視線
空っぽであることに目を向けずに
どこか遠くの空ばかりをただぼんやりと眺め続けていた
流れていく雲が消えていくのを見て
何だか無性に泣きたくなって携帯電話のアドレス帳をめくった
君のアドレスで止めて
思ったことを書いていくけど
言葉に詰まって書き直してしまう
そうしているうちに
だんだん何も言いたくなくなって保存もせず消した
送らないなら打つ意味はない
けれど文字たちは波のように寄せては返す
それが次第に待ち受け画面とアドレス帳になって
白い画面を行ったり来たりさせて
ため息交じりに携帯電話をポケットにしまった
うまくいえない言葉たちが波打ち際でつまらなそうに揺れている
下手でも全部掬えれば胸のつかえはなくなるだろうか
上手く言葉を紡げればこのモヤモヤは晴れるだろうか
暗くなった広い空を見上げながら雲もなく浮かぶ月を見つめる
「いつでもメールして」
君の言葉が頭のなかでリフレインする
頼ったところで何が変わる?
自嘲交じりの笑みを浮かべ空から目を逸らした
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