夜中に聞こえるスナックのカラオケほど心地よいのは無し。

私が住んでいるアパート(RCな感じなのでマンションと呼ぶべきか?)のとなりの建物は、スナックになっている。
そのスナックは老舗らしく、建物からして時代が感じられて、通るたび懐かしいような変に安心するような感覚に陥る。

私の稼働時間は毎朝6時から夜の9時あたり。その中で外気に触れているのはせいぜい夕方4時頃まで。幼児がいて、幼稚園の世帯は大体その辺りがあるあるだ。
なのでスナックがやっている時間に通ったことは一度もない。いつも暗い店内をドア越しに横目で確認して過ぎ去る程度だ。

今日もいつも通り娘が夜の8時頃眠りについた。本当に安心する瞬間。今日も1日娘を生かせることが出来た。そしてここから何にも縛られない唯一の時間。私だけの時間。

しかし今日は少し違っている所がある。
どこからかカラオケで歌っているような声が夜の町に響いている。決して大きくはない。でも男性だと分かる。窓の隙間から漏れるその音。
それがビックリするほど耳障りじゃないのだ。
むしろいつもの静かな夜より断然良い。
暑すぎるわけでも寒すぎるわけでもない梅雨の夜の合間にぴったりだ。

でもなんとなく理由は分かっている。
今日の昼間の外出時にスナックの前を通った時、お店前の花に水やりをしていた雰囲気の柔らかい年配の女性がいた。初めてお店の人を見たのだ。
互いにチラッと二度見したのち、

「こんにちは」私が言った。

「こんにちは」その女性が柔らかい笑顔で答えた。

そんな出来事だけで、夜のスナックから聞こえるカラオケの音があまりにも心地よい。
きっと今日は朝6時まで寝付けるだろう。

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