瑪瑙の音

障子戸の向こう側
雨後澄み渡る月灯りに抱かれ
濃いくれなゐの
山桃の実はまさに
奥付まで辿り着くが如く
淡麗かつ濃醇な甘酸味の完成をみる
常楽我浄に至り
愁いも無く
天鵞絨のような艶めきを宿して
奥付から表紙に戻るが如く
目を行き来させるだけの魅惑を纏う
電気信号の隆盛を
当然のように恋と証するのならば
嘘偽りのない心は愛に近く
誤魔化しようのないこころは恋に近い
罪状の無い内心の自由に
入り乱れ存在する理性と本能のココロ
まして片一方だけでは
澄み渡る月明かりに常夜灯は点かない

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