妻がコロナになりまして

 先に書いておきますが、妻も発症8日目で軽症です。こんな機会もそうそうないと思うので、書き留めておこうと思っただけです。

 7月27日火曜日。どうも軽くノドが痛いんだよね、と妻が言う。

 私は健康そのもの。

 7月28日水曜日。妻に微熱が出る。口内で検温して37.2度とか、それくらいの微熱。ワキで測ると36.8度と、さらに平熱に近づく。少し熱っぽさはあると言えばあるようだが、普通に仕事ができている(在宅ワーク)し、ちょっとした熱っぽさとノドの痛み以外はいたって普通。

 私は健康そのもの。

 7月29日木曜日。妻の状態は前日と同様。

 私は健康そのもの。

 7月30日金曜日。妻の状態は前日と同様。金曜日なのでビールなんかも飲んじゃう。

 私は健康そのもの。

 7月31日土曜日。妻にちょっと咳が出始める。このあたりから何かがどうも変だと思い始める。熱もやや高くなってきて、37.5度くらいになることも。

 私は健康そのもの。

 8月1日日曜日。妻の咳がひどくなる。夜になるともっとひどくなる。これはいよいよ怪しいと思い、翌日近くの発熱外来へ行くことを決心。

 私は健康そのもの。

 8月2日月曜日。健康そのものの私は会社へ出勤(今思えば、さすがにこの日は出勤すべきではなかった……)。妻は朝から在宅勤務しながら、発熱外来の予約を取ろうとしていた。

 風邪を引いたときなどに通っている普段から世話になっている江東区の病院に電話すると予約がいっぱいだと断られる。もう一軒の近所の病院に電話をするも、当院ではコロナの検査はできないので、と断られるが、東京都の発熱相談センターを紹介していただく。

 発熱相談センターに電話し自宅の住所を伝えると、近所でコロナの検査を受けられる病院を3つ紹介してもらえたので、妻が片っ端から電話。1軒目、電話は鳴るが、繋がらない。2軒目、予約がいっぱいで診療不可。3軒目、電話は鳴るが、繋がらない。再び1軒目、繋がらない。再び3軒目、繋がらない。

 この時点で私のもとに状況の報告と「繋がるまでしつこく電話し続ける」という決意表明がLINEで届く。

 その後しばらくして15時に予約が取れたと連絡あり。病院を探すだけでも一時間。医療崩壊の一端に触れた気がした、と妻はのちに語る。

 その後、15時に通院。発熱外来は一般の入り口とは別のようで、一般の入り口を迂回して、指示された病院の勝手口のようなところへ行き、呼び鈴を鳴らす。すると扉が開く。扉の向こうはカーテンがもう一枚あり、そのカーテンの向こうから看護師さんが出てきて椅子を扉の外に置く。そして、椅子に掛けてお待ちください、と伝えられる。

 待合室で他の患者さんと一緒になったら、入り口を分けた意味がないもんな、と妻は自分を納得させる。しばらくしたら今度はお医者さんらしき人がカーテンの向こうから出てくる。そして、妻は病院に入ることなく、その半屋外とでもいうべきビルの廊下のようなところで問診が始まる。コロナ感染が疑われているのだから、仕方がない。

 血中の酸素濃度を測る機械で測定するも、この検査では異常なし。しかし、しつこい微熱と咳はコロナ感染を疑うには十分なようで、やはりコロナの抗原検査をしましょうということになる。ちなみにこの検査は個人負担はないらしい。

 鼻から長い棒を突っ込まれ、粘液を採取。15分ほどで結果が出るのでお待ちください、と伝えられ、再び半屋外に置かれた椅子の上で待つ。5分もすればお医者さんが戻ってきて、陽性です、と伝えられる。

 同居家族である旦那さん(私)も濃厚接触者となるので……ということで、夫婦ともに自宅療養(私は自宅待機)という処置を言い渡される。

 妻としては「あぁ、やっぱりな」という感じだった模様。症状もそう重くなかったからか、取り乱したりショックを受けたりはなかった模様。妻からはすぐに私に連絡があり、私も会社に事情を説明しすぐに帰宅。私としても妻の顔色や元気さ、弱り加減を知っていたので、さほど取り乱すことなく落ち着いて帰宅。

 ちなみに、妻は解熱剤と咳止めを処方され、薬局で購入後帰宅。薬局も病院から指定された場所へ行ったらしい。薬局へは病院から連絡が入っているようで、処方箋を渡すとやはり外で待たされたのだとか。もちろん、腹なんかは立てないし、仕方がないことだと割り切ったようだ。

 家に帰って夫婦で情報共有。といっても、妻が陽性だが軽症で自宅にて経過観察、という情報以外共有すべき情報は何もなく、具体的な今後の指示は保健所から2~3日中に連絡がある、という医者の言葉の通り、その連絡を待つことに。

 私は同僚にPCなど在宅勤務セットを届けてもらい、在宅勤務とした。妻は元々在宅勤務だったので、引き続き通常業務にあたると会社に伝えたところ、ちゃんと休みなさいってことでとりあえず休むことに。

 その後は、家庭内隔離できるほどの住まいではないので、体液が付着しやすい食器などの扱いや家の中でもマスクを徹底することなどを二人で取り決めたり、スーパーへの買い出しも遠慮したほうがよさそうということで、ネットスーパーで食材などを買いだめしたりして、淡々と今後2週間ほど続くであろう自宅療養(待機)に備える。あと、一応寝室は分けることにしたのと、暇になることを見越して以前から買おう買おうと二人で話していたニンテンドースイッチをネットで発注する。

