行方

今日も引きたくもない引き金を引かされている
引かなければ家族も裏切り者扱いされる
撃てば撃ち返され
昨日
夕食時に家族のことを話し合っていた隣の奴は
今日はもういない
俺も悪魔のひとりだと思われているのかもしれない
明日にはいないのかもしれない
憎しみ合って引き合う撃鉄ならば迷わなかった
俺自身は憎んじゃいない
嘆いて呪っている
隣人を討てと言われる声に逆らえない
どっかの国じゃ
我々を討つことに「感動」をおぼえたらしい
こうしたくってこうしているわけじゃない
こうなりたくってここにいるわけじゃない
理にかなっていなくても利にかなうからと背を押され
悪魔のひとりとして討たれた彼に
彼を愛する人に
親に
子に
彼が討たれたことは悲劇ではなく当然で
討ったことが称賛されていることは悲劇ではなく当然だ
そう言われていることを受け入れるよりほかないと
言わねばならないのだろうか
本当は
相手も討ちたくなかったであろうことを鑑みず
恨みを力に変えさせろとまた背を押され
引き金の指の躊躇いを捨て去らなければいけない時間を
憎しみ合ってはいない隣人同士の邂逅があったとき
憎しみの種をどちらかが芽吹かせてしまう機会と時間へのやるせなさを
いったいどこへ向ければいいのだろう
闘技場での死闘に
物語性のある代理の死闘に「感動」のラベルを貼られた
名も家族も友もある俺たちやかれらたちの加害と被害の悲劇は
そのなかにある
盲信と狂信
そしてどこにでもいる悪意のある人間の軽い引き金による怨嗟の悲劇に
大きく巻き込まれていく俺たちやかれらたちの悲惨は
取り戻せない理不尽は
これまで通りいったいどこへ向かうのだろう