENBUゼミ生の中にノゾエ征爾氏や本谷有希子氏がいるというではありませんか!その98年の『ふくすけ』の映像をYOUTUBEか何かネットの映像でくぎいるように観た記憶があります。

そして、2011年、ちょうど10年後に私はノゾエ征爾氏と出会うことになります。
広島のアステールプラザに招聘されて、ノゾエ征爾氏が去年も再演された代表作『ガラパコスパコス〜進化してんのかしてないのか』のオーディションを受けて、私は久方ぶりに舞台に出演することになります。
その時に、[初舞台の心構えなどありましたら教えてください]と言ったことを松尾さんの人生相談のコーナーに書いて送ったら、採用されたことがあります。その松尾さんの答えは、とても、私の心の清涼剤のように効きました。
今更ですが、本当にありがとうございました。

『広島版ガラパコスパコス』は東京公演も行われ、大人計画の荒川良々さんも観に来られていたと聞いて、「泣いた」という感想をもらい感激もしております。
『広島版ガラパコスパコス』の東京公演がちょうど終わった翌日、ノゾエ征爾氏の岸田國士戯曲賞の受賞のニュースが入ります。僕らは、もはや解散して広島に帰ってしまっていたので、お祝いは出来なかったのですが、とてもおめでたい祝賀ムードに包まれた幸福な公演でした。
そこから、私はすぐには東京には出なかったのですが、その直後に出た福名理穂さんが10年後の2022年に『柔らかく揺れる』という作品で、岸田國士戯曲賞を受賞します。彼女もENBUゼミ生ですので、私としては勝手ながら、縁を感じざるを得ません。
それきっかけで、はえぎわの劇団員の方たちと少しだけ懇意にさせてもらいました。2012年の再再演の『ふくすけ』を広島から東京へ観に行った記憶があります。私の大好きなシアターコクーン。はえぎわの劇団員の方が多数出ておいでになりましたよね。観終わった後、私は東京からその『広島版ガラパコスパコス』に出演した役者の方2人で下北沢で飲みました。そんで、はえぎわの劇団員の富川一人さん(彼も『広島版ガラパコスパコス』の出演者)に電話して、「はえぎわの時代、きてるねー」ってお世辞を言った記憶があります。2012年版の『ふくすけ』の感想ですが、古田新太さんのやっぱり流石の演技力に感心したり、やっぱり、はえぎわの劇団員の方が松尾さんの舞台に出られているというのにちょっとした感動を覚えました。

そして、あれから、12年が経つのです。早いものです。
2024年の『ふくすけ』は歌舞伎町で上演されるとのこと、それもとても楽しみにしています。
頑張ってください!いつも陰ながら応援しております。
演劇の公演一つ一つに、いろんな人の歴史がありますね。なんだか、私もいろんなことを思い出して泣きそうになってきました。

松尾さんに読んでもらえれば幸いです。
よろしくお願いいたします。

敬具
吉森雄作

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