 晩飯に私がうどんを作る。関西人なので薄味の出汁を作ったが、やはり世間で言われているようにコロナ患者となった妻は味がわかりにくくなったようだ。私が感じているよりも味が薄く感じた様子である。

 全世界を脅かしている驚異のウィルスがついに我が家にまでやってきたが、当の本人は咳が出る以外は普通に暮らしているし、私は無症状でやはり普通にしている。この程度の症状でよかったという気持ちと、この程度終わるのだろうかという少しの不安を抱いてこの日はいつも通り0時ごろに布団へ。いつもと違う寝床に少しワクワクし、スマホをいじりすぎて寝付くのが少し遅れる。

 冴えてしまった目を暗闇に漂わせながら、ぼんやりと考える。

 先ほどまではずっと顔を合わせていたし、常に妻の病状を確認できていたが、いざ別の部屋で寝るとなると少し不安になった。夜中に急に重症化して、隣の部屋で寝る私に知らせる余裕もなかったらどうしよう。明日の朝、冷たくなっていたら……という最悪の想像が少しだけ脳裏によぎる。トイレに行くふりをして妻の横を通り、おやすみと声をかける。おやすみという声が返ってくる。安心して布団に戻り、寝る。

 8月3日火曜日。二人ともごく普通に目覚める。妻に体調を聞くと、昨日よりは少しマシかも、という。ネットで知らべると、コロナの病状はとりあえず発症から1週間続くらしい。そして8日目~10日目くらいで重症化するか回復していくかに分かれ始めることが多いのだとか。7月27日にノドが痛み始めたが、7月27日を発症日とすればこの日はちょうど8日目にあたる。典型的な回復のコースに乗り始めているのだろうか。

 とはいえ、相変わらず咳とノドの痛さ、味覚・嗅覚の障害が残っているようで、私の屁のにおいも多分わからないだろうと妻は言う。私の屁は自分で言うのもなんだが、結構くさい。それがわからない自信があるとは、なかなかである。

 妻はお休み。私は在宅勤務を始めた。咳をしながらもゴロゴロとしながらスマホをいじる妻は、まぁ元気そうである。

 結局この日、待ち構えていた保健所からの連絡は来なかった。医者からも、今は保健所も大変だから連絡が遅れるかも、とは聞いていたので、気長に待つことにした。保健所からの連絡は来なかったが、ニンテンドースイッチは来た。仕事をする私の横で、嬉々としてゲームのセッティングを妻が始めた。元気そうで何よりである。

 夜、さっそく二人でゲームをダウンロードしてやってみる。それなりに盛り上がり、お互い笑う。笑うと免疫力が上がるというが、それが本当なら明日はきっと今日より元気になっていることだろうと思う。

 8月4日水曜日。今日である。

 朝は無事二人とも目覚める。私は依然無症状。体温も36.5度。妻は体温が36.8度まで下がったらしい。口内で検温して36.8度である。よい兆しだと思う。

 咳もかなり少なくなったので会社にそれを伝えて、在宅勤務となったようだ。朝から二人でパソコンをカタカタと叩き、働く。

 お昼ごろ。昼食にしようと思い、妻の様子をうかがう。

 すると、妻が号泣していた。

 何ごとかと焦る。コロナにかかってしまったこと?味がわからないこと?それらで私に迷惑をかけていると思ってしまっているのか?それとも別の異常があらわれたとか?様々な憶測が一瞬で脳内に飛び交うも答えは出るはずもなく、どうした?と声かかける。

 妻が私を見て言う。メリー号が燃えた、と。

 漫画雑誌であるジャンプのアプリで今、ONE PIECEが無料で読めるらしく、主人公たちが乗る海賊船「メリー号」が燃える感動的なシーンを読んで号泣していたらしい。紛らわしいわ。

 そうこうしていると昼過ぎに保健所から電話。病状などを詳しく確認される。色々話した結果、やはり発症は7月27日という扱いになるようだ。そこから2週間が妻の自宅療養期間となるので、8月10日までは自宅で療養してくださいということになった。その時の体調次第だが、回復していればその後は普通に生活してOKらしい。発症日の前2日間で接触した人は私だけだったので、私以外に濃厚接触者ななしということにもなったらしい。

 そして、私の扱いだが、無症状なので今感染しているかどうかもわからないことから、妻の自宅療養期間の最終日からさらに10日間の自宅待機を、ということになった。つまり、8月10日から10日間なので8月20日までである。8月10日に妻から感染するかもしれないから、ということなのだろう。無症状が一番厄介なのだと痛感した。

 私の検査については、発症しないなら必要ない、らしい。検査をしても発症するときはするし、発症したらその日から2週間の隔離。発症しなくても8月20日まで自宅待機していれば感染した状態で私が外の世界に放たれることもない。つまり、検査してもしなくても、結果が同じということでしょう。

 でも、今日発症すれば18日まで自宅療養。今後発症しなければ20日まで自宅待機。発症したほうが早く自由になれるという、なんとも言えない状況である。でもでも、理屈もわからないことはないので納得。

 妻の発症日である7月27日以降、8月2日までの平日は私が出勤してしまっていたことを保健所に伝える。社内での感染対策などについても伝える。原則社内でもマスク着用、隣の席とはアクリル板の仕切りがあり、消毒はまめに行っている、と。すると、私が発症していないことと社内での感染症対策の状況から、会社では特別な処置はいらないとの指示を頂く。ただし、周囲の席の人の健康観察だけは念入りに、とのこと。さっそく会社にもそう伝える。

 そんなこんなで今に至る。これを書いているときも妻の咳はあまり聞こえない。快方に向かっていればよいのだが。。。

 また動きがあれば実況的に書いていこうと思う。とりあえず、ちょっとスイッチで遊ぼう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?