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2024/4/16 中小企業の存在理由~取引費用編~📚『多様性と持続可能性の視点で考える中小企業論』


1.アメリカの大企業の成立~チャンドラーの研究から~

アルフレッド・デュポン・チャンドラーは、アメリカの企業経営について研究し、大企業成立までの歴史を以下のように区分した。

【~1840年】 市場拡大が分業化を促し、アメリカに基幹的な事業制度が確立された。
【1840~第一次世界大戦(1914)】 新技術により輸送・生産・流通過程に変革がおこり、複数事業単位企業が成長した。1900年ごろには、アメリカの多くの企業が複数単位企業となった。
【1920~】 複数事業単位企業がほとんどすべての業界に現れた。その背景には、鉄道の工事の必要と共に、複雑な原価計算のノウハウが構築されたことがある。

大企業成立の内部的な要件は、工程の分業により高い生産力を備えることと、大きな組織をまとめるための組織管理技術であるといえる。なお、企業規模を決める外的要因として市場規模の違いがあり、これが産業による企業規模の違いを生み出す。

2.市場と組織の効率性~冷戦時代の論争~

理論的には、市場競争により社会的分業を行うと、社会全体の効率性が高まる。1980年のソ連崩壊、社会主義国家制度の崩壊により、これが実証された。同時に資本主義国家でも変化が起こり、80年代以降は新自由主義政策という国営事業の民営化の動きがあった。

そんな中、1991年にコースの経済理論「取引コスト理論」がノーベル経済学賞を受賞した。ここでは、新古典派経済学による自由市場経済の完全合理性の考えがゆるめられ、限定合理性の考えが提示された。取引コスト理論とは、取引をする際には最初からお互いに完全な情報共有ができているわけではないため、情報を入手するための時間といった「取引コスト」を加味し、それを最小限に抑える工夫をしなければ、経済効率性を高めることはできないというものである。

その後、ウィリアムソンが取引コスト理論の体系化(メカニズムの解明)を試みた。企業の資産特殊性(自由市場で取り引きされる価値より高い価値を持つという意味合い)、サンクコスト(埋没費用)も取引コストに含めることなどを提示した。このような取引コスト理論により、社会的分業を進めることが一概に経済効率的とはいえず、組織によっては内部で分業を行う方が効率的であるという見方が広まった。

3.ペティ・クラークの法則

ペティ・クラークの法則とは、経済社会 ・ 産業社会 の 発展 に伴い、産業の中心が 第一次産業 から 第二次産業、第三次産業 へと移動していくことである。日本をはじめ、世界各国の産業構造の変容にみられる法則である。

4.プロダクト・サイクル論とPPM

プロダクト・サイクル論とは、新製品には導入期・成長期・成熟期・衰退期があり、売上や利益が変化していくことをいう。これを活用したマネジメント手法が「PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)」である。PPMでは、複数種類の製品についてプロダクト・サイクルを見極めたうえで、横軸の市場浸透(市場占有率)と縦軸の新規市場開拓(市場成長率)という2つのマーケティング情報によって製品を位置づけ、最適な資源配分の戦略立案を行うための手法である。図にすると、左上から右下にかけて、花形、問題児、金のなる木、負け犬、という風に分類できる。


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